「情報の囲い込み」を防ぐ組織デザイン
もっとも、現実の企業で何より根深い問題は、分析手法の不備ではなく、情報の共有・集約そのものの難しさかもしれない。
情報を全社的に統合しようとすると、必ず部門最適との衝突が生じるからだ。そこには「情報はパワー」という組織の現実がある。営業部門、法務部門、調達部門、海外拠点━━それぞれが独自の情報をもっているが、それを共有することで自部門の影響力が削がれると感じれば、情報は自然と囲い込まれていく。
その結果、「誰が主導権を握るのか」「誰が経営層への窓口となるのか」という議論が社内政治化する。情報統合とは、情報システムの問題というよりも、組織設計の問題なのである。
したがって、情報共有の仕組みを設計する際には、「情報を出した部門が損をする構造」をつくらないことが重要になる。トップマネジメントによるメッセージは必要条件だが、それだけでは不十分だ。情報を共有した部門や個人が適正に評価され、影響力を高められる仕組みを併せて設計しなければならない。
ある部門のデスクに、あえて情報共有を図りたい別部門のメンバーを配置するという手法もよく知られる。私はこれを「情報出島」と呼んでいるが、例えば法務部門の担当者が経営企画部門にも席をもつ、あるいは海外事業部門の担当者がリスク管理部門と兼務するといったことだ。ひとりでふたつの役割を担うダブルハット人材を意図的に配置し、部門間をまたいで活動させるのである。こうした人材は組織間の翻訳者となり、部門横断的な情報共有を促進する。
情報化社会において、これからの企業に求められるのは、情報収集能力そのものではない。情報を捨てる能力と解釈する能力、そして情報を組織全体で活用する能力なのである。


