レオス・キャピタルワークス代表であり、同ファンドのファンドマネージャーでもある藤野英人が、自動車の完全自動運転の開発に取り組むTuring(チューリング)代表の山本一成と語り合った。
藤野英人(以下、藤野):山本さんといえば将棋AI「Ponanza(ポナンザ)」を開発したことですでに一度成功した人物。2017年に当時名人位にあった佐藤天彦九段を下したことは、大きな話題にもなりました。ポナンザを開発したAI企業のHEROZに僕も個人的に資金提供していましたが、なかでも山本さんには「この人の才能に賭けたい」と惹かれるところがあったんです。
そんな山本さんが、今度は、完全自動運転を実現しようとしている。本当にテスラを超える企業になるかもしれないと期待しているんです。
山本一成(以下、山本):「We Overtake Tesla(テスラ社を追い越す)」をミッションにしているのは、自分から見ても大それたことだなと思います。
実用化レベルまで開発できると信じています。が、実際はわかりません。それでもチャレンジするのは、達成できるかわからないことにこそ、価値があるからです。日本では、少ない可能性に賭けて、あえて難しいことにチャレンジする人が減っている気がします。スタートアップ業界を盛り上げるためにも、自分がやらなきゃいけないと思ったんです。
藤野:山本さんのチャレンジの先に、完全自動運転が当たり前になる世界が来るだろうと期待できます。そこで思うのは、自動車の「自動化」ではなくて、「自在化」が鍵になるということです。山本さんは、運転したくない、できない人の代わりを自動車にさせる単なる「自動化」ではなく、好きな場所に移動したい人を、「そこに行きたい」という欲求、心のままに運ぶ「自在化」にチャレンジしているのだなと。
そのことに気づいたのは、「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム」で、東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦先生の講義を受けたときでした。稲見先生の研究は、人間の知覚や身体能力を、技術的に拡張すること。その事例に出てきたチューリングの話から、「完全自動運転が実現すれば、誰でも身体的制約を超えることができ、好きな場所に行きやすくなるんだ」と気づいたんです。
山本:そうですね。「自在に移動したい」というのは、人間の基本的な欲求です。しかし、お年寄りの方やハンディキャップを抱える方など移動の自由がない人もいて、すべての人が自動車で気軽に移動できるわけではありません。そういう人でも気軽に移動できるような完全自動運転を実現するのが、あるべき世界の形だと考えています。
完全自動運転の「安心」をどのように醸成するか
藤野:実用化が達成できたとして、次は社会に普及させる必要があります。そのためには、完全自動運転の安全性を担保するレギュレーションが必要です。アメリカのベンチャー企業がすごいのは、ロビイングが盛んで、政治家や官僚を説得して法改正に導くなど、その社会実装力が高いこと。規制が厳しい状況でも、効果的なロビイング活動によってビジネスの展開を有利に運びます。一方、日本のベンチャー企業には、ロビイングのプロフェッショナルが不足していると感じています。
山本:我々もロビイングできるようなネットワークを持つ人材を採用する必要を感じています。ですが、アメリカなどで社会実装されたら、日本も自然とそれに準じた規制になるのではないかと楽観している部分もあります。というのも、自動車の構造は各国でバラバラではなく、輸出入できるように国際基準をもとに、ある程度統一されているからです。そのような状況で日本だけ規制を厳しくしたり、独自のルールを設けては自動車産業が立ち行かなくなります。なので、どこかの国で的確な法規制が整えられたら、それが国際基準になるのかもしれません。
一方、テクノロジー集団である我々は、人間が運転するよりも10倍、あるいは100倍を超えるような安全性を技術面で実現することで、「自動運転車はチューリングにしか任せられない」と思わせるのが目指すべき方向だと思います。
藤野:ただ、そうやってメーカーがいくら安全性を訴えても、「でも本当にAIに運転を任せて大丈夫なの?」というユーザーは少なくありませんよね。「安全」が保障できても、人に「安心」を与えるのは難しい。これは、新しいテクノロジーが世の中に出現した時に常に起こる難題ですが。
山本:それも結局は、テクノロジーで圧倒することで乗り越えられると考えています。我々が完全自動運転の開発で使っているAIモデルは、大量のテキストデータを学習し、質問応答や文章生成などを行うLLM(大規模言語モデル)も含まれます。
自分の意思に相手が反応しているというのは、人間にとって安心感をもたらします。ユーザーが指示を出す、AIが状況を判断したうえで、次にどんな運転をするのかを人間に回答する、車両が自動で動き始めるーー。「なぜ、そのような運転を行う判断をしたのか」をAIが説明してくれると納得感があって、結構安心できます。技術による圧倒的な安全を世の中に提示して、利用者への安心感を高めていきたいです。
ディープテック企業にクロスオーバー投資ができること
藤野:チューリングは自動運転システムの開発だけでなく、車体の製造にも挑戦されたことがありますよね。今後は自動車メーカーを目指すのですか? もしくはシステムをメーカーに提供する企業を目指すのでしょうか。山本:人も時間もお金も有限であるスタートアップという環境で、2030年までに完全自動運転を実現することを考えると、ソフトウェア部分の開発をさらに加速する必要があります。チューリングは現在、2025年内に人間の介入なしで都内を30分間走行できる自動運転システムを開発する「Tokyo30」プロジェクトを掲げていることもあり、メーカーさんとの協力体制構築も視野に自動運転AI開発にリソースを集中させているところです。
藤野:ひふみクロスオーバーproには、まさにチューリングのような未来を創造する有望な会社を組み入れることが必要だと思っています。この投資信託には、さらに伸びていくために勢いよく資金を投入しなければならない実力のある未上場企業を支援する意味を強く込めています。
特に多額の研究開発費が必要なディープテックは、継続的に資金を調達しながら、将来の価値を生み出していく必要がありますよね。スタートアップが抱える大きな問題の一つに、いわゆる上場後に資金不足になってしまう「死の谷」問題がある。これを解決したい。IPOがゴールのベンチャーキャピタルとは違い、ひふみクロスオーバーproは上場後も持ち続けることができ、追加投資も可能な仕組みです。社会を元気にするスタートアップを、長くブーストできるようなファンドなんです。
山本:未上場の段階から投資して、上場後も支援する。まさに“クロスオーバー投資”なんですね。
藤野:そうです。もちろんお客様のために投資のリターンを得ることが大切なことは言うまでもありません。ただ、夢とワクワク感があって、事業を成功させたら世界に強いインパクトを与えるような企業に投資をしたいのです。まさに、“テスラ超え”を目指すチューリングのような成長性のある企業を。未来を切り開くお手伝いを、ひふみクロスオーバーproで実現したいと考えています。
ふじの・ひでと◎1966年、富山県生まれ。投資家、ひふみシリーズ最高投資責任者。レオス・キャピタルワークス代表取締役社長CIO。1990年早稲田大学法学部卒業、野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)入社。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント等を経て03年に独立、レオス・キャピタルワークスを創業。
やまもと・いっせい◎1985年生まれ。愛知県出身。チューリングCEO。東京大学での留年をきっかけにプログラミングを勉強し始める。その後10年間コンピュータ将棋プログラムPonanzaを開発。東京大学大学院卒業後、HEROZ株式会社に入社、その後リードエンジニアとして上場まで助力した。
投資信託にかかるリスクについて
価格変動リスク:国内外の株式や公社債を実質的な主要投資対象とする場合、⼀般に株式の価格は個々の企業の活動や業績、市場・経済の状況等を反映して変動し、また、公社債の価格は発⾏体の信⽤⼒の変動、市場⾦利の変動等を受けて変動するため、その影響を受け損失を被るリスクがあります。
流動性リスク:有価証券等を売却あるいは取得しようとする際に、市場に⼗分な需要や供給がない場合や取引規制等により⼗分な流動性のもとでの取引が⾏なえない、あるいは不利な条件で取引を強いられたり、または取引が不可能となる場合があります。これにより、当該有価証券等を期待する価格で売却あるいは取得できない可能性があり、この場合、不測の損失を被るリスクがあります。
信用リスク:有価証券等の発行者や有価証券の貸付け等における取引先等の経営・財務状況が悪化した場合またはそれが予想される場合もしくはこれらに関する外部評価の悪化があった場合等に、当該有価証券等の価格が下落することやその価値がなくなること、または利払いや償還金の支払いが滞る等の債務が不履行となるおそれがあります。投資した企業等にこのような重大な危機が生じた場合には、大きな損失が生じるリスクがあります。
為替変動リスク:外貨建資産を組み入れた場合、当該通貨と円との為替変動の影響を受け、損失が生じることがあります。
カントリーリスク(エマージング市場に関わるリスク):当該国・地域の政治・経済情勢や株式を発行している企業の業績、市場の需給等、さまざまな要因を反映して、有価証券等の価格が大きく変動するリスクがあります。エマージング市場(新興国市場)への投資においては、政治・経済的不確実性、決済システム等市場インフラの未発達、情報開示制度や監督当局による法制度の未整備、為替レートの大きな変動、外国への送金規制等の状況によって有価証券等の価格変動が大きくなる場合があります。
未上場株式等への投資に関するリスク:当ファンドは、投資事業有限責任組合を通じて実質的に未上場株式等に投資を行なうため、他の金融商品を組み入れた投資信託と比較して、加えて、主に以下のリスクがあります。これらのリスクにより、基準価額が大きく下落し、損失を被るリスクがあります。
・当ファンドが実質的に投資する未上場株式等は、各銘柄の価格が各企業の個別要因や イベント(デフォルト、上場、M&A等)によって大きく変動し、上場企業の株式とは値動きの方向性や変動率が大きく異なる場合があるため、評価額が大きく変動し、その影響を受け損失を被るリスクがあります。
・当ファンドが実質的に投資する未上場株式等は流動性が著しく乏しいため、売却時に不利な価格での取引をせざるを得なくなるなど、流動性リスクおよび各種リスクの影響が大きくなる可能性があります。
・未上場株式等の評価額については、その時点で入手できる情報に基づいた公正価値の見積りであり、日々の投資信託の基準価額算出においては、影響を受ける可能性のある 重要な事象を完全かつ正確に反映することが困難となります。
したがって、お客様(受益者)の投資元本は保証されているものではなく、基準価額の下落により損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)の「投資リスク」をご覧ください。
「ひふみクロスオーバーpro」にかかる費用について
■お客様に直接的にご負担いただく費用:
購入時手数料:申込金額に対する手数料率は3.30%(税抜3.00%)を上限として、販売会社が定める料率とします。購入時の商品説明または商品情報の提供、投資情報の提供、取引執行等の対価として販売会社にお支払いいただきます。「自動けいぞく投資コース」において、収益分配金を再投資する場合は無手数料です。なお、お取り扱い可能なコースおよびコース名については販売会社によって異なる場合がありますので、販売会社にお問い合わせください。
換金時手数料・信託財産留保額:ありません。
■お客様に間接的にご負担いただく費用:
運用管理費用(信託報酬):信託財産の純資産総額に対して年率1.650%(税抜年率1.500%)を乗じて得た額。信託報酬とは、投資信託の運用・管理にかかる費用のことです。日々計算されて、投資信託の基準価額に反映されます。なお、毎計算期間の最初の6ヵ月終了日および毎計算期末または信託終了のとき「ひふみクロスオーバーpro」の信託財産から支払われます。
その他費用・手数料:組入有価証券の売買の際に発生する売買委託手数料(それにかかる消費税等)、先物取引・オプション取引等に要する費用、外貨建資産の保管等に要する費用、租税、信託事務の処理に要する諸費用、監査法人等に支払うファンドの監査に係る費用(監査費用)およびそれにかかる消費税等、受託会社の立て替えた立替金の利息など。 監査費用は日々計算されて、毎計算期末または信託終了のとき、その他の費用等はその都度ファンドから支払われます。これらの費用は、運用状況等により変動するものであり、予めその金額や上限額、計算方法等を具体的に記載することはできません。
レオス・キャピタルワークス株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1151号
一般社団法人投資信託協会会員・一般社団法人日本投資顧問業協会会員