ビジネスだけでは解決できないことがある
━━社会課題を「ビジネス」で解決することにこだわり、その仕組みも整ってきた中で、今回、非営利活動を行う「ボーダレスファウンデーション(非営利部門)」を設立しましたよね?これってどうしてなんですか?
田口:理由は2つあります。1つ目は、ソーシャルビジネスをどれだけ頑張っても、その前提となる「社会の基盤(ファウンデーション)」が整っていないとビジネス自体が成り立たないからです。例えば、平和構築だったり、相互の信頼関係みたいなことですね。2つ目は、現場に立つ中で「非営利とビジネスのハイブリッドで挑むほうが、より大きな社会的インパクトを生み出せる」と強く実感したからです。
━━具体的に言うと?
田口:例えば、僕らは海外における避難民支援も行っています。そんな中で、戦禍を逃れてきた難民の人々に、いきなり「さあ農業ビジネスをやりましょう」と言っても無理ですよね。まずは命を守り、食事と安心を提供することが必要です。
━━そこは利益を求めるビジネスでは対応できない領域ですね。
田口:そうなんです。まず非営利の活動で支えるべき領域がある。でも、支援だけでずっと暮らしていきたい人はいません。みんな自立して生活したいという根源的な願いを持っています。そこで、安心安全を取り戻した次の段階として、僕らが現地で実践可能な例えば野菜の栽培方法を教えて全量買い取る「営農ビジネス」などへ接続していくんです。非営利でレスキューし、ビジネスで自立を支える。この両方の手を持って社会をデザインしていくことが、本当の課題解決には不可欠だと感じています。
━━非営利とビジネスが両輪となれば、解決の幅が広がる。
田口:その通りです。だからボーダレスでは「ビジネスリーグ」と「非営利リーグ」を、セ・リーグとパ・リーグのように対等な並列のプロフェッショナルとして位置づけています。単にビジネスで儲かったお金を非営利におまけで寄付する、という発想ではありません。
━━非営利部門も独立したプロフェッショナルとして課題解決に向かうんですね。
田口:はい。15年前はソーシャルビジネスという言葉自体が認知されておらず、起業家を支援する環境がありませんでした。一方で、今の非営利(NPO・社会活動)の世界は、まさに15年前のソーシャルビジネスと同じ状態です。情熱を持った若者や学生が「社会課題を直接解決したい」と思っても、NPOには誰も寄付してくれないし、社会的信用も薄く孤立無援で苦しんでしまう。結局、カッコよく見えるスタートアップや大企業に就職していってしまうんです。
━━志を持った若い世代が非営利で活動し続ける環境が不足しているんですね。
田口:そこなんです。だからボーダレスファウンデーションが非営利のプラットフォームとなり、若者が非営利のプロとして自分の思いそのままに活動に集中できる場を作りたいんです。例えば、今ボーダレスファウンデーションの理事は、日本で初めて「国連SDGsヤングリーダーズ」に選出された平和活動家の中村涼香さんが担ってくれています。彼女のように、優秀な若者が非営利のプロとして輝ける選択肢を世の中に提示したいと思っています。


