「日本で暮らす外国人たちが困っていた」から生まれた
━━そこから「外国人への賃貸物件がない問題」につながっていくわけですか?
田口:そうなんですよ。外資系企業から「外国人が住める部屋が全然見つからない」と相談を受けまして。大家さんはみんな「外国人はお断り」と断るんですよ。僕はアメリカに1年留学していろんな人にお世話になったこともあり、「あり得ない!」と憤慨しまして。
行政や大家さんと交渉しながら部屋を提供していたんですが、大企業に勤める外国人は会社保証で借りられても、日本語学校に通うような留学生たちはいつまで経っても部屋が借りられない状況でした。そこで始めたのが、外国人留学生と日本人が一緒に暮らすシェアハウス「ボーダレスハウス」なんです。
━━おお、そういう経緯で、第1号のソーシャルビジネスが生まれたんですね。
田口:そうです。僕の性格上、ついつい困っている人のそばに寄っていっちゃう(笑)。日本に来た外国人が差別を受けて住居がない現実や、留学生が「一番悲しいのは日本人の友達ができないことだ」と話すのを聞いて、外国人でも安心して暮らせる、そして外国人と日本人が半々で暮らし、お互いに友達になれる多文化共生の場をビジネスとして作りました。「ビジネスはお金を稼ぐ手段だと思っていたけれど、事業そのものが社会を直接良くしていくことができるんだ!」と気づいたんです。そこで、でっかい事業を作って寄付するという遠回りをやめて、「事業そのもので社会課題を解決するソーシャルビジネスに全面シフトしよう」と創業2年目に仲間たちに宣言しました。
━━「ソーシャルビジネスだけやる」ボーダレスの誕生ですね。
田口:はい。ボーダレスハウスの成功で手応えを得たので、次に自分がずっと取り組みたかった貧困国・途上国支援の本丸として、ハーブ等を扱うフェアトレード事業「AMOMA(アモマ)」を立ち上げました。これが2つ目の事業です。
ミャンマーの貧困農家はそれまでずっと、仲買人から高利(月利10%など)で借金をして高額な農薬や肥料を買い、健康被害のリスクが高いタバコ栽培などを行っていました。収穫物も仲買人の言い値で安く買い叩かれるため、借金が雪だるま式に増えて貧困から抜け出せない構造になっていたんですね。そこでAMOMAでは農家が抱えていた借金を一時的に立て替え、完全無農薬・低コストで栽培できる「ハーブ栽培」への転換を支援しました。
またAMOMAでは独自の買取価格を設定し、商品の売れ行きや市場相場に関わらず、「生活に必要なコスト」から逆算して安定した収入を保証しています。でも、それだけの仕組みを支えるためには、しっかりした買い手がつねに存在することが必要じゃないですか。そこで目をつけたのが、日本の「産前・産後のママ」です。助産師やハーブの専門家と共同開発した高品質なオーガニックのハーブティーは多くのママから熱烈な支持を受け、全国の多くの産院でも導入されるヒット商品となりました。


