インタビューを終えて
婚活のプロが語る、現代日本の「構造的ミスマッチ」と「対人知性の必要性」
「婚活アドバイザーに必要なのは、世の中を知る知識、人間力、そして圧倒的な情熱です」。その言葉には、1,400組近いカップルを成婚へ導いてきたプロフェッショナルの強い誇りが込められていた。
語り手の植草美幸氏は、リーマンショックを機に婚活事業へと参入し、「古い、ダサい」とされていた仲人業界を、洗練された「オープンでかっこいい産業」へと鮮やかに塗り替えてきた人物だ。
さて、人生を左右する「結婚」を見立てるプロに必要な要素を3つに絞るとしたら何になるのだろうか。
「ひとつ目は世の中を広く深く知る知識。多様な職業や経済、文化の裏側まで知らなければ、会員の現実に寄り添えません。ふたつ目は高い人間力。理不尽な感情を投げかけられても決して感情的にならず、一度すべてを受け止める包容力です。そして最後は『何としてでもこの人を成婚させる』という情熱。人の人生を左右する仕事だという覚悟が欠かせません」
彼女が分析する現代日本の婚活市場の構造は、極めてシビアだ。地方には家業を継ぐ男性が残り、都市部には高学歴・高収入の女性が集まる。この「地方の男性余り」と「都市部のキャリア女性余り」という地理的・経済的なミスマッチが深刻化している。女性の社会進出が進む一方で、「自分より稼ぐ白馬の王子様」を追い求める価値観の停滞も、ミスマッチを一層根深くさせている。
そこで私が「では、今の時代における結婚とは何か?」と問うと、彼女はこう答えた。「実家からの自立であり、対等なパートナーシップを築くことです」。
家同士の結びつきや依存関係ではなく、独立したふたりが一対一で「いちばんの味方」となる新しい家族をつくること。初対面での笑顔や、相手を否定せずに受容する姿勢といった基本的なコミュニケーションの作法こそが、良縁を手繰り寄せる土台になるという。
取材の最後に、私はふと現代の人間関係について考えさせられた。テクノロジーが進化し、最適解ばかりが求められる時代において、私たちは誰かと深く向き合う泥くさいプロセスを避けてはいないか。人をつなぐのに必要なのは、精密なアルゴリズムではなく、相手の背景を丸ごと受け止められる「人間力」と「情熱」なのだ。
変わりゆく社会のなかで、結婚は単なる人生のイベントではなく、自らの人間性を磨き上げる「自立のレッスン」なのかもしれない。

北野唯我◎1987年、兵庫県生まれ。作家、ワンキャリア上級執行役員。神戸大学経営学部卒業。博報堂、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリア創業期参画。2021年、取締役として上場を経験、26年4月から現職。著書『転職の思考法』『天才を殺す凡人』『仕事の教科書』ほか。近著は『仕事を好きになる技術』。


