しかし、この「五つの力」は、実は、「五つの階段」と呼ぶべきものであり、マネジメントをめざす人材は、仕事を通じて、これら一つ一つを身につけ、磨きながら、登っていかなければならない。
1.コミュニケーション力
2.コラボレーション力
3.チームワーク力
4.リーダーシップ力
5.マネジメント力
では、なぜ、筆者は、この「当たり前のこと」を、申し上げるのか。
それは、現在の日本企業においては、この「五つの階段」をしっかりと登ってこなかったため、「話が分かりにくい上司」「仲間の気持ちが分からないリーダー」「部下がついてこない管理職」といったマネジメント人材が多いからである。
そして、こうした力量不足の上司、リーダー、管理職は、当然のことながら、彼らが部下として預かる若手社員の成長を支えることはできない。
なぜなら、「自分を成長させられない人間は、他人を成長させることはできない」からである。
では、自身の成長度を測る問いを一つ挙げよう。
読者は、過去3年間、自身の「話す力」(話術)や「聞く力」を、どれほど磨いてきただろうか。
「話す力」や「聞く力」は、極めて奥の深い世界。されど、十年一日の如く、改善と成長の無い「話す力」「聞く力」で仕事をする管理職が多い。
最近、優秀な若手社員が会社を退職する事例が増えているが、その多くが、「この職場では成長できない」を理由として述べている。その真意は、実は、「この上司の下では成長できない」であろう。
そして、ここにこそ、現在の日本企業の隠れた危機、しかし、極めて深刻な危機がある。
田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国から1万名を超える経営者が集う田坂塾・塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など、国内・海外で150冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp


