重要なお知らせ 「Forbes」の名称を使用した営業活動にご注意ください

教育

2026.10.11 09:30

AI時代に必要な学びとは 教育現場を変革する20代起業家たち

「20代だからギャップを見つけやすい」

ふたりのもうひとつの共通点は、理論と実践を行き来しながら教育そのもののあり方を探究していることだ。高等学校で「総合的な探究の時間」(KEYWORD 03参照)が必修化されて、はや5年目。教育スタートアップを手がける20代の姿に、探究のあるべき姿を垣間見ることができる。

advertisement

一方、探究学習を提供する公教育の現場では静かな悲鳴が上がっている。啓林館が25年12月に実施した調査では、現職の高校教員の約6割が探究学習の指導や運営にかかわり、うち7割以上が探究の授業が始まったことで週の総業務時間が増えたと回答している。同調査では具体的な課題として、教員の専門性や指導ノウハウの不足、教材や資料が足りていないことなどが挙げられている。

探究学習を取り巻くこれらの課題にテクノロジーで挑むのが、早稲田大学国際教養学部生の藤田岳が代表取締役Co-CEOを務める教育スタートアップMoonJapanだ。小・中学校の「総合的な学習の時間」や、高校の「総合的な探究の時間」を効果的に進めるための探究総合プラットフォーム「MoonShot」を中心に事業を展開している。

高校時代に留学先のカナダで差別に遭い、アジア人差別撲滅のためのアパレルブランドを立ち上げたことのある藤田は、AI時代に必要なのは「主体性が生まれるきっかけを与えること」だという。

advertisement

「人口が1億人を割ることが確実視される日本が大国としての地位を保つには、ひとり当たりの生産性を上げつつ、イノベーションの量を増やすほかありません。AIによる効率化はもちろん、それ以上に重要なのが一人ひとりのワクワクの量と、そのモメンタム(勢い)です。主体性を育み、興味関心ごとを追い続けられる仕組みさえ整えば、学生たちは自分で学び、成長していく」(藤田)

MoonShotでは、教員が授業の設計から運用、評価までを一括管理できるのはもちろん、生徒が自己分析や課題設定、事業計画、プレゼンテーションなどのフェーズを通じて主体的に深い学びを得る機会も提供している。生徒の成長を非認知能力の面から分析し、進路指導などに活用できる仕組みも整えている。26年2月にはキヤノンマーケティングジャパンと基本合意書(MOU)を締結し、生徒たちが探究学習を通じて培った「やり抜く力」や「協調性」といった非認知能力データを活用した新たな高卒採用モデルの実証実験を開始した。

大学で学びながら教育スタートアップを経営する藤田は、「20代だからこそ、皆が『無理だ』ということに迷わず挑戦できる」という。「MoonJapanを通じて、誰もが自分のワクワクを見つけて、追いかけられる世界にしたい」(藤田)。

無花果グループの中藤は、「20代が教育ビジネスを始めることは必然でもあり、希望でもある」と話す。

「私たちはAIを含めた最新の動向をキャッチアップしやすく、世の中の流れと教育現場が置かれている状況とのギャップを見つけやすい立場にあります。同年代で、教育をより良くしようという思いのある人たちがどんどん増えていったらいいなと、強く思います」(中藤)

学習塾や予備校のM&Aやコンサルティングを手がける谷津、多様な学びの現場に軸足を置く中藤、探究学習のDXに挑む藤田。20代が描く、AI時代における「良い教育」のかたちが静かに輪郭を結びつつある。

MoonJapan▶︎2024年設立の教育スタートアップ。「教育を共育で変える」をミッションに掲げ、さまざまな教育事業を展開している。

藤田岳◎MoonJapan代表取締役Co-CEO。2004年生まれ。インターナショナルスクール、私立中学校、留学先のカナダの公立高校など、さまざまな教育環境を経験する。ユーグレナのFutureサミットメンバー、キャリア教育系NPO、アパレルブランド立ち上げなどを経験し、24年2月にMoonJapanを創業。文部科学省アントレプレナーシップ推進大使としても活躍する。
藤田岳◎MoonJapan代表取締役Co-CEO。2004年生まれ。インターナショナルスクール、私立中学校、留学先のカナダの公立高校など、さまざまな教育環境を経験する。ユーグレナのFutureサミットメンバー、キャリア教育系NPO、アパレルブランド立ち上げなどを経験し、24年2月にMoonJapanを創業。文部科学省アントレプレナーシップ推進大使としても活躍する。

KEYWORD 03
「総合的な探究の時間」|2022年度から高等学校で必修化された科目。変化の激しい社会に対応するために、探究的な見方や考え方を働かせながら横断的かつ総合的な学習を行うことを通して、課題をより良く解決し、自己の生き方を考えていくための資質や能力を育成することを目標に掲げる。

文=瀬戸久美子 イラストレーション=アンドリュー・ナイ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事