サイエンス

2026.10.05 17:30

パクチーに「石鹸やカメムシ」を感じるのは5人に1人、その遺伝子メカニズム

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パクチーの風味が、人によって異なる理由

人がにおいを感じるのは、受容体と呼ばれるにおいを受け止める部位があるからだ。人間のゲノムにはこの嗅覚受容体の遺伝子が、実際に機能しているものだけでも約400ある。この遺伝子のそれぞれが、空中を漂う化合物のうち、特定の分子群をつかまえるタンパク質を生成している。人がにおいとして体験しているのは、実際にはにおいの源となる分子が、どの嗅覚受容体を活性するか、というパターンなのだ。

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これらの遺伝子には個人差があり、その違いはゲノムの他のどの部分と比べても多い、と言っていいほどだ。2019年に『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』誌で発表された研究では、332人を対象に、保有する嗅覚受容体遺伝子すべての配列を解析した。その結果、たった一つの受容体にバリエーション(変異)があるだけで、提示されたにおいの強さや快・不快の感じ方が変わってしまうケースが多々あることが分かった。

これが現実の場に及ぼす影響としては、ある人にとってははっきりと感じ取れるにおいが、別の人にはほぼ感知できないという現象が挙げられる。こうした現象の極端な事例は、生物学者によって特異的無嗅覚症(specific anosmia)と呼ばれている。これは、ほかのにおいは正常に感知できるのに、特定のにおいだけが感知できず、嗅覚のブラインドスポットが生じるという症状だ。

パクチーに関しては、ブラインドスポットと逆の現象が起きているようだ。2012年に『Flavour』に掲載された研究では、パクチーが石鹸のように感じられるかどうかを申告した1万4000人以上の人を対象に、そのゲノムを比較した。その結果、研究チームは「11番染色体」にある嗅覚受容体遺伝子群に着目した。

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ここに含まれる遺伝子の1つである嗅覚受容体遺伝子「OR6A2」は、パクチー特有のにおいの源となっている、複数のアルデヒドを捕捉する役割を果たしている。現在有力となっている説では、この受容体の特定の変異タイプが、石鹸のにおいに対して並外れて敏感であり、そのため、パクチーの葉に含まれるその他のにおいを凌駕して、石鹸のにおいだけが感じ取られるようになる、というものだ。

とはいえ、ここでは、すっきりした説明を試みるよりも、実態をありのままに告げるべきだろう。遺伝子のシグナルは現実に存在し、再現もされているが、その影響力は小さい。同じ研究によると、この遺伝子変異で説明できるのは、個人差の0.5%ほどだという。さらに、一般的な変異によって説明される遺伝率(heritability:ある形質の個人差が、遺伝的要因によってどれくらい説明できるかを示す割合)は10%未満だった。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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