──技術が流出する懸念はありませんか。保有特許は31件と、多くはありません。
太附:真似できるエリアは出してしまえ、真似できないところは出さない、ということです。特許で守られた製品は、特許がなくなれば競争力もなくなる。ならば外に出して、利益だけ持ってくればいい。
基本的に、特許を取っているのはその製品だけです。特許を出すと開示することになりますから。あの1品目は、いずれボリュームゾーンの大きなマーケットになると見ていたので、化合物ではなく、その化合物を使って半導体を作るプロセスの特許で押さえました。ほかの製品は細かいノウハウの積み重ねです。途中で角をちょっと削らないと積み木が積み上がらない、というような一手間、二手間がある。開示して真似されても、こちらにはわかりませんから。
──2012年が一度目のブレイクスルーだとすると、次はいつになりますか。
太附:まさに今ですよね。半導体の進化はまだ止まらないと思います。より高性能なものが必要になると、いろいろなところに限界が来て、その時に材料の変化が起こる。しかも半導体は物理的にどんどん小さくなっていますから、量はいらない。限界が来るのはごく一部で、今までのものを全部置き換える必要はないんです。そうすると新しいマーケットは絶対に出てくる。しかもボリュームが小さい。だからバイオなどには行かず、半導体の小さいマーケットをずっと追いかけていきます。
High-kのマイナスはありますが、それを打ち消すだけのプラスがある。今は端境期で、その起点になるのが今年だと思っています。こんな小さい会社ですから、先を読まないと。待っているだけではどうしようもないんです。

インタビューを終えて
取材で一貫していたのは、太附が「すでに決まっている期日と数字」から逆算して動いていることだ。2012年の内製化は製造コストの積み上げ計算から、Metal材料への注力は特許の満了日から導かれている。いずれも結果が出る前に、社内の反対や目先の売上減を引き受けて手を打った。
「足し算の経営」も、品目を増やすだけの話ではない。大きくなる市場は合弁に任せて利益だけを取り込み、自社は競合が1社いるかいないかの小さな市場へ移り続ける。売り上げを引いても利益を足せる構造をつくることが、その中身だ。
一方で、半導体は太附自身が「波がある」と認める市場だ。特許満了後のHigh-k材料の落ち込みを、Metal材料をはじめとする新材料の「足し算」がどの速度で上回るか。「端境期」と位置づける今期からの数年が、二度目のブレイクスルーの成否を決めることになりそうだ。


