インターネットが崩した地方紙の独占、伸びたニューヨーク・タイムズと空白を埋めた有料ニュースレター
バーナルが借りてきたのは、テック業界を分析するニュースレター「Stratechery」を書くベン・トンプソンの新聞業界論だ。地方紙は流通網の上に成り立つ地域独占であり、その中間層をインターネットが崩した。
ニューヨーク・タイムズは2026年第1四半期末に紙・電子版合計1308万件の購読を抱えていた。バーナルの数え方では、2002年の印刷版およそ110万部からの伸びである。その一方で、ロサンゼルス、シカゴ、ダラスの都市圏紙は発行部数の4分の3以上を失った。中間が崩れたあと、下の層を埋めたのはサブスタックの書き手たちである。
ソフトウェア業界も、業種ごとの覇者と出資を受けない小規模ソフトに分かれるのか
バーナルは、ソフトウェアも同じように3つに分かれていくとみている。バイイングセンターごとに、つまり人事なら人事、財務なら財務という単位ごとに、AIネイティブなシステムが1つ。法務や医療といった業種ごとに、支配的なベンダーが1つ。そして、ベンチャーキャピタルから1度も調達しない小さなソフトウェアのロングテールである。
Lovableが約628億円を調達、二極化する市場の小規模な側にも資金が流れ込む
バーナルが描くのは、巨大企業と小規模ソフトウェアの両端に重みが偏るバーベル型(両端が太く中間が細い、あのバーベルだ)の市場だ。この両端のうち小規模ソフトウェアの側を担う企業にはすでに値段がついている。バーナルが名前を挙げた3つのバイブコーディング(自然言語で指示するだけでAIにソフトウェアを作らせる手法)プラットフォームの1つ、Lovable(ラバブル)は8月に4億ドル(約628億円)を調達し、評価額は133億ドル(約2兆880億円)となった。2025年12月の水準の2倍である。
バイブコーディングで生まれる事業はVC向きでないとの警告、土台となる仲介役も未特定
バーナルは脚注で釘を刺している。Lovableなどバイブコーディング基盤上に立ち上がる事業の多くはライフスタイル企業(創業者が食べていける規模で長く続けることを目指す会社。急成長と株式公開を狙うベンチャーとは性格が違う)にとどまり、それをベンチャー規模のものとして扱う創業者や投資家は道を誤る、と。
では、小規模事業の土台となるアグリゲーターやプラットフォーム、つまりD2C(消費者への直接販売)ブームにおけるショッピファイやメタ広告に当たるものは何か。そこは自分にもまだ見えていないとバーナルは書いている。
機械による文書閲覧は人間の約2倍、コンサルタントやSIerが既存企業を守る時代は終わる
連携(インテグレーション)をめぐるバーナルの主張にも新しい裏づけがある。開発者向けドキュメントをホスティングするMintlify(ミントリファイ)では、8月にAIエージェントからのリクエストが2億5700万件に達し、人間によるページ閲覧の1億3100万件を上回った。
同社のエージェントがドキュメントの更新を指示された回数も、2月から8月までで37万回近くにのぼる。機械がマニュアルを読み、連携用のコネクターを書くようになれば、かつて既存ベンダーを守っていたコンサルタントやシステムインテグレーターの生態系は、挑戦者が払わずに済むコストへと変わる。
コード生成ツールClaude Codeで3時間、セールスフォースの簡易な複製版が完成
乗り換える側を実際に試したのが、企業向けAIのニュースレター「Enterprise AI Trends」を書くジョン・ファンだ。Claude Codeを使い、最低限の機能だけのセールスフォースのクローンを3時間で作ったと報告している。


