経営者が長期的に競争力を維持するには、時代に合わせて自社の製品やサービスを絶えず見直す必要がある。
携帯電話を例にとると、今日のスマートフォンは2000年代初頭のガラケー(フィーチャーフォン)とは一線を画す高度な機能を備えている。ハードウェア企業がインターネット時代に成功するためには、製品全体を根本から考え直す必要があった。それがノキア製のポケットサイズの携帯電話からiPhone 17への飛躍が起きた理由だ。
私が会社を立ち上げたのは20年前であり、当時、人工知能(AI)はまだ未来の話のように思われていた。今自分のスタートアップを同じように作り直すとしたら、私はどうするだろうか、AI時代にどんなアプローチを取るだろうかとよく想像する。すべての経営者がこの問いを自らに投げかけるべきだと思う。なぜならこの問いは、自身の思考の重要点となるからだ。つまり、「新しいテクノロジーを少しずつ取り入れる」という考え方から、「システムを根本から見直す」への転換だ。
AI時代において最もうまくやっている創業者は、AIを単なる生産性向上の手段として扱ってはいない。人間とAIの協働が、ほぼすべての業務機能に関わることを前提に会社を設計し、あるいは既存の会社を再設計している。言い換えれば、AIネイティブなスタートアップを設計しているのだ。本稿では、創業者が創業初日から実践すべき5つのアプローチを紹介する。
スタートアップ立ち上げの基礎
私の起業初期を一言で表すとすれば「試行錯誤」だろう。創業者は私1人であり、自己資金で事業を立ち上げた。大学時代に小規模なベンチャーを立ち上げた経験はあったものの、他の人を管理した経験はほとんどなかった。今思えば、しばらくの間、本業を続けながらスタートアップを運営していたのも無理はない。会社を立ち上げてから約1年後、ようやくスタッフを雇えるようになると、新規採用者の定着支援(オンボーディング)や、研修の構築から福利厚生の導入に至るまで、会社を経営する上で生じる無数の小さな疑問に対する答えを一つずつ、ゆっくりと見つけていた。
アンソロピックが公開した「AIネイティブなスタートアップ構築のためのガイド」では、スタートアップの立ち上げや製品開発においては、AIによって競争条件がこれまでより平等になったことが指摘されている。また、AIは事業を軌道に乗せるまでのプロセスも加速させる。今では創業者はChatGPTやClaude(クロード)のような大規模言語モデル(LLM)を活用して、私が初めて起業した際に直面したのと同様な疑問に対し、即座に答えを得ることができる。
例えば、市場や競合他社の調査、関係者と情報を共有するための文書の作成・編集、客観的な意見交換などが挙げられる。こうしたツールを最初から活用することで、AIを後から組み込むのではなく、AIを活用した思考やワークフローを会社のDNAに組み込むことができるのだ。



