「職務」ではなく「ワークフロー」を設計する
AIを軸に会社を設計するということは、仕事の捉え方を考え直すことを意味する。つまり、仕事を創出するという発想から、ワークフローを作るという発想への転換だ。職務を設計することが高速道路の車線を増設するようなものだとすれば、ワークフローを設計することは鉄道網を構築するようなものだ。前者は処理能力を段階的に増強するものであり、後者は仕事の流れを根本から変える。
AIネイティブなスタートアップは、X、Y、Zというタスクを実行するために人を採用する、という視点で物事を考えない。反復的なワークフローを支えるシステムを構築することを考える。こうした変化に伴い、創業者が従業員に求めるものも変わる。会社が成長するにつれて、ワークフローの変化に合わせて自らも進化できる、適応力の高い人材が求められるようになる。
さらに、人事関連の質問への回答、新入社員の受け入れ、プロセスの文書化、社内からの問い合わせの対応など、どの組織にも事務的で反復的な業務がある。こうした業務を常に人間が監督する必要はない。創業者が早い段階からこれらのワークフローにAIを組み込んでおけば、会社が成長していく中で、自身や他の経営陣が抱える事務的な雑務を大幅に減らすことができる。
例えば、社内規定を学習させたAIエージェントなら、繰り返し寄せられる給与や福利厚生に関する質問に対応できる。従業員が5人であろうと500人であろうと、このワークフローは安定して機能し、規模を拡大できる。創業者は同じ業務上の問題を繰り返し解決することに時間を費やす代わりに、ビジネスの成果に直結するより重要な意思決定に注力することができる。
全従業員を「複数分野をこなせる実務者」に
SaaS企業(クラウド経由でソフトウェアを提供する企業)の経営者として私は、過去20年間にわたり採用トレンドの変化を目の当たりにしてきた。わずか5年前まで企業はスペシャリストを優先していた。だがAI時代の到来によって劇的な変化が起きた。人々が事業のさまざまな領域にまたがる仕事を担い、ツールやAIプラットフォームを使いこなしながら定型業務の処理が増加している世界では、ゼネラリストが活躍する。
AIネイティブ企業の経営者にとって、ゼネラリストの採用は最優先事項であるべきだ。幅広い関心を持ち、最新のツールを試すことに好奇心があり、それらのツールに適切な指示を与え、出力結果から洞察を引き出すために必要なコミュニケーションスキルを持つ候補者を探したい。しかし同時に、経営者はすべての従業員が成功するために必要なツールを使えるようにすることにも注力すべきだ。従業員が複数分野をこなせる実務者になれるよう、研修や実験するための時間、指導を提供するといい。
私が運用するジョットフォーム(ノーコード型の超高機能オンラインフォーム作成ツール)では、部門横断型のチームで働くことによって、従業員はさまざまな分野でAIツールがどのように活用されているかを学ぶことができる。また、毎週開催しているデモデーでは、成功例・失敗例を問わず、最近の取り組みや実験結果を社内共有するよう推奨している。あるグループのAI戦略が、まったく異なるプロジェクトに取り組む別のチームにインスピレーションを与えることも頻繁にある。
もう1つの効果的な戦略は、従業員を本来の職務とは異なる短期的なAIプロジェクトにローテーション制で参加させることだ。さまざまなワークフローを実際に体験することで、従業員はビジネスをより包括的に捉えることができるようになり、AIを活用して雑務やコラボレーションを加速させる新たな方法に気づくようになるからだ。


