経営・戦略

2026.09.24 13:30

KKRが仕掛ける従業員オーナーシップ 全員が富を分かち合う新資本主義

そこで、同社では「力を発揮するうえで妨げになっていると感じること」や「どうなれば一人ひとりやチームがより力を発揮できると思うか」について、従業員から改善アイデアを募集する取り組みを始めた。いざ募集を開始してみると、「仕事を進めるうえで部署間の交流が少ないことが妨げになっているため、社内でネットワーキングできる機会がほしい」など、積極的な提案が数多く寄せられたという。「こういった提案は、従業員が組織や仕事をより良くしようと主体的に考えていることの表れだと受け止めている。このような姿勢がオーナーシップにつながっていくものだと考えている」(渡邊)
 
同社では、月次の売り上げや利益などの経営指標を共有し、従業員が会社の状況をより身近に感じられる環境づくりも進めている。「まだ手探りの段階ではあるが、こうした取り組みを一つひとつ重ねることで、従業員一人ひとりが自分の仕事と会社の未来とのつながりを実感できる状態に近づけていきたい」(渡邊)。
 
ジョブ・クラフティングという言葉がある。自分に与えられた仕事を主体的にとらえ直し、やりがいのあるものへとつくり変えていく取り組みや手法を指す言葉だ。ここにオーナーの視点が重なったとき、「自分ごと」は「自分と会社ごと」へと進化する。
 
KKRによると、オーナーシップ・プログラムを導入した企業の過半数でエンゲージメントスコアの上昇が見られるという。「経営者は従業員に発言の機会を与え、自ら会社の話をする。従業員から上がった懸念には誠実にレスポンスし、目に見えるかたちで職場や組織を変えていく。これを繰り返すことで従業員のエンゲージメントが上がっていく」(平野)。
 
加えて欠かせないのが、オーナーシップをもって仕事に取り組めば結果はついてくるという手応えを感じてもらうことだ。「業績が上がり、エンゲージメントが上がる。だからまた業績が上がる。この好循環をどう生み出していくかが重要だ」と平野は指摘する。
 
プログラムを導入しただけでは何も変わらない。経営者をはじめ、企業のリーダーシップ層の積極的な関与と熱意こそが成功の鍵となる。手間も時間もかかるが、それでこそ経営であり、企業と組織を強くする経営者のあるべき姿なのだ。

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経営陣、株主、従業員が「同じ船に乗る」

人的資本経営において、従業員エンゲージメントは企業価値の向上や人材の活用度合いを示す重要な指標だ。日本では23年から有価証券報告書に人的資本情報の開示が義務付けられたこともあり、エンゲージメント調査を実施する企業が増えている。
 
だが、調査を生かせているかどうかというと疑問が残る。人材開発や組織開発が専門の立教大学経営学部教授の中原淳は、「多くの企業ではベンダーが提供するサーベイを定期的に実施しているだけで、結果が現場にフィードバックされず、成果にもつながっていない」と指摘する。

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文=瀬戸久美子 イラストレーション=ブレア・フレーム

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