テクノロジーの進化が激しい現代、事業を成功に導くためには、テクノロジー領域の発展は欠かせない。テクノロジーに関するプロジェクトがさまざまな企業で推進されているなかで、コンサルティングとして企業の課題解決をサポートするEYストラテジー・アンド・コンサルティングのメンバーに、その最先端の仕事内容を聞いた。
コンサルタントと言うと、論理的思考力やデータ分析能力、グローバルな職場環境にひもづく英会話力といった汎用(はんよう)的なスキルに加え、各業界のクライアントを支援するための専門的な知識が求められるというイメージが浮かぶ。EYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)は、こうした専門的知識の高い高度なスキルをもつメンバーが多数在籍する外資系コンサルティングファームのひとつだ。EYは監査法人を起源とする総合系コンサルティングファーム4社を指す「Big 4」の一角として知られ、150以上の国と地域でサービスを展開。専門性の高いプロフェッショナルを約40万人抱えている。
EYSCはファームのなかでコンサルティングおよびトランザクション業務を担っており、そのなかで、IT戦略の策定やIT中期経営計画の作成といった従来のコンサルティングテーマから、AIの活用やDXの推進など幅広い分野において、テクノロジーやデジタルを活用して、課題設定を含む戦略策定からシステム導⼊⽀援まで、クライアントが抱える課題解決の支援を行っているのがテクノロジー部門だ。
そんなEYSCテクノロジー部門では、コンサルタントがどのような専門領域で、どのような視座をもってプロフェッショナルに働いているのか。AIや公共領域における保育DX、サイバーセキュリティといった先進的なプロジェクトについて、実際に業務に当たっているコンサルタントに話を聞いた。
自らの手でAIプロトタイプをつくり、クライアント支援の先まで見据えた価値を提供
国内の大手メーカー向けに生成AIを活用した新規事業の開発支援プロジェクトにおいて、原田玲央(以下、原田)はシニアコンサルタントとして現場をリードしている。原田は自動車メーカーでの研究開発や総合コンサルティングファームを経て、より成長性が高く先鋭的なプロジェクトに挑めると、EYSCにジョインした。
現在は、言語だけでなく映像や音声などを扱うマルチモーダルAIに注目。クライアントが同技術の活用によって思い描くビジョンの言語化や構造化、技術検証を通じた具体化までの道筋を伴走している。
「プロジェクトの特性上、クライアントの方もテクノロジーに関する深い知識や視座の高いビジョンをもっています。それでも、新しい世界観を実現するために必要な言語化・構造化の難易度は高く、私たちが入ることで抽象的な議論から仮説の構築や具体化へと落とし込んでいます。
定例のミーティングでは、クライアントが実現したい世界観やAIで実現できることの解像度を上げるために、私自身やチームメンバーが自らプログラムを書き、最新技術をプロトタイプに落とし込みながら議論を進めています。これによって、より有意義なフィードバックや議論が可能となります」(原田)
AI技術が日進月歩に進化を続けるなか、アジャイルにプロトタイプをつくり、議論や検証のサイクルを回していく原田の姿は、「机上の戦略を語るだけ」という既存のコンサルタントがもつイメージとは一線を画している。原田はクライアントに寄り添いながら、テクノロジーによって実現する新たな世界へと期待を寄せる。
「現在は嗜好(しこう)や価値観が多様化し、世にはコンテンツがあふれています。こうしたなかで、マルチモーダルAIや生成AI技術の進化によって、パーソナライズされたユーザー体験の可能性が広がっていけば、エンドユーザーに対して新たな価値を提供することができるはず。AIテクノロジーをソリューションとして仕組み化することで、クライアントの課題解決にとどまらず、エンドユーザー一人ひとりの価値観に合った幸せに満ちた社会をつくり出していけると信じています」(原田)

ITという専門スキルを使って、関わりたかった保育領域に貢献
学生時代から公共関係に強い関心をもっていたシニアコンサルタントの島田萌夏(以下、島田)は、SIerでのエンジニア職を経て、IT×公共領域での専門性を高めようとEYSCに入社した。EYが掲げるパーパス(存在意義)「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」への共感、そして同社がテクノロジーと公共領域にまたがった専門チームを組成しており、自分の専門性を活用して社会課題の解決につなげられることが大きな決め手となった。若手も挑戦できるEYSCの環境も決め手のひとつだ。
島田は現在、保育業務のDX推進支援プロジェクトに参画している。保育に関する自治体業務や保育施設等の実情といった調査研究での課題・示唆の提示や、そこから在るべき姿を見据え、ロードマップを描きながらテクノロジーに関する知見を生かして、保育事業の本質的な課題解決の道を探っている。
「保育の現場はICT化が進んでおらず、従来の手書き文化から技術活用への抵抗感があるなど、根本的な課題から始まることが多くあります。そのため、新たなシステムの導入ひとつ取っても一筋縄ではいきません。例えばAI導入を検討するにしても、AIを不安視する風潮のなかで、しっかりとその価値を理解してもらう必要がありました。
保育業務のDXには、こうした課題が山積しています。それでも、これまでデジタルを活用していなかった現場職員の方から、『自分の知識とデジタルの情報を組み合わせてうまく使えそう、DXに取り組んで良かった』といった声をいただいたことは、自分にとっての成功体験になっています。今後はより保育×テクノロジー領域の専門性を高めることで、AI導入やシステム整備など、さらに強い姿勢でのIT導入を進めていきたいです」(島田)

ハイレベルなサイバーセキュリティの最前線で働く充実感
マネージャーの宮内孝明(以下、宮内)は、大手金融機関グループ会社向けのセキュリティ対策およびセキュリティレベル向上支援プロジェクトに従事している。もともと外資系IT企業のセキュリティ部門でITエンジニアとして働いていた宮内は、クライアントのセキュリティ課題に対して製品導入といった“点”での対策に限界を感じ、よりハイレベルで総合的なサイバーセキュリティ戦略に携わりたいと、EYSCの門をたたいた。
現在はセキュリティの専門家として、各社のシステム環境を把握し、リスクの洗い出しから対策方針の検討、実行までのプロセス支援を行っている。有事における相談役など、セキュリティ全般の支援を担う宮内は、サイバーセキュリティ対策における国内の大きな課題を現場と経営の両側面から指摘する。
「現場目線では、大手の金融機関グループ会社であってもサイバーセキュリティ関連の人材やリソースは不足しているのが実情です。セキュリティ対策には高い専門性が求められるため、そもそも向き合い方がわからない人も数多くいます。この状況を踏まえ、実運用上のルールや実現性、阻害要因などを整理しなければなりません。理想的な戦略としての『在るべき論』だけで終わらせずに、現実に即したリスクマネジメントが必要なのです。
一方で、サイバーセキュリティ戦略を経営陣に経営課題として認識してもらう難しさがあります。経営陣の理解不足は結果として、予算や人材不足につながります。そのため、インシデントの影響を数字やデータで明確に伝えることで、経営とセキュリティ戦略が直結するよう努めています」(宮内)
実際に宮内が参加したプロジェクトでは、リスク評価のなかでシステムのセキュリティホールを発見し、インシデントの発生を未然に防いだ事例もある。国内の大手金融機関に対するサイバー攻撃が増加するなかで、サイバー空間における国民の情報保護の最前線で働くことにやりがいを感じると、宮内は胸を張る。

クライアントの課題解決をしながらメンバー自身も成長を続ける
EYSCには、先進テクノロジーの研究内容からユースケースまで、ビジネス適用のための知見がグローバルで蓄積されている。これらを余すことなく活用し、EYSCのテクノロジー部門はクライアントの課題解決に向けて奮闘を続けている。そして、その伴走支援の先にあるのは、コンサルタントそれぞれが思い描くより良い社会の姿と自分自身の成長だ。
「私たちはクライアントが直面する課題を解決するだけでなく、これまで気づかなかった課題や可能性を発見し、さらにその先にいるエンドユーザーにも新しい価値を提供できるようなビジネスを目指しています。クライアントの支援を通じて、誰にとってもより良い社会をつくっていきたいです」と原田は抱負を語る。
島田は「保育DXは、子どもの生育環境を良くするための重要な基盤となる部分だと考えています。保育DXを推進することで、現場の業務負荷を軽減し、保育士が子どもと向き合う時間を増やすことなどによって保育の質向上、ひいては子どもたちに関わる環境を少しでも良くすることに貢献できるよう、力を尽くしたい」と目を輝かせる。
「あるセキュリティ機関の調査では、過去3年間に約7割の企業がサイバー攻撃を経験したと報告されています。サイバー攻撃が激化するなかで、サイバーインシデントを1件でも減らすことに貢献したい。そのためにも、経営層にセキュリティリスクを正確に理解してもらうための橋渡しとして、自分たちの役割を果たしていきたい」と宮内も目指すべき姿を描く。
昨今、コンサルティング業界は就活・転職市場において人気が高まっている。クライアントの課題解決には難しい局面もあるが、やりがいを感じながら最先端の仕事に挑むEYSCテクノロジー部門のメンバーの姿勢に、キャリアの選択肢としてコンサルティングファームが選ばれる理由を感じた。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング テクノロジー部門
https://www.ey.com/ja_jp/services/consulting/technology-consulting
はらだ・れお◎AI&データ シニアコンサルタント。国内大手メーカーにて、生成AIを活用した新たな事業の開発を支援。特に、マルチモーダルAIに注目し、新たな価値創出を支援。
しまだ・もえか◎テクノロジー・ストラテジー&トランスフォーメーション シニアコンサルタント。IT×公共領域の専門スキルを生かし、保育業務のDX推進を支援するプロジェクトに従事。
みやうち・たかあき◎サイバーセキュリティ マネージャー。大手金融機関グループ会社向けセキュリティ対策支援およびセキュリティレベルの向上を支援するプロジェクトに従事。