Forbes JAPAN 2026年11月号は、文化の力で世界を駆ける「カルチャープレナー」たちを特集。文化やクリエイティブ領域の活動によって新ビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようと試みる文化起業家を30人選出する企画で、今回で4回目となる。今年注目したのは、優れた作品や商品を生み出すだけでなく、流通や人材育成、地域との関係まで含め、文化が続いていくための基盤をつくろうとする実践だ。アニメやゲーム、工芸、食、地域開発など領域を越えて、文化を次の創造へと循環させる挑戦を紹介する。
元舞妓で、「KIMONO MOM」として日本の家庭料理を世界に発信してきた山田萌。その味をどうビジネスへと変え、海外の日常に根付かせているのか。
米国の大手オーガニックスーパー「Whole Foods Market」など、全米約4000の小売店で販売されている「UMAMI SAUCE」。たまり醤油に昆布や椎茸のうま味を重ねた、めんつゆのように使える万能調味料だ。手がけるのは、着物に割烹着姿で日本の家庭料理を発信し、世界中に318万人のYouTube登録者をもつ「KIMONO MOM」こと山田萌だ。
京都に生まれ、16歳で舞妓の道へ。長女の出産後、「もう一度社会とつながりたい」と2020年からYouTube配信を始めた。「自分が輝ける場所を探したとき、舞妓時代のお客様からの『いちばん身近なローカルにあることこそがグローバルに続く道だ』という言葉を思い出しました。当時の私にとって身近な『赤ちゃんのお世話と家族のご飯』を海外に発信しようと考えたんです」。
意識したのは、日本文化を押し売りしないこと。着物姿ではあるが元舞妓とは名乗らず、紹介するのもすしや懐石ではなくオムライスやカツカレー。等身大の日本の食卓が支持され、約1年半で登録者数は100万人を超えた。「プロダクトを通じて世界の食卓に日本の味を届けたい」と、22年2月に飲食業経験のある夫とともに起業した。
日々1000件近く届くコメントから見えてきたのは、海外のファンが和食づくりに抱える悩みだ。「アルコール入りのみりんは宗教上使えない」「グルテンフリーの醤油がない」との声を受け、ビーガンや無添加に対応した“めんつゆのような万能調味料”の開発に着手。約3年の試行錯誤を経て、24年にUMAMI SAUCEを発売した。



