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2026.09.29 11:45

創業150年の老舗企業「開化堂」はなぜ、「心地よいN1」を大事にするのか(後編)

中央が開化堂代表取締役社長の八木隆裕、カルチャーイン・カルチャーアウトを提唱する大森充(右)、花井優太(左)

大森:八木さんは海外で「We」という言葉を用いていますよね。そのきっかけはなんなのですか。

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八木:海外で工芸の感覚を伝えなければと思った時に、英語脳で考えて言語化しようとしたのがきっかけでした。言語化に挑んでいる過程で、現代美術作家の杉本博司さんと世界的なメガギャラリーであるPace Galleryで作品を発表する機会をいただきました。 杉本さんがベネチアで「ガラスの茶室」を発表するというので、茶入れ、茶杓、蓋置き、香合、4種類を銀で作ってくれと。「美しいものを作ってくれ」という依頼で、茶筒でもないし当初は、自分自身は美とは何かを理解していなくて、まったくわかりませんでした。茶筒の良し悪しはわかりますが、美しいものはわからないわけです。それでも考えながら「えも言われずに持って帰りたいもの」に行き着いたのですが、制作途中でキュレーターの方から「あなたは何が好きなの?」と聞かれて「僕は車です。レースです」と答えたら、「その瞬間で一番好きな瞬間は何?」と問われ、「コーナーをブレーキ踏んで滑るか滑らないかで回れた瞬間」と返答したら、「そういうものを作って」と言われました。ますますわからないと(笑)。

そして銀製で作って持っていくと「いいけど、君はブリキだよね。ブリキでこの銀を超えてくれ」と。あと2週間しかないのに「えっ、銀でOKじゃなかったっけ」みたいな(笑)。「でもこれは超えたいな」と思って3日間程度悩んでいた時に、祖父が釘入れとしてほったらかしにしていた真っ黒い茶筒をたまたま見つけた。「これは美しいな。綺麗だな」と思ったんです。それを火で炙って板に戻して、その材料を使ってもういっぺん作ったんです。そうしたら、杉本さんが「これはいい。唯一無二」と気に入ってくれた。それが美意識とはなにかというのを植え付けられた瞬間でした。

一方で、これを続けることは、開化堂では難しいと思ったんです。僕個人を昇華させていけば僕自身は伸びていくかもしれないけれど、開化堂の次の代がこれを受け入れて次の代につなげるか、わからないと思ったんです。

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その時に思ったのは、アーティストは「I」のものづくりで、僕たちは「We」のものづくりだということ。僕は、祖父や親父の背中を感じながら、自分の子どもや孫のことを考えて、今何をすべきかと考える「We」。時間軸の中での「We」でもあるし、作り手と使い手の間の「We」でもあると考えた時に、工芸は常に「In Between」だなと。海外では、個人の集合体であるWeではなく、同じ感覚を持った人がWeだという話をしながら伝えています。

ただ、その話をしていく中で、「自分の代」というのは必ずあると思い、小さな「i」はあるかもしれないと。Weの間に小文字のiが入るぐらいはやっているかもしれないと。WとEの間にとけこますことで、次世代に渡せるのではないかと。だから、マイクロスコープで見た時に「小さなi」が見えるくらい(WiE)の感覚ですね。

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フォーブスジャパン編集部=文 井上陽子=写真

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