ファルコン9は史上もっとも低コストを実現した宇宙輸送機だ。しかし、スターシップとスターリンクV3によるペアリングは、すでにそれと同等以上の経済性を実現している。スターシップの第1段と2段がともに再利用されはじめれば、打ち上げコストはさらに低減されるだろう。これこそが、イーロン・マスク氏がファルコン9を退役させ、すべてをスターシップに切り換えようとしている理由だ。
マスク氏は8月20日、「タワーアームによるシップのキャッチは、数ヶ月以内に行う」という内容をXにポストした。次回15回目のフライトでの実行が期待されていたが、今回、ブースターとシップのエンジンがともに不具合を起こしたことから、その実施にはさらに後続のミッションに延期される可能性が高くなった。
地球を6周するはずが、2周弱で早期に帰還
今回のミッションでスターシップは、本来であれば約10時間かけて地球を6周し、南米チリ沖に着水するはずだった。しかし、打ち上げから1時間27分後に設けられたチェックポイントにおいて、エンジントラブルを起こしたシップは周回軌道から早期に離脱させることが決定された。その結果、地球を2周弱ほど周回したシップは、打ち上げから3時間8分後、ハワイの北方約800kmの北太平洋に軟着水した。
ただし、着水ポイントがあらかじめ回収チームに配備されていたことからも、こうした事態が想定されていたことがうかがえる。つまり、トラブルには見舞われつつも、空域・海域の安全が確認されたうえでシップは帰還し、海上に着水したことになる。
スターシップが初めて地球周回軌道を航行したこの9月28日は、同社初の軌道ロケットである「ファルコン1(4号機)」がはじめて周回軌道に到達した日でもある。それは2008年のことだ。一介の宇宙ベンチャーからスタートした同社はわずか18年の間に、人々の想像を超えるさまざまな偉業を成し遂げてきた。その流れはスターリンクV3の本格的な配備や、軌道上AIデータセンターの構築、有人月面着陸、火星探査など、今後予定される多くのミッションに引き継がれようとしている。


