谷本:近年、「発達障害」という言葉が、ビジネス界でネガティブではなく、プラスの要素としても語られることが多くなったように思います。昨今のこうした流れの背景は、何だと考えますか。
筧:発達障害とは、得意なことと苦手なこととの差が大きく、社会生活に困難を抱えやすい状態を言います。一方で、発達障害がある人は、特定の分野で際立った能力や才能を発揮することもあります。この10年から20年で、テクノロジー分野の優れたスタートアップが世界中で生まれ、新しいアイデアで社会を変えていこうとする経営者たちが脚光を浴びるようになりました。
そうした人々の中には、高い創造性や集中力、既存の枠組みにとらわれない発想など、発達障害の特性と重なる特徴を持つ人も多いと言われています。そうしたイメージが広がったことも、背景のひとつでしょうね。
もちろん、公表していない場合や自覚していない場合も多いので、真実は分かりませんが、私の中では、スティーブ・ジョブズがその先駆けだという印象があります。その後、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグのような個性的な経営者も登場し、マスクは21年、ASDであることを公表しています。
彼らは世界が求める、ユニークな発想を持つ優れた実業家である一方、どこか苦手な部分や不器用な部分も併せ持っている。そうした人物像が広く認知され、ひとつのロールモデルになってきた流れなのかなと思っています。
谷本:昨今、注目されている「(必要)多様性の法則」(※)とも、通じるところがありますね。つまり、多様性は多様性によってしか制御できない。私たちは、そうした突出した部分を持つ起業家の存在は認識しています。ただ、「あの人はこだわりが強い」とか「ちょっと変わっている」といった個人の性格として受け止めることが多く、その背景にある発達特性まで理解できていないと思うんですよね。
※必要多様性の法則…外部環境が持つ複雑さや多様性に対応できるのは、それと同等以上の多様性を内部に持つシステム(組織)だけだという考え方。英国の医学者で精神科医、W・ロス・アシュビーが提唱した


