最初のビジネスは「不動産ポータルサイト」
━━僕の感覚だと「まっとう」という言葉が近いかもです。まっとうに社会と人の気持ちに向き合って、まっとうにビジネスの意義を考えてきた。今の社会的には異端に見えるかもだけど……。でもこれ伝わりづらいと思うので、もう少し深掘りさせてください。そもそも、ボーダレスの立ち上がりの事業ってなんだったんですか?
田口:いちばん最初は「不動産物件の周辺写真撮影」です(笑)。
━━ソーシャルビジネスと全然関係なさそう……。
田口:最初は何でもよかったんです。そのころ考えていたのは、1兆円規模のとにかく大きなビジネスを成し遂げること。そして毎年、社会を良くする活動をしているNPOに、売り上げの1%(つまり100億円)を提供する、ということでした。
そのために新卒でビジネスをいちばん学べると感じたミスミに入社し、当初宣言していた「3年で独立します」を1年早めて2年で退職し、起業しました。まずは事業を始めるためのお金を稼ぐ必要があり、不動産屋さんのWebサイトに物件の間取りや部屋写真はあっても周辺環境の写真がないことに気づいて、「僕がデジカメで撮ってきますよ」と営業して回ったんです。そしたら不動産屋さんの社長に「ヒマな社員ならうちにいくらでもいるのに、なんでお前に金払わなきゃいけないんだ」と断られて(笑)。それで「じゃあほかに困っていることはありませんか?」と聞いたんです。
━━ぜんぜんめげないんですね。
田口:まったくめげない。そしたら「大手の不動産会社に客を持っていかれて、自分たちのような地場の不動産屋には客が来ない」とおっしゃるわけです。そこで、引っ越しの一括見積もりサービスのような形で、条件を入れると地場の不動産屋からリアルタイムで部屋の提案が届くポータルサイトを作ったんです。ユーザー1人を紹介するごとに、不動産会社から150円〜1500円ほどいただく仕組みで、集客に困っている地場の不動産屋さんを助けようとしました。
━━ボーダレスの始まりが、不動産ポータルサイトだったとは。
田口:でも、やっていくうちに当時の業界の体質に直面して。たとえば、不動産屋さんが「おとり物件(すでに契約済みの魅力的な物件)」をユーザーに送っちゃうんです。自分としては上京して部屋探しをするような人が騙されないよう、リアルタイムの情報を提供したかったのに。こんな不誠実なことで稼いでもしょうがないなと思って、そのポータルサイトは売却しました。
━━資金が必要とはいえ、なんでもいいわけじゃなかった。
田口:はい。そして自分で宅建(不動産免許)を取って、真面目な不動産コンサルティング会社「お部屋探しコンシェル」を始めました。希望条件を親御さんや大家さんに事前に確認し、内見用の鍵をそろえて駅で待ち合わせして案内するようなサービスです。それが評判を呼んで、外資系企業の新入社員のお部屋探しをまとめて引き受けるようになりました。


