食&酒

2026.09.03 16:15

飲食永遠のテーマ東京 vs 大阪と東京食「コスパ悪」構造、食のカリスマはこう斬る

(写真はイメージ画像)Adobe Stock

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

「土俵や尺度が異なる」顕著な具体例

食堂や居酒屋、B級グルメといった日々の食の平均点を比べるのであれば、大阪をはじめとする地方に軍配が上がる場面が多い。これが、ここまで見てきた構造から導ける一つの傾向です。「値段の割に質が低い店が多い東京」と「安くて庶民的なものが確実に美味しい大阪」という対比は、この意味では的を射ています。

advertisement

一方、高級店の到達点や料理ジャンルの多様さ、トレンドの最先端という観点で見ると、話はまったく別のところに移ります。これは素材そのものの質や量を測る話ではなく、選択肢の幅や専門性の深さ、体験としての奥行きを測る話だからです。ここで見れば、選手層の厚さから東京に相対的な優位性があると言えるでしょう。

つまり、「大阪は安くて旨い」というのは「素材の質と量」という物差しの上での話であり、「東京が優れている」というのは「体験の幅と専門性の深さ」という物差しの上での話なのです。両者は同じ土俵で優劣を競っているのではなく、最初から測っている尺度が異なります。

この構図は、何も東京と大阪という2都市だけの特殊な話ではありません。不動産価格や人件費の高騰、インバウンド需要の増加に伴う価格体系の変化といった要因は、東京に限らず、札幌に金沢、名古屋、京都、大阪、福岡といった他都市の中心部でも同じように生じています。ここまで論じてきた東京・大阪の対比は、「都心部は家賃・人件費が高く、地方は安い」という日本、いや世界の都市に共通して見られる構図の、ひとつの具体例にすぎないのかもしれません。

advertisement
Adobe Stock
Adobe Stock

都市部における「コストパフォーマンス」の意味

その上で、都市部における「コストパフォーマンス」の意味を、あらためて捉え直してみましょう。直接材料費率という一点で見れば、都心部の店舗が地方の店舗に見劣りする場面が多いことは、ここまで確認してきた通りです。しかし都市が提供している価値は、直接材料費率の高さだけに還元されるものではありません。立地の利便性、ジャンルの多様性、洗練された店舗空間、そして世界各地から人材と食材を集約できる都市インフラ。これらすべてを含めた、効率的かつ多層的な都市型体験への対価として、都市部のコストパフォーマンスを捉え直すことも十分に可能なはずです。

都心の強みは直接材料費率の高さではなく、多様な選択肢と高度な専門技術への広範なアクセスにこそある、そう言い換えてもよいでしょう。

東京と大阪、あるいは都心と地方。どちらが優れているかを競い、互いを罵り合うことにあまり意味はありません。それぞれが異なる強みを持つ、という理解に立てば、両者の懐の深さをそのまま楽しみながら、目的や気分に応じて使い分けることができます。日常使いなら地方型の実利を、特別な体験を求めるなら都市型の多様性と専門性を。それを適材適所と呼ぶのでしょう。

食体験とは勝ち負けを競うものではなく、その場でどれだけ満たされた時間を過ごせたかが全てです。一律の尺度で優劣を決めつけるのをやめ、都市と地方が織りなす食のグラデーションそのものを解読し、楽しむ。それこそが、この永遠のテーマに対する賢い付き合い方なのだと思います。

文=タケマシュラン 編集=石井節子

連載

グルメインフルエンサー「タケマシュラン」の食哲学

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事