
筆者も訪れたことがあるが、マンダパは、バリ島の文化を紹介する取り組みを積極的に行っている。バリ島出身のシェフが故郷の村を紹介し、野山で採集活動を行い、採れた食材でその場で伝統料理を作ったり、伝統家屋で建てられた地元の人の家を訪問する。伝統家屋では「友人の家に来たと思って、好きなように過ごしてほしい」と伝えられる。
料理や伝統絵画、バリ島では日常生活の一部になっている神への供物の花籠作りなどを体験できるが、どれにも参加せず、ただ日陰で寝転がってのんびりするという選択肢もある。「参加したいものだけに、好きなだけ参加する」さながら「体験のビュッフェ」のような、参加者に自由を与えることそのものが、今の時代らしいラグジュアリーのあり方だと感じた。
伝統は革新の継続により生まれるもの。「ザ・サミット」における数々のトークの中で、AIを活用したサービスの変化にそれを強く感じた。英国の調査会社「ザ・フューチャー・ラボラトリー」の創業者クリス・サンダーソン氏は「ハイテク×ハイタッチ」というテーマのもと、人間によるサービスがAIに置き換えられるのではなく、AIをはじめとするハイテクによってゲストの嗜好を分析し、人の手でよりきめ細やかなサービスを行うことができると語った。
「今この会場にいる、ラグジュアリー業界の経営者を対象にした調査で、83%がゲストが求める変化のスピードについていけないと答えている。AIはそのギャップを埋める手助けになる」と語った。
そんな時代性を象徴するのが、フォーブス・トラベルガイドと、英国のスタートアップ、ビルト(Bilt)とのパートナーシップ提携だろう。2019年創業のビルトは、賃貸住宅に付加価値を生み出すサービスとして、部屋を貸すだけでなく、AIで分析して入居者の好みを調査し、周辺のレストラン、ジム、カフェなどの情報を提供するなど、借主にに合った環境を提案する企業。その考えを旅先に広げ、自宅と同様、自分に合った環境が用意されている状態をめざす。
このパートナーシップにより、フォーブス・トラベルガイドは、ホテルを評価するだけでなく、評価したホテルに顧客を送り、さらにAIも活用しながら、パーソナルでシームレスなサービスを提供することが可能になるという。かつてインターネットがコミュニケーションの形、そして社会構造を大きく変えたように、AIをはじめとした新たなツールが、未来の社会、そしてラグジュアリーの形を生み出していく。
ラグジュアリーホスピタリティの最新のあり方を共に考え、社会に提案する「ザ・サミット」。フォーブス・トラベルガイドの星の評価は、来年も2月中旬に発表される。


