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2024.11.26 16:00

素材開発からサーキュラーエコノミーを実現する。「トランスウッド」に宿る技術と感性

地球環境の保護と経済活動の両立を目指す「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」のため、新たな素材の創出を目指す──。家業である信州の老舗企業の経営を経て、新たな高付加価値産業の創出に挑戦するために独立した春日秀之は今、日本の錚々たるアントレプレナーの想いを受け継ぎながら、次世代を育てる活動にも邁進している。


「WABI contemporary」な環境調和型素材を開発

2022年、春日秀之が代表取締役社長を務めるhide kasuga 1896は「TRANSWOOD®(トランスウッド)」という素材を開発した。

トランスウッドは、「廃食用油などから生み出されるバイオマス樹脂※50%」と「間伐材の木粉50%」を複合化したエコフレンドリーな環境調和型素材だ。捨てられる運命にあったものを再利用して、高付加価値な素材へと再生させる。使用後の製品を回収し、粉砕することで、新たな製品へのリサイクルも可能だという。

「硬質な樹脂ながら、トランスウッドの表面には木材を思わせる独特な模様が入っています。しかも、この模様は規格化された工業製品のように均一なものではありません。あたかも生命をもった有機体のようであり、トランスウッドを利用して生み出される製品の一つひとつには個性が宿ります」

その個性から醸し出される味わいたるや、凛としているようであり、温もりを湛えているようであり、美の概念を凝縮したアートピースのようでもある。見る人がそれぞれの想いをもって見惚れたり、癒されたりしながら、トランスウッドを利用した製品との関係性を自由に構築することができるのだ。
レトワ コレクション(les trois collection)。木由来素材と廃食用油からつくられるバイオマス樹脂※を配合した「TRANSWOOD®」を使用した環境に優しいテーブルウェアのシリーズ。1つ1つ表情の異なる美しい木質の模様が料理を引き立てる。 ※マスバランス方式による

レトワ コレクション(les trois collection)。木由来素材と廃食用油からつくられるバイオマス樹脂※を配合した「TRANSWOOD®」を使用した環境に優しいテーブルウェアのシリーズ。1つ1つ表情の異なる美しい木質の模様が料理を引き立てる。※マスバランス方式による

トランスウッドでつくられた環境調和型プロダクトと対峙した際、その景色に枯山水の庭園のような静寂さと躍動感を観る人もいるだろう。

この奥行きのある景色、この世界観を何と心得るべきだろうか。春日はその宿された美意識を「WABI contemporary」と表現する。

「私たちは環境調和型素材を開発し、その素材を利用してさまざまなプロダクトを展開しています。そうした営みのベースには『確かな美意識』が宿っていなければならないと、私は考えています。

銀閣寺のあの美しさに代表されるように、日本人のなかには過去何代にもわたって脈々と息づき、美を構築してきた精神性があります。そのひとつが侘(わび)です。私は、この侘を昇華させた新たな美意識を創出したいと考えています。単に質素を旨とするだけではなくて、繊細で美しく、理知的で、ときにグローバルな現代の侘。それが『WABI con-temporary』なのです」

質素や簡素を是とし、それこそが道理にかなっているととらえ、そこに美を見出してきたのが日本人の感性・精神性である。今、世界で「資源を無理なく・無駄なく使おう」という気運が高まっているなか、そのマインドをリードしていけるのが『WABI contempo-rary』の美意識ではないだろうか。

技術と感性の両極で使う人を魅了する

自分が見据えるべき思想や哲学、美意識をしっかりと見据えること。そして、その思想や哲学、美意識をベースにして行動し、素材やプロダクトにまで落とし込み、あらゆるステークホルダーと深いコミュニケーションを図ること。今を生きるアントレプレナーには、これらのことが強く求められている。

春日にはそうしたアントレプレナーとしての素養のすべてが備わっていた。トランスウッドを利用したテーブルウエアのシリーズは、まさにその成果物と言えるだろう。

「『WABI contemporary』を具現化したものが、黒いトランスウッドで製作した食器たちになります。軽くて、割れにくくて、地球に優しくて、美しい。木材を思わせる模様が入った黒が、あらゆる料理を引き立てます。卓上の『WABI contemporary』です。世界的建築家の隈研吾さんにデザインしていただきました」

このテーブルウエアのシリーズは、日本を代表する複数のラグジュアリーホテルのレストランで使われ、世界中から集まった客に『WABI contemporary』の美意識を伝播している。

なぜ、ラグジュアリーホテルのレストランで使われるに至ったのか。「脱プラスチック」「廃棄物の削減」「環境・社会に配慮した製品の使用」といった徳目があるのは当然だが、やはり見逃せないのは感性の部分ではないだろうか。トランスウッドを利用したテーブルウエアの美しさが、料理人たちを魅了したのだ。厨房のプロフェッショナルの創作意欲を掻き立てたのである。

料理人とは技術の人であるが、それと同時に感性の人でもある。この両極を備えていない限り、舌も目も肥えた人々を愉しませることはできないだろう。

「優れた料理人は生涯にわたって技術と感性を磨き続けることにより、自分の職分(職務上の務め・役目)を果たしていくのだと思います。私は、アントレプレナーも同じではないかと考えています。技術と感性の両極をもち、それぞれを磨き続け、巧みに組み合わせることによってのみ、私の職分は果たされるのです」

この春日の言葉には説得力がある。確かに春日は『WABI contemporary』という美意識を大切にした感性・精神性の人であるが、そもそも技術の血筋の人である。

「私の実家は、長野で1896年創業の『麻問屋春日商店』をルーツにした工業資材メーカーの『NiKKi Fron(ニッキフロン)』です。初代の春日栄太郎から数えて、私は4代目になります。物心がついたころから、工場が私の好奇心を満たしてくれました。色や形がさまざまな素材が多くの工程を経て最終製品になっていく様子を見ながら、自分も素材の研究をしたいと思うようになり、化学系に進学しています。高校や大学時代には長期休暇を利用して実家の工場で働いていました。教科書には載っていない繊維や樹脂を実際に見て触って体感しながら、熟練のエンジニアからさまざまなことを教わり、繊維強化プラスチックの製造技術などを習得していきました。大学院時代には、資源や環境を自身の大きな研究テーマに位置づけていましたね」

そもそもが学究肌であり、エンジニア魂を有していて、美意識を大切にしている。この人間的な深みこそが、現在の春日の仕事を深いものにしているのだ。

日本のアントレプレナーの大先輩が春日の窮地を救った

なぜ、春日は家業を継ぐのではなく、そこからのスピンアウトを目論み、自身で会社を興したのか——。

「私は家業のNiKKi Fronの経営を実弟に譲り、素材からコンシューマープロダクト(最終製品)までを一貫して生み出していく企画開発型企業として、日本国内にものづくりの拠点となる工場を残すため、2012年の春に『hide kasuga 1896』を東京に創業しました。NiKKi Fronでは一般の人々が目に触れ、手に取ることができる最終製品はつくってきませんでした。私は生活者のマーケットに直結したブランドを生み出し、自分の美意識をマーケットに直に伝えたかったのです」

技術はもちろんのこと、感性で勝負できるコンシューマープロダクトで世界に打って出たかった。これから先、技術と感性をしっかりと融合させた製品を生み出していかなければ、日本でものづくりを続けることができなくなる。

「これ以上、技術大国・工業大国としての日本のポジショニングが下がらないうちに私は家業から受け継いだ有形価値(技術)に日本ならではの無形価値(歴史や文化)を融合して、世界のなかでも独自性の高いジャパンブランドを生み出したかったのです」

春日は一度家業に戻る以前、グローバルを舞台に活躍している大手複合材料メーカーで働いていた。00年からの1年間はフランスの文化と習慣を学ぶために南仏の大学への社費留学を経験し、04年までパリの研究所で欧州の高級スポーツカー向けのコンポジット開発に携わってきた。 

「日本に戻り、NiKKi Fronに入社し、重厚長大の家業のなかで、コンシューマー事業を両立してやることは、高いハードルがあり理解が深まることも難しい状況下、私は自己資本のみで『hide kasuga 1896』を立ち上げなければなりませんでした」

春日の構想は、確かに茨の道ではあった。日本においては先駆者がいない道でもあった。素材から生み出していく開発型企業にとって、資本の不足は命取りになる。

「大変に困っているときに、私に手を差し伸べてくれたのは、かつて出会っていた日本のアントレプレナーたちでした。パリに駐在時、日本の商工会議所が主催する視察団として日本の錚々たる企業の経営者たちが訪れてきたことがありました。その際、私は自分の生い立ちから現在の仕事、そして将来の夢に至るまで、さまざまな想いを彼らに明かしていました。その大先輩方が再び集まり、私の窮地を救ってくれたのです」

その大先輩方も春日の技術と感性に惚れ込んだのであろう。自身のこれまでの経験から「彼なら世界で勝負できる」と評価したに違いない。日本の錚々たるアントレプレナー複数人からの個人的な出資が、hide kasuga 1896のブレイクスルーを支えた。

技術と感性の高配合に加えて、強い意志のもと困難に挑戦する気概が春日にはあった。こうした人間性を備えているからこそ、人に好かれ、運に恵まれ、アントレプレナーとしてブレイクスルーを果たせたのだろう。

なぜアントレプレナーとして生きるのか——

春日は今、アントレプレナーとしての自身の疾駆の傍らで地元の信州大学で教鞭をとっている。学生たちに向け、「そもそもサーキュラーエコノミーとは何か」という初歩的概念から「何をどのようにすれば、サーキュラーエコノミーがかなうのか」という実践の具体的手段まで、自身の経験を基に教えている。

そのwebでの授業で、これからの循環型経済をつくっていくであろう真剣な眼差しの数々と対峙した刹那、春日はアントレプレナーとしてこれまで生きてきたことの意義を胸に刻みつけている。

こうして、アントレプレナーの想いは受け継がれ、その先でまた増殖し、拡張していく。想いは強く生き続ける。

何のために、アントレプレナーでいるのか。
やがて死ぬのに、なぜアントレプレナーとして生きるのか——。
その答えは、明白である。


かすが・ひでゆき◎hide kasuga group 代表。博士(工学)。長野市出身。99年:大手複合材メーカーに入社、社命によりエクス=マルセイユ大学に留学(2000年~2001 年) 、パリ研究所駐在 (01年~04 年) 。06年:家業の日本機材(現・NiKKi Fron)に入社。09から12年まで代表取締役社長、12年に家業から独立。マテリアルシンクタンク「株式会社hide kasuga 1896」を創業。「hide k 1896®(プロダクト)」や「TRANSWOOD®(素材)」などの環境調和型ブランドを旗艦店(表参道)を中心に国内外に市場展開。サーキュラーエコノミーコンソーシアム「Green Composite hills by hide k 1896®」主宰。23年、信州大学特任教授就任。

hide kasuga 1896
本社/東京都港区元赤坂1-7-17 テラサワビル
URL/https://www.hk1896.com
従業員/20人(2024年11月1日時点)

hide k 1896
東京都渋谷区神宮前5丁目6-5 PATH表参道A棟1F


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