固定会費・最低利用回数条件の設定もなく都度利用や片道利用(※)もOK。ワンランク上のビジネスユースを実現するプライベートジェット・サービスを、「空の移動を、新幹線の手軽さで」というコンセプトのもと、誰もがより使いやすい移動手段へとアップデートした「HondaJetシェアサービス」。機体は「空飛ぶCIVIC」をという想いのもと自社開発されたHondaJetを活用。サービス開始から9カ月で見えてきた新たな価値とは。
(※)現在は法人向けにサービスを提供中。今後は個人ユースへも拡大予定。詳細は、HondaJetシェアサービスへお問い合わせください。
欧米のビジネス・エグゼクティブにとって、プライバシーを担保しながら移動時間を短縮、かつ、有効活用できるプライベートジェットをチャーターすることは珍しくない。各空港には専用駐機場が整い、セキュリティゲートも最適化しており、環境は充実している。
一方日本国内では、離着陸可能な空港の数は80カ所。日々増加しているものの、まだ黎明期の状態だ。しかし「HondaJet(ホンダジェット)シェアサービス」が普及すれば、国内ビジネスの状況も大きく変わるだろう。同サービスは、その先の未来、誰もが活用できる空のモビリティの可能性まで見据えているようだ。
移動を諦めるのではなく、誰もが行きたいところに行ける世の中に
「実家が地方にあり、帰省するたびに交通網の縮小を感じていました。祖母は買い物や病院に行きたいときは誰かに頼まなければなりません。私の結婚式にも長時間移動が不安という理由で参加を諦めました」
四輪・二輪・パワープロダクツ事業を経て、モビリティーサービス事業へ。陸海空を経験してきた、本田技研工業 コーポレート戦略本部 コーポレート事業開発統括部 新事業開発部 ソリューションデザインドメイン 主任の藤本幸子(以下、藤本)は、本田技研工業(以下、Honda)のMaaS推進の一環としてのHondaJetプロジェクトに、メンバー外であったがお客様を見つけてきたことがきっかけで参加。その動機の背景には、祖母の姿とHondaJetがもつ可能性を信じる気持ちがあった。
「移動を制限される祖母との会話で、移動を諦めるのではなく、誰もが行きたいところに行けることは人間が心身ともに豊かに生きていくうえで非常に大切なことであり、移動の自由は人間の尊厳に直結すると考えるようになりました。そして、これまでサービスをご利用いただいた様々なお客様を通じてHondaJetは、肉体的・精神的負担から人々を開放し、移動の可能性、もっと言うと、人生の可能性をも広げるものだと思いました」
富裕層やハイクラスのビジネユースとしてはもちろん、体が不自由などの理由で移動が限定される人々にも活用していただきたいサービスだと藤本は力を込める。
体力的な不安から諦めていた夢がHondaJetという選択肢を得て実現したこともあった。それは、“家族と神戸の夜景を見たい”という92歳男性の夢だった。
「お客様が、夢の実現に向け、自らの足でHondaJetに乗るという新たな目標も持たれました。そこから、さぼりがちだったリハビリに自ら励まれるようになられたり、社長をされていたころの表情も取り戻されました。HondaJetをきっかけに人が変わる瞬間に立ち会わせていただき、搭乗に同行された娘様からも最高の親孝行ができたと仰っていただいたときには、胸が熱くなりました。」と藤本は振り返る。
「“HondaJetは単なる移動手段ではない、生きる力をも与える、もっと特別なもの”と今は思っています」

翼上エンジンを実現させたHondaJetを開かれた乗り物に
創業者・本田宗一郎は、幼少期より『空への夢』を抱き、いつか飛行機をつくりたいと願い続けたという。それは「生涯を貫くような熱心な願い、熱烈な希望」だった。目指したのは“独自技術でモビリティ社会の発展に貢献すること”だ。その夢を、多くの社員が引き継ぎ、30年以上の歳月を経て結実したのが、HondaJetである。そして、その機体を活用したサービスがHondaJetシェアサービス(2024年6月サービス開始)なのだ。
Hondaは、1986年より航空機の研究を始め、2015年に念願の、民間ジェット機としては日本企業初の型式証明(民間航空機の安全性・環境適合性基準)を取得し、製造・販売を開始した。(日本での型式証明取得は2018年)
従来も他社のプライベートジェットのチャーター・サービスは存在したが、会費や最低利用回数など、利用前から高額な費用が発生するものや、価格も一貫性がなく都度問い合わせないとわからないサービスも多かったと、藤本は話す。
「本サービスでは会費・最低利用料なし、都度利用が可能。価格も分かりやすく距離制とし、片道利用も可能です。目指したのは、ご利用にあたって“不”となる要素を可能な限り排除した柔軟なサービスです。それは、創業者から想いをつないできたHondaJetをより多くの人に乗っていただける、開かれた乗り物にしたかったからです」
サービス面の使いやすさだけでなく、HondaJetの航空機としての卓越した構造ゆえに実現できたこともある。
今までの総乗務時間は2万200時間を超えるベテラン、飛行機部 ビジネスジェット推進グループ 濱田俊郎(以下、濱田)が魅力を解説する。
「HondaJetの遊覧飛行は、ここから(取材地・大分空港)だと、四国や宮崎の沖合から佐賀関、湯布院などを、通常のジェット機よりも低い高度で見渡すことができます。初日の出フライトなども、HondaJetは小回りが利くので、より絶景を眺めることができます。
革新的なのは、従来の常識を覆した翼上へのエンジンの搭載です。通常のプライベートジェットは胴体後部にエンジンを設置するのですが、そのためには火災時の被害を遮断する防火壁を設置しなくてはなりません。しかしHondaJetは本体ではなく翼上にエンジンを載せたことで、本体のそうした構造部材が減り、その分客室スペースを広く取れます。騒音も軽減されます。唯一無二のエンジン配置・構造で、同じクラスのジェット機と比べても燃費の良さは抜きん出ています」

さらに、入社以来本田航空に在籍し、数多くのパイロット教官を務めてきた、本田航空 飛行機部 ビジネスジェット推進グループ 大分事業所 所長 機長 宇山洋司(以下、宇山)が言葉を添える。
「そうした独自性から、海外の航空機ファンがわざわざ日本に乗りに来るほど、HondaJetのブランド価値は高いのです。搭乗後に免許を取得してぜひ操縦もしてみたいと話される方も少なくありません。私が感じるHondaイズムは、Hondaがつくった飛行機を、本田航空はじめHondaグループで一気通貫のモビリティーサービスを可能にしているところにもあります」

HondaJetシェアサービスが切り拓くビジネスの可能性と反響
では具体的にHondaJetシェアサービスでビジネスはどのように加速するのだろうか。サービス開始後、さまざまな利用者の声が集まっていると藤本は話す。
「日本にもさまざまな交通機関を乗り継いで時間をかけなければたどり着けない地域はたくさんあります。ビジネスにスピードが要求される現代では、移動時間は大きなデメリットであり、リスクにもなるでしょう。
例えば、既存手段では8時間かかる場所に1時間でたどり着けるのなら、自由な時間が7時間も生まれますし、体への負担もまったく異なります。移動中も機内はプライベート空間なので作業に集中できますし、生産性を高めるために空間をアレンジすることもできます。機側に車両横づけも可能なため、一般動線と一切交わることなく最短距離でストレスなく目的地まで移動も可能です。複数拠点をもつ企業オーナー、地方行政機関との連携が必要な方、地方を拠点とする企業経営者など多忙な方々や、プライバシーに配慮したい大切なお客様をお招きされる際、そうした点に魅力・価値を感じて、リピートしていただいていることがわかっています」
そのうえで、ビジネスで活用していた顧客が、プライベートでも利用するようになることも少なくないと彼女は付け加える。
「幼いお子さんを連れた家族旅行でも、泣き声や騒ぎ声で他人に迷惑をかけることはありません。ワンちゃんなどのペットも貨物室ではなく、客室で一緒に移動することもできます。フラワーアーティストや演奏家のようなクリエイターも、移動時間を創造の時間に割り当てられることに魅力を感じていらっしゃいます」

よりサービスを拡大させて、さらに利用しやすく
現在は国内に限定しているHondaJetシェアサービスだが、ゆくゆくはアメリカ大陸を横断できる、開発中の新型小型ビジネスジェット機「HondaJet Echelon(エシュロン)」の導入や、海外展開も視野に入れていると3人は口を揃える。
「まずは、国内のHondaJetシェアサービスで一度、”心動く”体験をしていただきたいと思っています。本田宗一郎も『人生は見たり聞いたり試したり。3つの知恵でまとまっていて、試すことがいちばん大切。想像以上のことは試した人にしかわからない』といった言葉を残しています。各人が試してみてこそわかる価値、広がる世界がきっとこのサービスにはあると思います。本田宗一郎の想いを引き継ぎ、試すためのハードルを取り除いたHondaJetシェアサービスで、その先に広がる世界を一人でも多くの方に発見して頂きたいです。」(藤本)
HondaJetシェアサービス
https://www.honda.co.jp/HondaJetsharing/
ふじもと・さちこ◎2007年Hondaに新卒入社。購買部門、海外営業、toB向け国内営業や商品企画、MaaS領域を担当。HondaJetシェアサービスの事業開発を担当。
うやま・ようじ◎20年以上にわたりプロペラ機の教官として航空教育に従事。現在はHondaJet運航と整備を統括している。
はまだ・としろう◎23年2月、本田航空入社。1980年から23年まで43年間にわたり民間機の航空機関士、副操縦士、機長として乗務。総乗務時間は20200時間に及ぶ。