サハラ砂漠以南で5億6000万人超が電気を使えず、送電線のない村は小さな地域電力網が頼り
サハラ以南のアフリカでは5億6000万人以上が電気のない生活を送っている。世界銀行が主導するイニシアチブ「ミッション300」は、2030年までに3億人に電力網へのアクセスを提供することを目指しており、これまでに約6400万人が電気を利用できるようになった。
送電線が届かない未電化地域にとって、解決策となるのは多くの場合、太陽光パネルと蓄電池の組み合わせや小型水力発電を利用した小規模地域電力網「ミニグリッド」である。
村が使う量より大きな発電設備で電気が売れ残る──補助金に頼る事業に民間投資家は資金を出さない
ミニグリッドは当初の村の需要を上回る規模で建設され、より多くの電力を供給できるよう設計されている。新たに電力供給を受ける家庭では、まず電球数個と携帯電話の充電器などから利用を開始するのが一般的だ。ミニグリッドの平均的な利用者が1カ月間に消費する電力量は、米国の一般家庭がたった半日で消費する電力量に相当する。そのためミニグリッドが供給する電力の多くは使われないまま、余剰電力となりやすい。しかし、太陽光パネルや蓄電池、送電線にかかるコストは、実際の電力消費量がどうであれ変わらない。収支の差を埋めるため、アフリカのミニグリッドの多くは助成金に依存せざるを得ず、この状況が民間投資家を遠ざける要因となっている。
「投資家たちはこう言うんだ。『ちょっと待った、収益の半分以上が助成金だ。これは持続可能じゃない。そんなものには投資しない』と」。ロックフェラー財団が支援する「ミッション300アクセラレーター」を率いるアンドリュー・ハースコウィッツは、筆者にこう話した。
電気を使うほど稼げるビットコイン採掘、なぜ小さな発電所に理想的な買い手なのか
これに対してGridlessのハースマンがとった解決策は、ビットコインの「マイニング(採掘)」だった。ビットコインはデジタル通貨であり、マイニングとは新しいコインを生み出すプロセスだ。この作業を行う「マイナー(採掘者)」に特定の雇用主は存在しない。彼らが所有するコンピューターが演算競争を繰り広げ、勝者には報酬として新規発行されたビットコインが付与される。かつて金鉱掘りが採掘した金鉱石を売って現金を得たように、マイナーはビットコインをドルに換金する。使える電力が多ければ多いほど、より多くの演算処理を行うことができる。
つまり、ビットコインのマイニングマシンは、ミニグリッドの理想的な顧客といえる。余剰電力を余すところなく使い切り、村人が電力を必要とする時には瞬時に電源を遮断すればいいからだ。
ザンビアの小規模水力発電所は余った電力を売り、1年足らずで約2000人と約40事業所を新規接続
ハースマンは最たる事例として、ザンビアの農村部にある小規模水力発電所「ゼンガミナ」を挙げる。地元の村では発電所の電力の3分の1程度しか消費しておらず、運営元は支援者に資金提供を求め続けていた。そこでGridlessは、ビットコインのマイニングマシンを輸送コンテナ1基に積んで持ち込み、余剰電力を活用することにした。
それから1年のうちに、新たな収入を得た発電事業者はさらに約2000人の住民に電気を届け、トウモロコシの製粉所、理髪店、診療所など約40の事業所にも電力を供給するようになった。
ケニアでは発電分を売り切れるようになり、村の電気料金が4分の1以上下がった
また、ケニアではGridlessの取り組みにより発電事業者が発電した電力のすべてを販売できるようになり、村人が支払う電気代が4分の1以下に値下がりした。
「十分な利益が得られれば、電力会社が可処分所得の少ない消費者に過剰な料金を請求することはない」とハースマンは言う。


