ただし、これらの打ち上げ事業者にとってファルコン9の退役は、シェアを拡大するための大きなチャンスでもある。機材の量産化と、打ち上げ頻度の拡大に成功すれば、これまでの「パックス・ファルコン9」の世界を完全にリセットし、次世代を担うローンチ・プロバイダーとして確固たる地位を確立することになるだろう。
マスクが語った「退役の理由」
スペースXはこの9月中にもスターシップの14回目の打ち上げを実施しようとしている。過去13回のフライトは、すべて準軌道(地球周回軌道に到達しない弾道軌道)を飛翔するものだったことから、「フライトテスト」と呼ばれてきた。しかし、この14回目の飛行からは「フライトミッション」と位置付けられている。つまり、このミッションでスターシップは初めて地球周回軌道に投入され、スターリンク衛星を地球低軌道にリリースする。これによって収益化を目的としたスターシップの実運用が開始されるわけだ。
イーロン・マスク氏は8月23日、以下のようにとXへポストした。「スターシップの信頼性が高まり、週に数回飛行できるようになれば、スペースXの希少なエンジニアリングと生産リソースをスターシップにシフトし、その打ち上げ頻度を1日に数回まで引き上げる。これは理に適ったことだ。そして、これはファルコンの段階的縮小を意味する」
スターシップへの全面的なシフトによってスペースXは、既存の機材で得られる収益よりもはるかに高いリターンを目指す。その手段となるのが新型スターリンク衛星(V3)の配備と、軌道上AIデータセンターの構築だ。スペースXの決算書を見れば、ファルコン9による商用打上よりも、スターリンクによる収益のほうがはるかに高いことがわかる。また、データセンターの世界的な需要が高まるなか、軌道上AIデータセンターを実現できる企業は、現時点ではスペースXのほかにない。
上場を果たしたスペースXは、この2つの衛星コンステレーションによる収益を基盤として、ステークホルダーに対する責務を果たしながら、最終目的である火星への人類入植に一歩ずつ近づこうとしている。


