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2026.11.03 09:30

天皇陛下・総理の元通訳が外務省、Googleで確信した「AIにはできない英語対話」

世界銀行グループグローバル議会対応チーム長清水勇祐氏(中央が清水氏、フランシスコ・ローマ教皇訪日の際 出典:首相官邸ホームページ)

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意外、国際機関で重要視される「空気を読む」能力

清水:世銀では、チーム長として、異なる国籍や文化背景を持つスタッフをマネージしています。相手の文化的背景を踏まえながら、何を、いつ、誰に、どう伝えるかを見極めなければなりません。そこには組織特有の「ルールとお作法」があります。 これは不文律であって、マニュアルもありません。 

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筆者:欧米の組織は、なんでもズバッと言うというイメージがあり、日本は「本音と建前」の文化だと言われます。

清水:ですが、少なくとも私の経験では、むしろ逆でした。多国籍企業や国際機関では、外向けの発信のみならず、社内コミュニケーションでも言葉を慎重に選びます。記録が重視され、不用意な一言が本人の評価やキャリアに大きく影響し得るからです。世銀の入社オリエンテーションには、「How to Read the Room(空気の読み方)」という研修までありました。このような環境で英語を使って人を動かすことは容易ではなく、いまなお試行錯誤しています。

筆者:言語だけでなく、立ち居振る舞いやプレゼンスで突出した方を見たことがありますか?

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清水:国益と国益がぶつかる外交の場では、「人を動かす言葉とプレゼンス」を持つ方を何人も見ましたが、中でも特に印象に残っているのが、通訳としてお会いしたフランシスコ教皇です。

教皇には、立ち居振る舞いだけで人を惹きつける存在感がありました。学生との対話や天皇陛下との会談に、通訳として同席しました。女子学生との対話では、ユーモアを交えて平易な言葉で語りかけ、権威ある立場から一方的にメッセージを伝えるのではなく、相手との距離を縮め、自然に対話へ引き込んでいました。教皇の言葉と振る舞いによって、場の緊張が次第に和らいでいくのを感じました。

フランシスコ教皇と安倍晋三首相との会談で通訳を務める清水氏。出典:首相官邸ホームページ
フランシスコ教皇と安倍晋三首相との会談で通訳を務める清水氏。出典:首相官邸ホームページ

一方、天皇陛下とは、礼節と情感をもって、原爆や環境問題という難しいテーマについて意見交換を行っていました。自身の体験にも触れながら、一つひとつの言葉を慎重に選び、時に間を取りながら、相手への深い敬意と問題に対する思いを伝えていた姿を見ました。

相手と場面に応じて、言葉、間、トーンを変える。さらに、話す速さや表情、姿勢まで変えながら、最も届く形でメッセージを伝えていました。もちろん、教皇ご本人のユーモアと温かさにあふれた人柄が、言葉に力を与えていたことも大きかったと思います。

天皇陛下の通訳として教皇のスペイン語を訳しながら、私は、「何を言うか」と同じくらい、「誰に、どのような姿勢で、いつ届けるか」が重要なのだと実感しました。語彙や文法が正しいだけでは、人の心は動きません。

天皇陛下とフランシスコ教皇のご会見で通訳を務める清水氏。出典:宮内庁提供映像より
天皇陛下とフランシスコ教皇のご会見で通訳を務める清水氏。出典:宮内庁提供映像より

外務省時代のある上司は、「外交とは、言葉を使って説得するアートである」と言っていました。その本質は、外交以外の場にも通じます。本当の語学力とは、文法や語彙、発音の良し悪しだけでは測れません。相手と状況を読み、信頼を築き、その心と意思決定を動かす力まで含むものだと思います。

筆者:AIによる自動翻訳や文章作成ツールが飛躍的に進歩した現代において、わざわざ「第二・第三言語として、外国語を学ぶ意味」も問われています。この点についてはどう考えますか?

清水:AIによって、文法的に整った英文を作るハードルは大きく下がりました。便利ですし、私もフル活用しています。しかし、人の心を動かし、行動を変えるには、正確な文章だけでは足りません。

それをなし得るのは、感情や思いのこもった、リアルタイムの対話です。こうした対面での会話では、相手の表情や間の取り方、声のトーンに応じて、即座にコミュニケーションを軌道修正していくことが可能ですし、それが求められます。これはAIでは困難です。

また、相手の母国語や文化への理解を少しでも示すことで、AIだけでは築きにくい親近感や信頼関係を築けます。以前、世銀の中東関連ポストの面接で、冒頭にアラビア語で挨拶したところ、それだけで場が和らぎました。流暢に話せなくても、「あなたの言語や文化を理解しようとしている」という姿勢は伝わり、そこから更に会話が繋がります。

このような観点からも、AI時代にも外国語を学び、自分自身のコミュニケーション能力を磨く意味があると思います。

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