ロシアの保健当局は6日、WHOに対し、イルクーツク州ではペストの症例は確認されていないと報告した。同州のイゴリ・コブゼフ知事は、保健当局が「包括的な防疫措置」を講じていると強調した。
他方で、死亡した研究員が患っていた「原因不明の肺炎」の原因は分かっておらず、同研究員がペストに感染していたのか、あるいは研究所内で何らかの事故が発生したのかについても明らかになっていない。地元紙リュジ・バイカルは、同研究員が研究所内でペスト菌の入った試験管を誤って割ったと報じたが、これに関するロシア当局の確認は得られていない。
WHOのクリスチャン・リンドマイヤー報道官はロシア国営タス通信に対し、同機関の職員がロシアの保健当局と連絡を取り、本件の発生状況や経緯、現在行われている検査と結果、接触者追跡の状況、接触者の健康状態のほか、国際的な公衆衛生上の影響について確認していると説明した。だが、同報道官は後に「非公式な情報」に基づけば「一般市民に対する公衆衛生上の危険性は低いとみられる」と述べた。同報道官は、死亡した患者の接触者はすべて「特定されており、健康状態を監視されているが、現時点で症状を示している者はいない」とした。
ロスポトレブナドゾルは4日夜、イルクーツク州の「衛生・疫学的状況は安定している」と発表した。同庁は広範な検査を実施した結果、死亡した患者の検体からは、研究所で行っていた業務に関連する病原体は検出されなかったと明らかにした。ただし、同庁は、同研究員の死亡が他の疾患によるものなのか、またどのようにして肺炎を発症したのかについては言及しなかった。
同庁によると、ペスト対策研究所の職員からは過去10日間、新たな感染症の症例は報告されておらず、同研究所も「病原性微生物に関連する緊急事態」は確認していないという。死亡した研究員の濃厚接触者に対する検査では、新型コロナウイルス感染症とライノウイルス感染症がそれぞれ2件確認されたが、これらが同研究員の死亡と関連しているかどうかは分かっていない。
WHOによると、ペストは病原体であるペスト菌によって引き起こされる人獣共通感染症だ。ペスト菌は通常、げっ歯類などの小型哺乳類や、それらに寄生するノミに生息する。最も一般的な病型である腺ペストは、菌を持つノミに刺されることで動物から人間へと感染し、「横痃(おうげん)」と呼ばれるリンパ節の痛みを伴う炎症を引き起こすことがある。一方、頻度は低いものの、はるかに毒性が強く、呼吸器飛沫(ひまつ)などを介して人から人へと感染し得るのが肺ペストだ。肺ペストは早期に発見・治療しないと致死率が極めて高くなる。


