稼ぎではヤヤに負けていると自覚しているからこそ、カールは自分のプライドを守ろうと対等を主張するのだが、タクシーからエレベーターの中にまで持ち越される口喧嘩を通し、むしろカールの融通の効かなさ、大人気なさが目立ってくる。しかもヤヤの目標はセレブ妻で、カールはインスタ映えのための男に過ぎない。
冒頭の男性モデル・オーディションのシーンからヤヤがあけすけな本音をカールに告げる最後の場面まで、このパートの通奏低音は一貫して「金」ですべてがランクづけられる階層社会だ。
パート2では、洋上の豪華なクルーズ船での超富裕層の世界がコメディタッチで描かれる。それをまずグロテスクなまでに示すのが、仕事の始まる前にスタッフたちを鼓舞するチーフのポーラと、彼女の掛け声に合わせ「マネー! マネー!」と狂ったように連呼する白人スタッフたちの姿だ。ここにも、富裕層ビジネスで少しでも階層上昇しようとする人々の「金」への執着が溢れている。

2023年8月4日発売『逆転のトライアングル』 Blu-ray:¥5390(税込) DVD:¥4290(税込) 発売・販売元:ギャガ(c)2022 – Plattform Produktion AB, Film i Väst AB, Sveriges Television AB, Essential Filmproduktion GmbH, Coproduction Office Ltd., Société Parisienne de Production SARL, Coproduction Office Aps., British Broadcasting Corporation, The British Film Institute
一方、彼らより階級が下で裏方業務を受け持つアジア・アフリカ系のクルーたちは、黙々と仕事に勤しむ。乗組員の階級に人種の違いが露骨なまでに反映されている。
登場する超富裕層は、有機肥料で大儲けした露悪的で一癖あるロシア人のディミトリと妻のベラ、見るからに上品なイギリス人の老夫婦ウィンストンとクレメンティンは武器商人で、独り者でおだてに弱い中年紳士ヤルモはIT長者……と、それぞれの描き方がなかなかスパイシーだ。
そんな中、あるクルーの男に不快感を示したヤヤのクレームをスタッフに伝えたカールは、彼が即座に解雇されたことを知り罪悪感に苛まれる。インフルエンサーでクルーズ代もタダのヤヤの御相伴に預かって乗船したものの、富裕層が支配する世界の縮図のようなこの船内で、彼は自分の位相を再確認せざるを得ない。

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カールとヤヤが下働きのクルーと金持ちの人妻にそれぞれなりきって戯れる場面では、まさに『流されて…』のように性愛を梃子にして階層逆転したいというカールの欲望が仄見える。


