良いM&Aの機会がない、は本当に「相手企業の問題」なのか?
M&A仲介をしていると、買い手企業からよく聞く言葉があります。
『なかなか良い企業とのご縁がないんです』。
話を聞けば、M&Aに消極的なわけではありません。求める企業像も具体的で、資金もある。M&A推進室を設けている会社もある。IR資料だけを見れば、「M&Aで成長する会社」に見える。
ところが、なかなか成約に至らない会社もあるのです。『規模が小さい』『地域が違う』『利益率がもう少し欲しい』『社長が残らない』。一件ずつ見れば、理由は理解できます。
しかし、それが続くと、私たちM&A仲介者にとっての見え方が変わります。何百社と検討しても成約できない。買収意向表明書までは出すが、最後には売主から選ばれない。そしてまた、『なかなか良い企業とのご縁がないんです』と漏らされるケース。
本当に問題は「良い企業がいないこと」なのでしょうか。
なぜなら、売却を検討されている企業(以下「売り手企業」といい、その企業のオーナーを「売主」という)の情報は、すべての買い手企業に同じタイミングで届くわけではないからです。
売り手企業から相談をいただいたとき、仲介会社も「どの買い手に最初に紹介するか」を考えます。そのとき優先したくなるのは、単に資金力のある会社ではありません。
『ここなら本気で検討してくれる』『判断が速い』『トップがすぐ動く』『売主にご紹介する理由をきちんと説明できる』。そう思える会社なのです。
逆に、前向きに検討はしてくれるものの、判断基準がその都度変わり、買収意向表明書を出しても最後に選ばれない。そうしたことが続けば、仲介側も自然と優先順位を下げます。
これは誰かが『この会社には紹介しない』と決める話ではなく、もっと自然に起きることなのです。
売り手企業から相談をいただけば、まず成約の可能性が高く、売主にも自信を持って紹介できる先へ連絡します。そこで話が進めば、他の候補企業まで紹介が届かないこともあります。最近では売主自身から、『この会社に優先的に提案してほしい』と依頼されることも増えました。
つまり、「良い企業がいない」のではなく、「良い企業との接点を持つタイミングが遅れている可能性が高い」のです。


