人材サービスからFA事業へ
その予感が事業として形になっていくのは、事業を始めて約5年後のことだ。
横山は20年にプロッセルを設立。高専人材と、それを求める企業をマッチングさせるサービスを展開して軌道に乗せた。ただ、高専人材に特化したサービスだけではスケールに限界がある。他の切り口はないかと悩んでいたときに、人材サービスの顧客だったFA(ファクトリー・オートメーション)メーカーの経営者から「技術はあるが事業が厳しい」と相談を受けてひらめいた。
「FAの営業はコンペの世界です。分厚い資料を作成してプレゼンで心をつかまないと、案件が取れません。その経営者は高専出身で口下手だったので、最初は私が代わりに営業をやったところ食品メーカーの案件が取れた」
手ごたえを得た横山は、営業の効率化に着手する。これまでは技術者が2週間かけてコンペ資料を作成していたが、AIを活用して1時間で作成可能に。より多くのアプローチができるようになり、複数の案件獲得につながった。まさに技術と営業の両方に精通する横山の強みが活きたのだ。
それだけでは単なる営業代行だが、描いた絵図はもっと大きかった。人材サービスからFA事業へピボットしたのだ。
まず、支援したFAメーカーを24年3月に買収して子会社化し、越後鐵工所と変更した。AIを開発したソフトウェア部門はプロッセルテクノロジーズとして分社。さらに買収先に高専人材を供給するプロッセルとともに、25年11月に新設したプロッセルホールディングスのもとに3社をぶら下げて再編した。
新体制では、FA商社機能を持つホールディングスの下に、製造事業、ソフトウェア開発事業、高専人材事業の各社が連なり、グループでFA事業を展開していく。
FA市場は大きく、たしかにスケールの余地がある。ただ、パイが大きいだけに既存の競合も多い。だからこそ、買収先に組み込むソフトウェアを武器にする。装置メーカーの見積もりは一品一様で、ベテラン技術者の経験に頼る。ここが詰まると引き合いを取りこぼす。そのため同社はこの工程を支援するAIを自社開発し、買収した工場に導入している。買えば売上が伸びる、を仕組みにした。
そこで鍵を握るのは、高専人材だ。
「ソフトウェアが書けて、現場の機械も分かる人材はほとんどいない。高専生は5年間その両方をやってきている。だからソフトとハードを両輪で回せる」
高専とのつながりが採用にも効く。グループ4社の社員と役員は、現在すべて高専出身だ。
「高専人材はソフトウェア産業への就職が多かったですが、生成AIで開発の敷居が下がって今後は厳しい。これからチャンスが広がるのはハードウェア×AIのフィジカルAIの領域です。FAは、そのど真ん中。もともとFAは技術的にロボコンの延長上にある業界で、相性がいい。高専とネットワークを持つ私たちがFA市場に参入すれば、高専人材が活躍できる場をつくれる。同時に私たちにとってもそれが差別化要因になります」
今のところ製造を担うのは越後鐵工所1社のみだ。しかし後継者がいなかったり営業が苦手で赤字に陥っている自動装置メーカーは全国に数多くある。それらをロールアップして町工場群をつくれば、高専人材の巨大な受け皿ができあがる。
「さっそく今年度に1社のM&Aを予定しています。売上は来期に4~5億円を見込んでいますが、ロールアップ戦略で5年後には100億円を目指しています」
樋口や小川とは、今も時折会って話す仲だという。「ライバル意識はありますよ。でも、蹴落とすのではなく協力する関係」。対抗意識を露わにしないのは、いかにもZ世代らしい。回り道して遅れてきた若き起業家の勝負は、これからが本番だ。
よこやま・かずき◎1998年、富山県生まれ、新潟県育ち。長岡工業高等専門学校専攻科在学中に学生団体プロッセルを立ち上げ、卒業後の2020年に法人化。25年11月のホールディングス化に伴い傘下にプロッセル、プロッセルテクノロジーズ、越後鐵工所を収めた。


