「手のかかる子」と呼ばれて——当事者だから分かる生きづらさ
筧:私自身が発達障害を抱えて生きてきて、周囲になかなか理解されなかった経験があります。子どもの頃には周りの話についていけなかったり、授業中やテスト中に席を立って歩き回ったり。毎日のように忘れ物を繰り返したりすることが、よくありました。そうした発達特性を理解されることも少なく、「できない子」「手のかかる子」だという目で見られて、ずっと生きづらさを感じていました。
ありがたいことに、今では周囲の理解にも恵まれ、こうして仕事ができています。しかし、発達障害のために強い生きづらさを抱え、学校や職場になじめなくなったり、社会とのつながりを失ってしまったりする人は、今も数多くいると感じています。
私は「発達障害は可能性の宝庫」だと考えています。先ほどお伝えした通り、発達障害がある人は、ある部分はとても尖っていて、ある部分は大きくへこんでいる。つまり、発達に大きな凸凹がある状態です。だからこそ、その凸の部分を生かすことができれば、本人が幸せになるだけでなく、社会にとって大きな力になります。
最近では日本企業でも、発達特性がある人材を生かそうという機運が高まってきています。それはとても大切なことだと思います。一人ひとりの凸の部分を生かせる社会をつくっていくことが、今後ますます求められていくでしょう。
谷本:どれぐらいの確率で、発達障害がある方がいるのでしょうか。
筧:22年に文部科学省が実施した調査では、通常学級の小中学生の8.8%に特別な教育的支援を必要とする可能性があるとされていて、人口の1割前後はいるのではないかと思います。例えば、小学校で1クラス30名の生徒がいるのなら、その中に3名程度はいる計算です。
谷本:多様性の観点でいうと、LGBTQの方も10人にひとり程度いると言われています(2026年dentsu Japan調査)。それと同じように、職場やチームのなかに発達特性を持つ人がいるのが、むしろ当たり前なんですよね。経営者やリーダーが当事者だという場合も、チームメンバーが当事者だという場合もある。その前提で、お互いを理解しながら仕事を進めていくことが鍵になりますね。
筧:そうですね。ただ実際には、大企業などの組織で発達障害がある人が働いている割合は、1割にも満たない可能性があります。その理由は、採用面接でつまずいてしまうケースが少なくないから。面接で採用担当者と上手くコミュニケーションが取れなかったり、自分の発達特性について適切に伝えられなかったりして、本来は高い能力を持っていても、採用に至らないことがあります。


