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ブルネロ クチネリの服から感じ取るのは、素材やデザインの豊かさだけではない。温かく、人間味に満ちあふれた優しさが伝わってくる。そしてそれは、着る人の周囲にも拡散する。その優しさに、新時代のラグジュアリーの定義があるのだ。
Promoted by Brunello CucinelliDirection by AKIRA SHIMADA(Forbes JAPAN)Text by YASUHIRO TAKEISHIPhotographs by Massi Ninni
ダブルブレストのスーツは威厳ある佇まいが魅力だが、時には威圧的に見えてしまうこともある。だが、ブルネロ・クチネリが愛用する自社のワン アンド ハーフブレストは、威圧感がまったくなく、むしろ周囲を安心させるような温かさや包容力を感じる。それは監修を行うブルネロ・クチネリだけでなく、生地を手がけた機織り職人や縫い上げた仕立て職人らが抱く、着る人への温かな思いが集積されているからに違いない。まさにそれは“ジェントル ラグジュアリー”な服なのだ。
ダブルブレストのスーツは威厳ある佇まいが魅力だが、時には威圧的に見えてしまうこともある。だが、ブルネロ・クチネリが愛用する自社のワン アンド ハーフブレストは、威圧感がまったくなく、むしろ周囲を安心させるような温かさや包容力を感じる。それは監修を行うブルネロ・クチネリだけでなく、生地を手がけた機織り職人や縫い上げた仕立て職人らが抱く、着る人への温かな思いが集積されているからに違いない。まさにそれは“ジェントル ラグジュアリー”な服なのだ。
これまで数々の「ラグジュアリー」論が交わされ、その意味も変遷してきた。そして現在、ブルネロ・クチネリは自らの世界観を”ジェントル ラグジュアリー”と表現する。それはどんなラグジュアリーだろうか。
「”ジェントル ラグジュアリー”という言葉が生まれた発端は、紀元前800〜紀元前400年の古代ギリシャの思想家たちの逸話を知ったことでした。当時は都市が各地に築かれましたが、彼らは自然に則した生活を市民へ奨励し、都市から郊外への移住を促したのです。それは自然を尊重し、自然とともに生きよということ。そんな賢者の思慮深い導きに触れたとき、私は現代人こそ自然に則した生活へ戻る必要があると思ったのです」
現代人が失ってしまったライフスタイルバランス
件の言葉が生まれた経緯をこう語り始めたブルネロ・クチネリ。自然豊かな生活環境の有用性が指摘されている現在より、遙か2400年以上も前の思想家たちの先見性には驚かされる。氏がそんな自然への回帰の必要性を訴えるのは、現代社会を憂慮するゆえだ。
「私たち現代人は今、さまざまなバランスを取り直す必要があります。例えば時間です。多くの人が仕事やインターネットに時間を費やし、家族と過ごす人間的なひとときを疎かにしています。
弊社ではランチタイムを1.5時間とり、自宅で家族と昼食を共にできたり、17時半以降はネットに接続せず、自分の時間を生きることをスタッフに奨励しているのです。また現代の子どもたちも、勉強に時間を使いすぎです。勉学で知性を身につけることは大切ですが、自然のなかで”魂の知性”を育む時間も重要なのです。
今から800 年以上も前に私の故郷に程近いアッシジで生まれたカトリック修道士、聖フランチェスコは太陽や雨、風、木々、そして動物たちを兄であり、姉であるととらえ、あたかも家族のように語りかけたといいます。その姿は現代人には奇異に映るかもしれませんが、それは人間を含む森羅万象を尊重していた証しでしょう。そんなこの世のすべてと分け隔てなく接するバランス感覚が現代には必要と、私は真剣に思うのです」
コンピューターとインターネットが高度に発展した現在は、あらゆることがオンラインで行われる。その結果、利便性は向上したが、人と人が直接会うことや外出の機会は減った。そして自室でパソコンの画面に向かって長時間働き、プライベートな時間も常時ネットに接続。スマートフォンを頻繁にチェックせずにはいられない人は少なくない。
そうしたバランスを欠いてしまったライフスタイルを回復させるキーワードとなるのが”ジェントル”という言葉であると、ブルネロ・クチネリは語り続ける。
「私が言いたい”ジェントル”とは、イタリア語でいう”Gentile(ジェンティーレ)”という言葉の意味であり、それは”親切な、優しい”といった意味となりますが、その対象は人だけではありません。大自然のすべて、すなわち森羅万象に対して優しく、親切であることを意味する、素晴らしい言葉なのです。
私はそんなジェンティーレという言葉に合致する服をつくりたいのです。それは羊毛用の羊を放牧する羊飼いからスーツを仕立てるテーラーまでが適正な対価を得られ、すべての生産工程において人間や自然環境に害を及ぼさない服。そして着る人の体を優しく包み、袖を通すことで他者や自然に対しても親切になれる服です。それは自然に則して生きるための節度ある美のシンボルなのです。
そんなジェンティーレなものを生み出すには、人や自然を害さないために、ある程度の時間も必要です。時間をかけて丁寧につくられたものは、末長く使うことができ、次世代に継承する価値もある。それが私の提案したい”ジェントル ラグジュアリー”なのです」
人々を善き方向へ導く森羅万象のための服
近年話題に上る”クワイエット ラグジュアリー”とは、華美なデザインやロゴではなく、シンプルで寡黙ながらも上質感によって伝わるラグジュアリーを指す。ブルネロクチネリの服は、ある意味それとは一線を画す。そこには現代社会を憂い、服によって少しでも人々を善き方向へ導きたいという、ブルネロ・クチネリの切なる願いが込められているのだ。その服は自分のためだけではなく、周囲のために、そしてその服をつくったすべての人のためにある。いや、森羅万象のための服と言っても過言ではないだろう。それがブルネロ・クチネリの提唱する”ジェントル ラグジュアリー”なのだ。
「約2000 年前、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスは、ローマ法典に3つの項目を記しました。1つめは”正直に生きよ”、2つめは”周囲に害を与えるなかれ”、そして3つめは”それぞれが各々のものを持て”と。月や太陽は自分のためだけに輝くものではないように、すべては森羅万象のためにあるということなのです」