ついにその習慣を検証した研究
だからこそ、ブリガムヤング大学などの心理学者ダニエル・サウスウィックらが率いる新しい研究は異例なのだ。チェス対局サイト「Chess.com」は、2024年3月に同サイトに登録した4万4000人以上のプレイヤーの記録を研究チームに提供し、研究チームは彼らを6カ月間にわたって追跡した。
本人にトレーニング方法を尋ねる代わりに、実際の行動を直接観察することができたのだ。プレイされたすべてのレーティング対局、視聴されたレッスン、挑戦したパズル、レビューされた過去の対局が、各プレイヤーのレーティングの推移とともに記録された。また、研究チームは検証を行う前に、自らの予測を事前に登録していた。
結果は明白だった。同じ1時間であっても、集中した学習活動に費やされた時間は、単に対局をプレイするだけに費やされた時間と比較して、約3.5倍のレーティング向上につながっていた。
そのなかでも最も効果が確実だったのが、自身の過去の対局をレビューすることだった。つまり、指し手を再現し、どこで間違えたかを特定し、同じ局面からやり直してみることだ。対局のレビューは、単にプレイするよりも5倍以上効率的であり、初心者から上級者まで、すべてのスキルレベルにおいてただプレイするよりも効果が高い唯一の活動だった。
それにもかかわらず、プレイヤーは時間の約90%をただプレイすることだけに費やしていた。
「自分のビデオを研究する」習慣
ここには優秀な人の本能が働いている。プレイすることは生産的に感じられる。楽しく、能動的で、着実に前に進んでいる感覚が得られる。これとは対照的に、敗戦をレビューすることは、忘れてしまいたいミスと向き合うことを意味する。
しかし、極めて優秀な人は異なる選択をする。この研究において、最もレーティングの高いプレイヤーは、初心者に比べて対局のレビューに数倍の時間を割いていた。彼らはそれぞれのミスを、ただやり過ごすものではなく、「情報」として扱った。これは、試合の映像を見直すアスリートや、困難な症例の後にデブリーフィング(振り返り)を行う外科医、うまくいかなかった草稿を読み返す作家に見られるのと同じ習慣である。
この習慣を強力にしているのは、エリクソンが説明した条件に極めて忠実に一致している点にある。フィードバックが自分自身に特化したものとなる。弱点は具体的であり、正しくできるようになるまで同じ状況に何度も挑戦できる。それに比べて、単に活動を繰り返すだけでは、同じミスを繰り返す傾向がある。


