AI

2026.09.28 08:07

中小企業向け「手頃なAI」の時代、間もなく終焉へ

Adobe Stock

Adobe Stock

ここ数週間、特に大手ブランドを中心にAI導入コストが急騰しているという報道が相次いでいる。

Canvaは最近、AIコストの「急膨張」を受けて業績見通しを引き下げた。ウェブサイト開発企業のWixは、「AI関連費用の高さ」が一因となり、利益と企業価値に悪影響を受けた。Uberは社内利用の多さを理由に、AI支出に上限を設けている。

「使いすぎているだけで、トークンのコストが1〜2カ月で従業員のコストを上回るケースも見られる」と、J.Gold Associatesのアナリスト、ジャック・ゴールドは別のレポートで述べている。

中小企業はまだトークンの影響を受けていない……今のところは

幸いなことに、小規模企業はまだこの問題に直面していない。しかし残念ながら、その状況も長くは続かないだろう。

ほとんどの中小企業は、大企業のような方法でAIを利用しているわけではない。確かに、中小企業もメールの作成支援、リサーチ、アドバイスを得るために、ClaudeやChatGPTといったプラットフォームを活用している。Microsoft OfficeやGoogle Workspaceに搭載されているCopilotやGeminiの機能を(ある程度)利用し、プレゼンテーション、スプレッドシート、ファイル管理の生産性を高めている。しかし、自社ビジネス向けの独自のAIソリューションを開発しているところは、まだほとんどない。

中小企業のAIプロジェクトは増加中

とはいえ、筆者のクライアントの一部はそうした取り組みを始めている。ClaudeやChatGPTのようなAIプラットフォームを、会計、CRM(顧客関係管理)、人事、物流、受注管理などの各種システムに接続している。開発者を雇ったり、(筆者の会社のような)テクノロジー企業を利用したりして、自社の通話記録、メール、ファイル、マニュアル、文書、その他の技術資料を読み取り解釈できるように訓練されたモデルを構築している。

そして、週次の「エグゼクティブサマリー」を生成するAIベースのアプリケーションや、会話内容に基づいて見積もりを作成するツール、カスタマーサービス担当者や実際の顧客が自然言語のプロンプトを使って問題の答えを検索できるポータルなどを構築している。こうしたプロジェクトのコストは天文学的な額ではない。しかし、事業規模によっては決して無視できない金額になる。

例えば、上述したことの大部分を行うには、一般的にユーザー1人あたり月額20〜30ドル(約1万未満円)のAIプラットフォームのサブスクリプション料金が必要になる。それに加えて、開発者による導入・プログラミング費用、データとAIプラットフォームをつなぐ一般的なコネクターであるModel Context Protocol(MCP)などの接続コスト、そして継続的な保守費用を支払う必要がある。

ユーザー数が25人の小規模企業の場合、初年度のコストはサブスクリプション料金に約6,000ドル(約94万円)、導入費用に約1万〜2万ドル(約315万円)、そしてMCPコネクターにさらに約1,000〜2,000ドル(約31万円)を見込む必要がある。その後は、不具合の発生やユーザーサポートへの対応として、年間数千ドルの保守費用が発生すると考えておくべきだ。

これは決して軽微なコストではない。しかし、中小企業のオーナーは生産性の向上や顧客維持率、あるいは売上の増加を数値化することで投資対効果(ROI)を正当化できる。そこから得られる利益が十分に大きければ、取り組む価値はあるだろう。

中小企業のAIプロジェクトでも「エージェント」の活用が増加へ

しかし、これは単にプロンプトを入力し、レポートを作成し、支援を受けているにすぎない。まだ「実行」の段階には至っていないのだ。ごく大手の企業を除き、ほとんどの企業はメールキャンペーンの実行、顧客との対話、アカウントの照合、サービスチケットの作成、請求書の発行など、自社データに基づいてAIに実際のアクションを実行させているわけではない。

こうした活動には「AIエージェント」が必要となり、エージェントはアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を利用する必要がある。そして、その段階になるとトークンが必要になる。大企業のコストを押し上げているのは、まさにこのトークンの消費だ。しかし実際、中小企業がコストに影響を与えるほどのトークンをどれだけ消費するというのだろうか。大企業に比べればはるかに少ない。だが、覚悟はしておくべきだ。なぜなら、中小企業にかかるコストも依然として増加するからである。それも大幅に。

多くの専門家は、トークン化とサブスクリプションのコストが今後数年間で大幅に上昇し、最大5〜10倍に達する可能性があると考えている。なぜか。例えばOpenAIだ。新規株式公開(IPO)を控えるこのAI業界のリーダーは、インフラの構築、製品の進化、市場シェアの獲得のために、計算コストや経費としてすでに膨大な資金を流出させている。このような状況を永遠に続けることはできない。

ステイシア・ガーは最近、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に、企業のAI時代が大きな転換点を迎えつつあると寄稿した。

彼女は、組織は「事実上、AI導入に対して報酬を受け取っている状態だ」と主張する。

「この顧客獲得のプレイブック(戦略)は、経営幹部の購買層に対して、予算面や運用面での誤った安心感を与えた。それは『制限なし』『無料』『標準装備』といった、プレミアムなAIエージェント機能を特徴とするものだった」と彼女は指摘する。

ガーをはじめとする専門家は、こうした補助は消え去ると予測している。実際、すでに消えつつある。彼女は「人為的な価格設定の時代は終わりに近づいている」と語る。IPOに向けて準備を進めているOpenAIやAnthropicなどの大企業は、ウォール街という現実の壁に直面しているのだ。

こうした展開は、以前にも見たことがある。それは「フリーミアム(基本無料・一部有料)」モデルだ。かつては安価なオンラインコンテンツのプロバイダーであったNetflixは、過去10年間で月額料金を2倍に引き上げた。Uberは、自社サービスの市場シェアを獲得するために数億ドルを投じて莫大な赤字を出していたが、ここ数年で手数料を大幅に値上げした。eBay、Etsy、Booking.com、Expediaなどの他のオンラインサービスも、同様に手数料率(テイクレート)を引き上げている。

では、これが中小企業にとって何を意味するのだろうか。それは、そう遠くない将来、AIプロジェクトの導入や保守にかかるコストがさらに高くなることを意味している。5倍になるのか、あるいは10倍になるのか。それは議論の余地がある。いずれにせよ、中小企業にとって手頃な価格でAIを利用できる時代は、まもなく終わろうとしている。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事