金融のプロと学ぶ「実践の場」資本市場の未来を担う若者たちの挑戦
大学生企業分析コンテスト「Gyoseki Competition」から生まれる、新しい金融教育のかたちとは。
加藤寛之 | 一橋ICS客員教授、Gyoseki代表取締役

東証が進めてきたコーポレートガバナンス改革やPBR1倍割れの是正要請などを背景に、日本企業の収益力改善は着実に進み、日経平均株価は一時7万円の大台を突破した。さらに新NISAの浸透や世界的なインフレによる現金の目減りも重なり、社会全体で「貯蓄から投資へ」のシフトが加速している。こうした大きな地殻変動のなかで、就職先として資産運用業界が注目を集めており、関連する就活イベントでは立ち見が出るほどの熱気を見せている。
しかし、金融の現場が真に求める人材像は激変している。生成AIの進化により、財務データや企業情報には誰でも容易にアクセスできるようになり、単に「知識がある」「情報をまとめられる」だけでは差別化できない時代になったからだ。今、より重要になっているのは、企業を分析して自ら仮説を立て、その考えを他者に伝え、議論を通して検証し、磨き上げる力である。欧米では学生時代から投資クラブやケースコンペティションに参加し、プロからフィードバックを受けながら切磋琢磨する環境が当たり前に存在する。一方、日本では、第一線のプロから直接指導を受け、実務レベルで企業を分析し、自らの仮説や考えをプロにぶつける「実践の場」が不足している。この課題に対するひとつの答えとして創設したのが、大学生企業分析コンテスト「Gyoseki Competition(Gyoseki大会)」だ。Point72、ゆうちょ銀行などで運用に携わってきた私は、2019年に第一子が生まれたことを機に「次の世代に何を残せるか」と考え、都内の大学の投資サークルに声をかけて手弁当で勉強会を始めた。その後、学生たちが身につけた力を第一線のプロに直接ぶつけ、評価を受けられる場をつくろうと、Gyoseki大会をスタートさせた。
第4回大会には国内外から約170チームの応募があった。これまで延べ750人以上の学生が参加し、卒業生はPoint72やみずほ証券、ゴールドマン・サックスなど国内外の金融機関へと進んでいる。採用側にとっても、大会を通じて学生の実践的な分析力や思考のプロセスを見ることができる。そして現在、第5回大会のエントリーが始まっている。Gyoseki大会は単なるコンテストではなく、学生とプロが本気で向き合い、実践を通じて学ぶ場だ。日本の資本市場を支える人材を育てる新しいモデルとして広げていきたい。


