リントナー氏の問題提起は「修理できるようにするべきか」という議論を一歩先へ進める。問題はむしろ、その修理コストを誰が、どのような仕組みで負担するのかにある。
その問いにメーカー側からひとつの回答を示しているのが、欧州最大級の総合家電メーカーBSH Hausgeraeteだ。
同社のGlobal Head of BlueMovementであるEーリン・タン氏に、IFA会場で取り組みの現状を聞いた。
BlueMovementはBoschブランドの家電を月額料金で利用できるサービスだ。故障時にはBSHのサービス技術者が訪問して修理し、必要なサービス費用も月額料金に含まれる。2018年にオランダで始まり、2021年にはドイツへ展開。現在は他地域への拡大も進めている。
「私たちは家電メーカーなので、自分たちの製品をとてもよく理解しています。だからこそ自ら修理し、製品をより長く使えるようにできます。大手メーカーには交換部品を用意するだけでなく、修理を手の届く価格にする責任もあると考えています」
BlueMovementが興味深いのは「環境に良いサービス」にとどまらない点だ。
製品を売り切ってしまえば、メーカーにとって次の商機は新製品への買い替えになる。一方、BlueMovementのような月額定額利用のサービスでは、壊れにくく、修理しやすく、長く稼働する製品をつくることがメーカー側の事業合理性にもつながり得る。さらに回収した製品を修理・再生して次のユーザーへ循環させれば、製品寿命を長くできる。
BSHのタン氏も家電メーカーの立場から、経済性が重要であることを強調する。
「地球環境のためだからという理由だけで、企業として利益の出ない事業を続けることはできません。経済的に成立させる必要があります」
タン氏によれば、BSHは再生家電の流通を担う事業者のほか、住宅開発などのプロジェクト事業者や社会福祉団体とも連携しながらサービスの対象を拡大している。
サーキュラーエコノミーを広げるには、環境負荷の低減と企業の利益を対立させない仕組みが欠かせない。タン氏が強調するのは、循環型ビジネスをすべて自前で抱え込むのではなく、異なる専門性を持つ企業や団体との連携によって経済性を成立させることの大事さだ。
「長く使えること」はプレミアム価値になるか
では、欧州のコンシューマーは家電製品の付加価値として「耐久性」や「修理のしやすさ」に魅力を感じて、実際に「少し高値でも、良い製品」を選ぶのだろうか。
ドイツの家電・コンシューマーエレクトロニクスの業界団体であるgfu Consumer & Home Electronics GmbHのManaging Director、カリーヌ・シャルドン氏は、欧州市場に興味深い変化が起きていると指摘する。gfuはドイツのコンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンス分野の業界組織で、主要ブランドを株主に持つ。市場動向の調査や業界内の連携を担うとともに、IFAブランドを所有している。


