谷本:今のお話を聞いていると、発達障害の特性そのものが創造性につながるケースもある一方で、その力を引き出すためには、トレーニングや経験も重要だということですよね。クリエイターや起業家の方々を見ていると、意識的に新しいものと出会い、自分の中にある知識や経験とを結び付けながら、これまでにないアイデアを生み出しているように感じます。そうした「掛け合わせる力」は、どのように身についていくものなのでしょうか。
筧:明確な方法論があるわけではないのですが、私個人の経験から言うと、それはやはり数を出すことで磨かれると思います。
企画を考えるときって、ブレインストーミングのようにとにかくアイデアを出していきますよね。そして、しばらくすると大抵、アイデアを出し尽くしてしまう。でも、本当におもしろいものが出てくるのは、その先なんですよね。
頭の中の深いところには、過去に見たり聞いたり、感じたりした知がたくさん沈殿しています。アイデアを出し始めた当初は、頭の中の浅い部分に溜まっている知だけを材料として活用しています。しかし、数を出し続けていると、それだけでは足りなくなってくるので、強制的に深いところの知にまで意識が向くんです。その結果、深く沈んでいる沈殿物がかき混ぜられて浮かび上がり、今まで結び付かなかったもの同士がつながり始める。そこではじめて新しい発想が生まれるんです。だからまずは一度、表層的な部分にあるアイデアを出し切ることが大事なんだと思います。
ただ、ひとりでできることには限界があります。複数人で考えることで、ある人にとっては大したことはないアイデアが、別の人にとっては頭の中の沈殿物を揺り動かすきっかけになることがある。だからこそ、多様な人たちが上下関係を気にせず、否定されることを恐れずに、どんなアイデアでも自由に出し続けられる場をつくることが、創造性を生み出すうえでの基本形なんじゃないかと思っています。


