だが、第2次トランプ政権と国防総省がサイバー部隊編成計画の実施を優先する中、米国内では別の動きも進行している。同省は2025年3月、ロシアに対する米国のサイバー攻撃作戦を停止すると発表した。これは、ロシアによるウクライナ侵攻の終結に向けたトランプ政権の仲裁努力の一環として実施された措置だった。一方、米軍事誌ディフェンスニュースによると、米国の共和党議員や国家安全保障の専門家からは、ロシアのサイバー攻撃に対する防御を強化すべきだとの声が上がっている。これらの議員や専門家は、サイバー攻撃は秘密裏に行われるものであり、米国の国家安全保障を脅かす情報が敵対勢力の手に渡るのを防ぐため、同国はサイバー能力を強化し続けなければならないと警鐘を鳴らしている。
こうした声にもかかわらず、トランプ政権は米国の情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)やFBI、国務省内の外国の影響力に対抗するための部署を閉鎖したほか、国土安全保障省もサイバー脅威への防御を支援する計画を縮小した。これにより、米国の政府機関や企業、重要施設に対するサイバー上の危険性が高まる恐れがある。
トランプ政権が歳出削減を図る中、米国の企業や組織が自らのサイバー上の脅威に対して責任を負うべきかどうかを巡り、議論が巻き起こっている。こうした状況を受け、同国の企業は警戒を強めている。米国の巨大企業がサイバー攻撃を受ければ、経済全体に打撃が及ぶことになる。同国では、敵対勢力に対する技術的な防御力を強化するため、統合を検討する企業もある。
例えば、テクノロジー大手の米マイクロソフトは1月、データエンジニアリング分野の自律型AI開発に特化した新興企業オスモスを買収した。一方、米石油大手シェブロンは米同業ヘスを買収し、業界屈指のエネルギー企業を構築した。
さらに、米法人向け情報技術(IT)大手ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)は2025年7月、米通信機器大手ジュニパーネットワークスの買収を完了したと発表した。この合併により、HPEは自社のクラウドとジュニパーのルーティング技術やAIを活用したネットワーク自動化技術を統合することが可能になった。両社の統合は、業界をけん引するAI機能の創出にもつながると見込まれている。
両社の合併に対しては、他の業界の買収と同様、市場競争を阻害する動きであるとの批判や反対の声が上がった。消費者の選択肢が減ることで、エネルギーやテクノロジーの分野で価格が上昇する可能性が懸念されたのだ。こうした懸念を背景に、米司法省反トラスト局は当初、HPEとジュニパーの合併を阻止しようとした。だが、両社の合併を実現させるべく、米国の情報機関やトランプ政権が介入した。合併に関する度重なる検討を経て、司法省は最終的に提示された是正措置を承認した。合併の条件として、HPEは特定の無線ネットワーク関連資産を売却することとなった。


