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2026.11.06 16:15

税理士に聞いた「年金、何歳からもらうのが得」? 意外なワナは『手取り額』だった

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見落としがちな「4つの落とし穴」

手取りの問題以外にも、繰下げには見落としがちな注意点があります。ここでは、制度による注意点を「落とし穴」としてコメントします。これが、「年金、一体何歳からもらうのが得?」の答えを難しくしている2つ目の理由です。

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・落とし穴その1:加給年金は増えない

厚生年金に20年以上加入し、年下の配偶者がいる場合などには「加給年金」という家族手当のような加算がつきます。しかし、この加給年金は繰り下げても増額されません。さらに、老齢厚生年金を繰り下げている間は、加給年金も受け取れなくなります。年下の配偶者がいる方は、老齢基礎年金だけを繰り下げるといった工夫も検討の余地があるでしょう。

・落とし穴その2:働きながらの繰下げ(経営者の方は特に注意)

60歳以降も働いて厚生年金に加入している場合、給与(役員報酬)と老齢厚生年金の合計が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。これを「在職老齢年金」と言います。この基準額は2026年4月から引き上げられ、2026年度は月65万円です。注意したいのは、支給停止された部分は繰り下げても増えないということです。役員報酬が高い経営者の方は、「繰り下げたのに思ったほど増えなかった」ということになりかねないので、注意が必要です。

・落とし穴その3:待機中に亡くなった場合

繰下げの待機中に亡くなった場合、ご遺族は65歳からの本来の年金を「未支給年金」として請求できます。ただし、繰り下げによる増額分は反映されません。また、年金の請求には5年の時効があります。

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・落とし穴その4:さかのぼって一括で受け取る場合

繰下げの待機中に、「やはり65歳からの年金をまとめて受け取りたい」と考えが変わることもあると思います。。その場合、さかのぼって一括で受け取ることもできます。70歳を過ぎてからさかのぼる場合でも、請求の5年前に繰下げの申出をしたものとみなして、増額された年金を5年分まとめて受け取れる仕組みがあります。ただし、税理士として強調したいのは、さかのぼって受け取った年金は、受け取った年ではなく、本来受け取るはずだった各年の所得として扱われるということです。そのため、過去の年の所得税や住民税、保険料が見直され、追加で負担が生じることになります。場合によっては追加の手続きの費用が多くかかることもあります。まとめて受け取る前に、税金面の影響も必ず確認してください。

何歳から受け取るかを決める「3つの物差し」

では、結局何歳から受け取ればよいのでしょうか。冒頭でお伝えしたとおり、答えは人によって異なります。ただ、それで終わってしまっては、結局「年金、一体何歳からもらうのが得?」に答えたことになりませんので、ここでは、判断の手がかりとなる3つの検討ポイントをご紹介します

・物差しその1:寿命の見通し

ご自身の健康状態やご家族の長寿の傾向から、平均より長生きしそうだと感じるなら、繰下げが有利に働く可能性は高まります。

・物差しその2:働く予定と手元資金

繰り下げている間は、給与や預貯金で生活費をまかなう必要があります。何歳まで働くのか、待機期間の生活費を無理なく用意できるのかを考えましょう。経営者の方は、役員報酬との兼ね合いも重要です。

・物差しその3:家族の状況

年下の配偶者がいて加給年金の対象になるか、ご自身に万一のことがあった場合に家族の生活はどうなるかも、判断に影響します。

また、選択肢は「全部繰り下げる」か「繰り下げない」かの二択ではありません。老齢基礎年金だけ、あるいは老齢厚生年金だけを繰り下げることもできます。さらに、繰下げは事前に「何歳から」と決めて届け出る必要はなく、66歳以降であれば好きな時期に請求できます。迷ったら、まずは受け取らずに様子を見て、状況が変わった時点で決めるという方法もあるのです。

最後に

今回は、「年金、一体何歳からもらうのが得?」という皆さんが頭を抱えることについて、簡単な計算式を使って考えてきました。結論をいえば、繰り下げは「得をするための方法」ではなく、「長生きしたときに困らないための保険」だということです。早く亡くなれば受け取り総額は少なくなり、長生きすれば多くなる。これは保険そのものの性質です。「年金、一体何歳からもらうのが得?」という問いは、「何歳まで生きるか」という誰にもわからない問いと表裏一体なのです。

だからこそ、額面の増額率だけで判断するのではなく、ぜひ一度、ご自身の年金額を「手取り」に置き換えて計算してみてください。ご自身の年金見込み額は、毎年届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。税金や保険料は所得やお住まいの地域によって変わるため、わからないことがあれば年金事務所や我々税理士にご相談ください。

今回は、少しでも読者の皆さんの理解に資するよう、かなり大胆に要約した部分があります。わかりやすさを重視したため、その点はご容赦いただければと思います。人生100年時代、年金の受け取り方は老後の暮らしを左右する大きな選択です。本稿が、皆さんがご自身にとって納得のいく選択をされる一助となれば幸いです。




坂口勝啓◎2003年10月~公認会計士2次試験合格後、あずさ監査法人入所。主にIPO監査業務に従事し、IPOを実現した社数は日本トップクラス。2018年3月~WARCに入社。IPO監査の経験を生かし、IPOコンサルティングに従事。2018年、坂口税理士事務所設立。監査法人における監査業務の経験を生かし、他の税理士では実績の少ない「書面添付制度」を積極的に推進するとともに、税務業務だけでなく、事業計画策定・融資支援・補助金等支援等、支援企業の「未来志向」を掲げ高付加価値を提供。

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