1. 生後3カ月から始まる「一個の人間」としての教育
フランスの人間関係の根底には、「年齢に関わらず、一人の独立した『個』として尊重する」という徹底した美学がある。
「驚かれるかもしれませんが、フランスでは生後3カ月から赤ちゃんに自分の部屋を与えます。親と同じ部屋で寝かせるのではなく、幼い頃から『一人の人間』として扱うのです。家庭でバカンスの行き先を決めるときも、親は必ず『お前はどう思う?』と子供に問いかけ、意見を尊重します」
幼少期から「個」として認められて育つため、大人になっても過剰な承認欲求を抱えたり、立場を誇示したりする必要がない。歳を重ねても「年相応にしなさい」「老人らしくしなさい」といった抑圧を受けることもなく、常に自分らしくいられる環境が整っている。
2. 肩書きや年齢に依存しないフラットな関係性
日本の「老害」現象の背景には、会社での肩書や過去の権威への執着が見え隠れする。一方でフランスでは、仕事の肩書や年齢が個人の価値を決定づけることはない。
「フランス人に自己紹介を求めると、会社名ではなく『私はエンジニアです』『〜の技術者です』と自分の職種(ファンクション)を答えます。まず会社名や年齢を気にする日本の文化とは対照的です。弁護士や会計士、企業のトップであっても非常に気さくでフラット。『先生』扱いされることもなく、社内でもニックネームやファーストネームで呼び合います」
「肩書」ではなく「一個の人間」として周囲と接しているため、引退しても失うものがなく、威張ったり不機嫌を撒き散らしたりする理由がないのだ。

3. 年齢の枠を超えて「新しい情報」をアップデートし続ける
梅只氏が指摘するもう一つのポイントは、歳を重ねても「新鮮なコミュニケーション」を持ち続ける姿勢だ。
「新しい場所で多様な人とやりとりをしていると、最先端の情報や新鮮な刺激が次々と入ってきます。それを自分で調べたり受け止めたりして、常に感覚をみずみずしく保つ。歳をとったからと閉じこもるのではなく、新しいものに心をひらいていることが、ご機嫌でいられる大きな要因だと思います」
歳を重ねても服装や生き方に縛りはなく、おばあちゃんになっても自分らしいおしゃれを楽しんで街に出かける。年齢問わず色鮮やかなワンピースを着こなすフランスの人たちの生活は、見ていても感心するばかりである。
周囲も「高齢なのに」といった偏見の目で見ることなく、困っている人がいれば自然と手を差し伸べる。過干渉せず、それでいて温かい距離感が街全体に漂っている。


