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2024.11.29 16:00

歴史を汲み取ったうえで新しい産業システムを生み出す──secca・上町達也が考える革新の作法とは

「大人がオンやオフで本当に着たい服を楽しみながらショッピングできる、大人のためのストア」をコンセプトにしたスペシャリティストア・エストネーション。中でも美術館をストアコンセプトにした大阪店は、広い空間にやわらかな光が差し込む、心地の良い空間になっている。

2024年10月29日には、この場所でForbes JAPANとのコラボレーションによるイベント「Forbes JAPAN CULTURE-PRENEURS 30×ESTNATION 伝統と革新の交差点」を開催された。

トークセッションでは、これからの活躍が期待される文化起業家を表彰するアワード「Forbes JAPAN CULTURE-PRENEURS 30」を過去に受賞した2人が登壇。エストネーションのセットアップを身に纏い、「伝統と革新の交差点」をテーマにユニークな対話が交わされた。

今回は、登壇者の1人である上町達也にインタビューを実施。上町は、2013年にクリエイター集団「secca(雪花)」を設立し、伝統技法から最新テクノロジーまで、あらゆる技法や素材を掛け合わせて「工芸」を「巧藝」と再定義した独自のものづくりを展開している。伝統を受け継ぎ、現代へとアップデートすることの価値や、ファッションへのこだわりについても話を訊いた。


金沢美術工芸大学を卒業後、大手カメラメーカーのインハウスデザイナーとしてキャリアをスタートさせた上町。新製品の企画に邁進していたが、何年もかけて製作したものが1年後にはワゴンセールに積まれてしまう現実に直面し、モノの消費サイクルの異常な速さと、それを加速させる仕組みに疑問を抱くようになる。一過性ではなく、持続的な価値をもたらすものづくりを──。そう決意して食と工芸の街である金沢を拠点に「secca」を立ち上げてから、11年の歳月が経過した。

seccaは自社に工房を持ち、ホテルやレストランのテーブルウェアやエントランスオブジェなどを、一点物から多くても100点までで製作している。それとは別に、同じ課題感を持つパートナー企業との協業によって、持続可能性を重視した量産品のデザインや製作にも挑戦。効率的にモノを生み出すことをテクノロジーが担ってくれる時代だからこそ、より属人的で、土着的なベースから導き出されるアウトプットを大事にしている。

「気取らずに言えば、愛やロマンがあるもの、心を満たすようなものこそが、次の時代に求められる価値だと思っています。それを形づくるためには、誰かになろうとせず、日本で生まれ育った自分たちのアイデンティティやルーツを見つめ直し、その軌跡の延長線上に素直に新たな点を打つことが僕たちらしいものづくりになるという結論に至り、自然なカタチで結果的に工芸へと行き着きました。先人たちが築き上げてきた伝統や歴史を汲み取ったうえで、僕たちにしかできない新しい提案をすることがテーマです」

取り組みのひとつが、石川樹脂工業との協業によるテーブルウェアブランド「ARAS(エイラス)」だ。「プラスチック」という素材の価値を再定義し、割れないからこそ長く使うことができる点や回収・再資源化して再び製品をつくることができる点に着目。100%リサイクルできる新素材を使用し、サステナブルな新しい価値を共に打ち出した。

「石川樹脂工業が位置する加賀市は、労働人口が年々減ってきており、どうしても斜陽産業が多い。単純に商品を売る以上に、それによって今後のものづくりのシステムを持続可能なものにし、地域課題の解決にもつなげたいという思いがありました。石川樹脂は、その原点に『山中漆器』というその地域の伝統工芸があります。そうした歴史の先に新しい産業を見出すことができたのは大きな自信になりました」

伝統工芸から学ぶべきものは「チャレンジ精神」

伝統を尊重しながら、常に新しい風を取り入れて進化し続ける。それはファッションにも共通するフィロソフィーだ。上町が実践する「伝統と革新」の方法論は自由で、伝統技法から最新テクノロジーまであらゆる技法や素材を掛け合わせて行われる。上町は「伝統工芸品」の定義にとらわれない考えを語る。

「伝統工芸品は、基本的に100年以上継続して使われている技術や素材を使ったものと定義されています。ある程度の改良改善は認められているものの、それに該当しないものは伝統的工芸品とは認められない。ただよく考えてみると、今の時代に伝統工芸と呼ばれるものも、100年以上前に誰かが今までにないチャレンジをした結果として生まれたもの。その当時は批判されたかもしれないけど、それを次世代にもつなげたいという人が現れてここまで続いてきた結果なんです。

だから、伝統工芸の中で私たちが一番リスペクトすべきは、最初に始めた人のチャレンジ精神だと思います。もちろん技術も大事ですが、それ以上に、自分たちにしかできない表現を追い求める姿勢を重視したい。なので、伝統工芸が伝統工芸であり続けるためには、古きを大事に磨き続ける者と並び、新しい技術や素材を積極的に取り入れ、新たな挑戦をする者が連続的に生まれ続けることだと考えています。私たちは先人と同じように、挑戦する側でいたいという想いがあります」

リラックスしながらも鼓舞してくれるセットアップ

ブルゾン¥44,000〈エストネーション〉、パンツ¥28,600〈エストネーション〉、靴¥26,400〈Achilles Sorbo〉 インナー 本人私物

ブルゾン¥44,000〈エストネーション〉、パンツ¥28,600〈エストネーション〉、靴¥26,400〈Achilles Sorbo〉 インナー 本人私物

今回のトークセッションでは、エストネーションのセットアップを着用した上町。エストネーションでは、日常と非日常、オンとオフなどの多様なシーンでセットアップを楽しんでほしいという思いから「Designers(デザイナーズ)」「Dress(ドレス)」「Contemporary(コンテンポラリー)」「Casual(カジュアル)」の4つのカテゴリーを展開している。その中で上町が選んだのは「Casual」の一着だ。

「『フォーマルなシーンではカチッとしたジャケットを着用するべき』とか、伝統的な考え方があると思うんですけど、その本質にあるものはなんなのだろうとよく考えます。このセットアップは上質な生地と仕立てでありながらもジャージを着ているような軽やかさがあります。それが、リラックスした格好でフォーマルシーンに出てもいいじゃないかという新しい提案に感じられて、僕は惹かれました。生地感や縫製の方法を変えると、こうした新しいセットアップが生まれるというのは新鮮でした」

上町にとってのファッションは、特別な場面でスイッチを入れてくれる存在でもあるという。新しいパートナー企業との大事な対話の場面や、イベントに登壇してスピーチをする場面などでは、自分の身なりや髪型を整えることで“自分らしさ”や“胸を張れる精神性”を引き出している。

「僕の中で服は、鎧のようなもの。ここぞというときには、後押ししてくれる存在であってほしいんです。このセットアップは、リラックスしながらも鼓舞されているような着心地があって、すごく気に入っています」

日本から世界へ。そして文化や価値観を超えた共感へ


上町は昨年、「Forbes JAPAN CULTURE-PRENEURS 30」を受賞し、文化起業家として日本の伝統を世界に発信する姿も印象的だ。また、地方から都市へ、日本から世界へと見据える上町の展望は、「東の国」という名前を冠し、東京から世界基準のファッションを発信していくエストネーションにも共通するところがあるだろう。ものづくりにおいて、日本ならではの価値観を大事にする意味とはどのようなものなのか。

「世界中の人が同じ情報にフラットにアクセスできる時代においては『どこで、誰が、何のために、何をつくっているのか』が問われると思います。だからこそ、自分が置かれているアイデンティティやアドレスを意識したい。今の時代にものづくりをすることは、僕にとって結構心地いいんですよね。自分たちならではの歴史や背景を重んじて新しい表現を届けることができれば、それは世界とつながる特別な機会になると思います」

そんな上町が志すのは、海外のつくり手とものづくりをすることだという。

「今後も挑戦していきたいことのひとつは、やはり日本にある素晴らしい技術や思想を、アップデートしたうえで次の時代に継承していくこと。石川樹脂工業との取り組みがよい成功事例になったと思います。

これと矛盾するようですが、もうひとつ取り組みたいのが、海外の人との協業です。世界では今も戦争が起きている国があるからこそ、どんなに遠く離れた場所に住んでいる人でも、想いを共有しながらともにクリエイションすることができれば、その結果生み出されたものは希望に満ちたものになると思います。文化や価値観の差を超えた共感によるコラボレーションを拡げ、クリエイティブは世界とつながる力があることを示していきたいです」

エストネーション
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うえまち・たつや◎1983年、岐阜県可児市生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、ニコンで新製品企画とデザインなどを担当。2013年secca inc.を設立。主に各作品のコンセプトメイキングを担当。金沢美術工芸大学非常勤講師。『CULTURE-PRENEURS AWARD 2023』受賞。

Promoted by ESTNATION / text by Kohei Hara / photographs by Makoto Koike / edited by Mao Takeda / hair & make by Aoi Ueda