テーマ3:国際社会における日本の評価と「ゼネラリスト」の生き残り戦略
筆者:現在、国際社会における日本や日本人に対する評価・立ち位置についてはどのように見ていますか?
清水:総じて「誠実で安定したチームプレイヤー」として好意的に受け止められています。ただし、日本だけが特別に好意的に見られている訳ではありません。また、かつてのように「日本だから話を聞こう」と思わせる経済的な存在感は、相対的に低下しているかもしれません。さらに、あえて厳しく言えば、「誠実で協力的」という評価は、こちらから主張しなければ、「注文をつけない、扱いやすい相手」という評価にもなり得ます。自分たちの「誠実さ」や「協調性」を単なる美徳で終わらせず、「全体を見渡し、組織を前に進められる力」として言語化し、評価基準に入れてもらうような、姿勢も重要かもしれません。
筆者:日本の組織でキャリアを重ねてきたビジネスパーソンの多くは、幅広く経験を積んだ「ゼネラリスト」型ですが、グローバル市場での生き残り戦略はどうでしょうか?
清水:深く究めた専門家の知見は、グローバル市場で大きな武器になります。複雑な課題を解くには、その深い知識と経験が不可欠です。一方、ゼネラリストには、専門家とは異なる強みがあります。
ゼネラリストは「専門性のない人」ではない
清水:ゼネラリストは「専門性のない人」ではありません。複数の分野を経験しているからこそ、異なる分野の知見と人脈を組み合わせて、新たな価値を創造できます。ただし、複数の分野を経験しただけで、それが強みになるわけでもありません。それぞれの知見と人脈を結びつけ、一つの専門領域だけでは見えにくい課題や解決策を見いだすことに価値があります。例えば、経済政策は、いまや安全保障と切り離して考えることができません。AIも単なるテクノロジーの問題ではなく、雇用、教育、インフラなど、社会のさまざまな領域に影響を及ぼします。「経済と安全保障」や「AIと雇用」のように、従来は別々に考えられてきた課題が複雑に絡み合う時代です。
ゼネラリストは、こうした課題の全体像を捉え、異なる専門家や組織をつなぎ、その知見を具体的な政策や行動へと変える役割を担えます。その重要性は、今後ますます高まると思います。
筆者:具体例があれば、教えて下さい。
清水:私は世界銀行でNATO(北大西洋条約機構)加盟国国会議員会議との関係強化に取り組んでおり、6月には総会に世銀代表として出席しました。世界銀行は、軍事関連の支援は行いませんが、例えば復興支援や経済インフラ整備などの活動は、経済開発のみならず、平和と安定にも貢献しています。このような案件に自ら手を挙げたのは、外務省での安全保障に関わる経験の他、Googleではデジタル分野の経済安全保障にも携わり、現在は世界銀行で開発支援に関わっているからです。安全保障だけ、開発だけを見ていては、両者の接点はなかなか見えません。異なる分野の知識と人脈を結びつけ、新たな価値や可能性を生み出す。そこに、ゼネラリストならではの価値があると思います。このように異なる経験をつなぎ、その強みを自らの言葉で伝えていくことが、グローバルな環境でキャリアを切り拓く一助となっています。



