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2025.03.24 11:00

「大阪博」開催! 6つのミュージアムが紡ぐ人間起点の未来

今年4月からの「大阪・関西万博」開催を前に、大阪市の博物館や美術館など6館で「大阪博」が開催され、「大阪の宝」が順次展示されている。本企画を手がけたのは、日本の地方独立行政法人で唯一、博物館群を運営する大阪市博物館機構。大阪歴史博物館 館長であり大阪市博物館機構の万博担当部長も務める大澤研一に、同機構の成り立ちから「大阪の宝」のコンセプトや文化を学ぶ意義までを聞いた。


「大阪・関西万博」の開催が迫るなか、地方独立行政法人大阪市博物館機構は「大阪博」を開催。美術品から歴史資料といった選りすぐりの代表品120点を「大阪の宝」として展示する。

大阪市博物館機構は、大阪市内で多様なミュージアムの運営を担っている。属するのは、大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪市立科学館、大阪歴史博物館、大阪中之島美術館(※1)という計6館。

同機構の設立趣旨は博物館や美術館と同様に、学術研究や資料収集を行い、その成果を広く社会に公開すること。そのため、研究活動に加えて、企業とのコラボレーション企画やマーケティング活動、学校への教育支援や普及教育などを積極的に行っている。

同機構は、それまで管理委託や指定管理者制度による運営を経て、6つの異なる館種の博物館・美術館を運営する地方独立行政法人として2019年4月に設立された(※2)。大澤は「自主的で自由度の高い運営方式を追求した結果、地方独立行政法人による運営に行き着きました」と話す。

指定管理者制度のデメリットを排し、新たな経営体制を模索

公の施設の管理を民間事業者やNPO法人などに委託する「指定管理者制度」は、民間企業が地方図書館を運営するケースなどが登場し、注目を集めている。しかし、「指定管理者制度は中長期の視点に立った経営が難しい」と大澤はそのデメリットを指摘する。契約期間という制約があるからだ。地域の文化や歴史を未来へと継承していく施設として、地方独立行政法人の道が選ばれたのだという。

一般に、地方独立行政法人の大半は大学や研究機関、医療・福祉関係の公営事業。博物館・美術館事業は全国でも大阪市だけで他に類を見ない。美術館や歴史博物館に加えて、科学館も名を連ねており、リベラルアーツからサイエンスまで幅広く分野を横断しているのも特徴的だ。

大阪市博物館機構を設立できた背景には、「各ミュージアムの地理的な近さもある」と大澤は話す。大阪市博物館機構を構成する6つのミュージアムはすべて大阪市内半径5km圏内に位置し、気軽に周遊ができるのだ。また、機構の設立以前から相互に展示協力をしてきた実績もある。複数館がひとつにまとまることによって、総勢70人以上の学芸員が在籍することになり、学芸員同士の知見共有や課題解決につながり、スケールメリットも生まれているという。

例えば、歴史博物館で天文に関する展示を行うとなれば、学芸員は科学館に協力を仰ぎ、歴史的な資料だけでなく、科学技術の知識や当時の状況を再現するところまで広げることで、より深みのある展示を追究している。

加えて、大阪市博物館機構では事務局を設置し、広告宣伝・プロモーション活動のデジタル化、ビッグデータの活用を一気に進めている。民間企業出身者を多く採用し、6館の業務を束ねることで、財務諸表上では見えにくい効率化も進んでいると、大澤は胸を張る。

大澤研一 大阪歴史博物館 館長であり、大阪市博物館機構の万博担当部長も務める
大澤研一 大阪歴史博物館 館長であり、大阪市博物館機構の万博担当部長も務める

大阪や関西地方の人々が育んできた「大阪の宝」

そんな大阪市博物館機構が、大阪の文化を幅広く発信する取り組みとして開催しているのが「大阪博」だ。その一環である「大阪の宝」は、各館での展示はもちろん、「デジタル大阪ミュージアムズ」としてウェブからも閲覧可能だという。合計200万点以上の収蔵品から選出された120点の「大阪の宝」とそのストーリーは、それぞれ「市民の力」「都市の力」「未来への力」「芸術の力」「風土の力」に分類・紹介されている。


日本の玄関口として集められた舶来品をはじめとする「都市の力」、科学技術の豊富な資料といった「未来への力」、東西の美術品や磁器を中心とした「芸術の力」、かつてこの地に根付いた道具や生物標本が並ぶ「風土の力」に加え、大阪の象徴的な面として、大澤が特に強調するのが「市民の力」だ。

「そもそも大阪市博物館機構を構成する博物館・美術館自体が、大阪に暮らす人たちに支えられてきたという歴史があります。例えば、大阪市立美術館は住友グループから敷地を寄贈され、1936年に開館しました。また、市民からの寄贈品が収蔵品の中核を担っていることも多く、大阪市立東洋陶磁美術館の陶磁器コレクションは世界的にも類を見ないほどの充実ぶりです。

建物から収蔵品に至るまで、博物館や美術館は大阪の市民の方に支えられてきました。そのため、『大阪博』を通じてミュージアムを盛り上げることによって、市民の暮らしや生活に還元できるようにしたい。そういった意味でも、“市民の力”に注目していただきたいのです」(大澤)

こうした想いのもと、「大阪博」のコンセプトは「Life・Museum・Osaka」とした。「大阪・関西万博」を機に大阪に集まった人たちに対して、その生活や生きがい"Life"に新しい視点や体験を与えたい、という考えに基づいている。また、「大阪の宝」には大阪だけでなく、関西エリアの宝といっても遜色ない品も含まれていると、大澤は話す。

「関西地方は、それぞれに長い歴史や文化をもつ個性の強い地域が集まっていて、隣接する県でもかなり様相が異なります。大阪はある意味で京都、奈良、兵庫といった各地域の良いところを集めて、上手く結びつくことで成り立ってると感じる面も多い。『大阪博』は狭い意味の“大阪”ではなく、関西における大阪の位置や役割を改めて考える機会にもなるはずです」(同)

答えの見えない世界で、文化や歴史を学ぶ意義

近年では、歴史や美術鑑賞をビジネスと結びつける書籍も数多く出版されている。ビジネスパーソンが美術やリベラルアーツ、科学技術を学ぶ意義について、大澤は次のように話す。

「ビジネスは、合理的な選択を積み重ねていけば必ず成功にたどり着くわけではありません。自分の直感や経験、独自のモノの捉え方によって成功することもあれば、ときには失敗から学ぶこともあるでしょう。特に最近ではAI技術の進化も著しく、時代の変化や未来を想像するのはより難しくなっています。そんな社会でビジネスを展開する上では、“答えのなさ”と直面しなければなりません。そのため、ある意味、答えのない美術や文化の世界に浸るというのは、ビジネスパーソンやエグゼクティブの思考とも親和性があるのだと思います」(同)

歴史や文化を学ぶことは、先行き不透明な未来への道しるべとなってくれるのかもしれない。最後に、大澤は「大阪博」にかける想いを明かす。

「安らぎを求めて博物館や美術館に来る方は多く、もちろんそれも素晴らしいことだと感じています。一方で、ミュージアムは自分が知らなかったモノと出会える場所でもあります。未知のモノに出合ったときには『わからない』というストレスが生まれるかもしれない。でも、そのストレスこそが新しい発見や考え方の転換を生み出す原動力になるはずです。だからこそ、大阪市博物館機構の6つのミュージアムの多様な側面からのアプローチは大いに刺激になるはずです。『大阪博』を知らないモノと出会う機会にしてもらえると嬉しいと思っています。

6つのミュージアムは気軽にめぐれる距離に集まっています。『大阪の宝』で“風土の力”を掲げたように、自分の体でその土地を感じていただくことも大切でしょう。もし博物館や美術館に対して堅苦しいといったイメージがあれば、一度取り払ってもらって、先入観なしに新たな発見を楽しむ気持ちで訪れていただきたいです。

私たちミュージアムが果たすべき仕事とは、展示を通して、これまで人間が積み重ねてきた歴史や文化を示すことでもあります。社会が大きく変わるなかでも、常に問われ続けているのは『人間はどう生きていくか』ということです。ひとつのモノがどのように生まれて、どんな人々が関わってきたのか。これまでの人間の営為を知り、自分にどう反映させるか。『大阪の宝』は、人間を起点に未来を考えるきっかけになってくれるはずです」(大澤)

大阪の宝
https://osakahaku.ocm.osaka/about/


おおさわ・けんいち◎地方独立行政法人大阪市博物館機構 大阪・関西万博関係事業推進室 万博担当部長、大阪歴史博物館 館長。1986年、大阪歴史博物館の前身である大阪市立博物館に歴史担当の学芸員として入職。2001年より大阪歴史博物館の企画広報課長や学芸課長を経て、20年に館長に就任。主な著書は『戦国織豊期大阪の都市史的研究』(思文閣出版、2019)。

※1:大阪中之島美術館はPFIコンセッション方式により運営。
※2:設立当初は大阪中之島美術館を除く。

Promoted by 大阪市博物館機構 / text by Michi Sugawara / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro