同様にEQにも、自分の最初の反応が必ずしも最善とは限らないと認識できるだけの自己認識と、他者が状況を異なるように見ている可能性を考慮できるだけの寛容さが必要なのだ。
他者との意見の相違がEQを試す
人が受け取る最も有益なフィードバックのなかには、耳の痛いものもある。自分が絶対にうまくいくと確信しているアイデアに対して、同僚が反対するかもしれない。自分では聞きたくないような行動の欠点を、友人が指摘するかもしれない。ある口論について、配偶者や家族があなたの記憶とはまったく異なる記憶を持っているかもしれない。そうした瞬間は不満を生むこともあるが、同時に、感情のコントロール、共感、傾聴、相手の視点に立って物事を捉える力(パースペクティブ・テイキング)など、EQに関連するスキルを発揮することを求めてくる。
AIは異なる種類の相互作用をもたらす。安心感を得たいときにはいつでも利用でき、対話に伴う対人リスクが極めて低いからだ。AIの感情を傷つけたり、関係を損ねたり、発言内容を否定的に評価されたりすることを心配する必要はない。このためAIは壁打ちの相手として有用だが、それは同時に、その対話には人間関係で必要とされるような感情的スキルが必要とされないことも意味する。
もし、AIがあなたの見方を否定せず肯定ばかりするなら、その体験は精神的な支えとなる一方で、他者がその状況をどう見ているかに思いを巡らせる機会は少なくなってしまう可能性がある。そこで懸念されるのは、AIが共感的に聞こえるかどうかではなく、それを使用する人間が他者に対する共感を実践し続けられるかどうか、という点に移っていく。
AIの同意がEQにもたらす意味
AIの迎合がEQに与える長期的な影響について、研究者たちにもまだ分かっていないことが多い。現在の研究が示しているのは、過度に同意するAIが、自らの解釈に対する人々の確信度や、責任を取ったり対立を修復したりする意欲に影響を与え得るということだ。称賛やマインドセットに関する数十年の研究もまた、受けるフィードバックの種類が間違いや課題に対する人々の対応方法に影響を及ぼし得ることを示している。
これらの知見は、AIによる同意がEQを弱めることを証明するものではないが、研究者やリーダーたちがこの点に注目すべき理由を提示している。EQは一貫して、「自信」と「正確さ」が別物であると認識する能力を求めてきた。AIがアドバイスの情報源として一般的になるにつれ、自分に同意してくれるシステムを疑う能力は、自分自身を疑うべきタイミングを知ることと同じくらい重要になるかもしれない。


