Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2024.02.26

大学発シーズの事業化で日本の未来を切り開く「関西スタートアップアカデミア・コアリション(KSAC)」

「関西圏の大学発スタートアップを世界へ」前編

「関西圏でグローバルを舞台に活躍する大学発スタートアップ」を創出するエコシステムの形成に取り組むKSACの活動内容に加えて、2022年度に起業活動支援プログラムに採択された、未来を変える可能性に満ちた研究・技術シーズを取材した。日本の未来を担う最前線の取り組みを前編後編の2回に分けて紹介する。


2022年11月、政府により策定された「スタートアップ育成5か年計画」。5年後の27年に、スタートアップへの投資額を10兆円規模(22年の10倍)にすることを目標としている。本計画を踏まえ、大学発スタートアップの創出を強力に支援するために創設したのが約1,000億円の「大学発新産業創出基金」である。その基金の支援を受け、関西圏から世界に羽ばたく大学発スタートアップを創出する仕組みづくりに取り組んでいるのが、スタートアップ・エコシステム形成支援プラットフォームの「関西スタートアップアカデミア・コアリション」、通称KSACだ。21年に京阪神を基盤とする14の大学を中心に38機関で設立され、23年12月時点で、参画機関は大学のほか、産業界、自治体、金融機関など72機関にまで規模を拡大している。

KSACの主要な取り組みは、大学発スタートアップの種となる大学の研究開発課題に対するGAPファンドの提供だ。併せて、専門的スキルを有した起業支援人材の伴走による事業化推進も行う。GAPファンドの提供を受けた研究開発課題の事業領域は、ライフサイエンスやヘルスケア、ものづくり、アグリビジネス、情報通信など多岐にわたり、それぞれからすでに複数のスタートアップが創出されているという。しかし、世界市場で通用する大学発スタートアップを持続的に創出していくには、事業化をけん引する経営者候補人材の確保や、海外展開を支援する国際展開機能の強化など、大きな課題が立ちはだかっているとKSACはとらえている。

24年1月、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)が「大学発新産業創出基金」をもとに支援する「スタートアップ・エコシステム共創プログラム」にKSACは採択された。同プログラムは、大学発スタートアップの創出を質・量ともに充実させるとともに、継続的な創出を支える人材・知・資金が循環するエコシステムを形成する活動を支援する。

KSACは、このようなJSTの支援を受け、先述の課題を克服しながらこの関西圏に世界に伍するスタートアップ・エコシステムを構築していくことで、社会課題の解決に貢献していく。

事業化を目指す7つの研究シーズ

2022年度にKSACの起業活動支援プログラムに採択された研究・技術シーズから注目すべき7つのトピックを紹介。事業化に向けての想いと進展の度合いを聞いた。

分子サイズの細孔が開いた膜で
世界のエネルギー消費量を下げる

荒木貞夫 関西大学 環境都市工学部 エネルギー環境・化学工学科准教授

荒木貞夫 関西大学 環境都市工学部 エネルギー環境・化学工学科准教授

化学製品などを製造する際には、目的物質の純度を高めるための分離プロセスを必要とする。「化学産業の分離プロセスは、世界のエネルギー消費量の約15%を占めるといわれています。その多くが、熱を利用した蒸留や蒸発です。私たちは、大きなエネルギーを必要とする分離プロセスを省エネルギーで環境負荷の小さい膜分離プロセスに置き換えるべく、高い性能と耐久性を兼ね備えた無機膜の開発を行っています」

膜で物質を分離する膜分離は蒸留による分離プロセスと比べて最大で約70%ものエネルー消費量を削減することができる。荒木貞夫はとくに「有機溶媒の分離」や「二酸化炭素や水素などのガス分離」に注力し膜分離プロセスに用いる膜を開発してきた。

「化学産業で使われているのは、有機物からつくられた高分子膜が一般的です。しかし、高分子膜は熱や有機溶媒に弱いので、用途が限定されます。そうした課題を解決するために、私たちは無機系の高性能分離膜を開発しました。膜の表面を制御する技術により、廃棄されていた有機溶媒の分離・回収が可能になり、高価な金属錯体の効率的な分離も可能にします。ガス分離膜においては、工場などの排ガスからの二酸化炭素の分離やバイオガスや天然ガスなどに含まれる二酸化炭素とメタンの分離などへの適用が期待できます」上記が荒木による研究・技術テーマ「世界最高レベルの高性能無機分離膜で目指すカーボンニュートラル」の要諦である。「これまでは長さが3cmから5cm程度のテストピースで性能評価をしてきました。今は、大面積化やモジュール化を着実に進めながら、膜の販売先やビジネスモデルについての議論も進展させています。KSACのGAPファンドは膜の耐久性の実証実験に使用して、成果を得ています」
高い耐久性をもつ高機能無機膜の断面拡大写真。分離膜の細孔と表面特性を制御することで、世界最高水準の分離膜を実現した。

高い耐久性をもつ高機能無機膜の断面拡大写真。分離膜の細孔と表面特性を制御することで、世界最高水準の分離膜を実現した。


あらき・さだお◎2003年、日立造船に入社。08年、関西大学大学院総合理工学専攻博士後期課程修了。11年、関西大学環境都市工学部助教、16年より同准教授。16年から1年間、Imperial College Londonで客員研究員。

先端医療や培養肉の進化のために
細胞の回転速度を独自技術で計測

鈴木雅登 兵庫県立大学 大学院理学研究科/先端医療工学研究所准教授

鈴木雅登 兵庫県立大学 大学院理学研究科/先端医療工学研究所准教授

「私の研究には、細胞を評価する電極デバイスが必要です。そのデバイスの試作が加速したのは、KSACのGAPファンドが得られたからです」

鈴木雅登が試作を急いだというデバイスは、どのように働くのか。人類に何をもたらしうるのか。「例えば、人の血液には『創薬に応用される抗体を産生する細胞』や『ウイルスや異物を排除する細胞』など、人の健康維持に有用な細胞が含まれます。そうした細胞を簡単に見分けて単離できれば、創薬や治療用細胞の開発は加速します。私たちは、細胞の一つひとつを電気で回転させ、その速度を測ることにより、簡便・迅速に細胞を見分ける電極デバイスを開発しています」

電極デバイスから発生させた回転電場と細胞の電気特性の相互作用で生じる細胞の回転速度から細胞機能を計測するという。独自の電極デバイス構造と回転速度の解析方法が強みだ。

「蛍光分子で標識を付けたり、細胞そのものを破砕したりする必要があった従来の細胞選別には大変な手間と労力、時間がかかっていました。しかも、標識や破砕を経た細胞は創薬や細胞医療のための培養には利用できませんでした。しかし、私たちのデバイスであれば、『貴重な単一細胞を傷つけることなく1時間で見つける』ことができて、単離後の培養も可能になります」

鈴木が研究してきた「貴重で高機能な細胞一つを標識せずに細胞の回転速度から見つけ出す技術」は、創薬・医療分野のほかにも生かせる。

「人口増加や環境問題に対するソリューションのひとつとして注目されている培養肉は、牛などの動物から取り出した骨格筋の細胞をメインにして脂肪や血管の細胞を混ぜることでつくられます。その際、品質安定のために『培養槽のなかでどの細胞がどれくらいの割合で増えているか』を検査する必要があります。そこでも使える技術です」
細胞を評価する電極チップ。チップに細胞を滴下し、電気を流すと細胞の一つひとつが回転する。その回転の速さから細胞を評価。

細胞を評価する電極チップ。チップに細胞を滴下し、電気を流すと細胞の一つひとつが回転する。その回転の速さから細胞を評価。


すずき・まさと◎2007年、東北大学大学院環境科学研究科修了。パナソニックHDテクノロジー本部研究員を経て、18年より現職。専門はバイオ分析化学。細胞を使った医
療・センサー・モノづくりの実現に取り組む。

サービスロボティクスが車いすに
実装されて人間を救うときが来た

中後大輔 関西学院大学 工学部 知能・機械工学課程教授

中後大輔 関西学院大学 工学部 知能・機械工学課程教授

中後大輔の専門はロボット工学。ロボット工学×人間工学で車いすの走行支援技術を開発した。

「この技術の独自性は、『ブレーキがこぎ手の動作をサポートする点』と『こぎ手の動きを推定する点』です。手動の車いすは、歩道に傾斜があると重力に引かれて車道に飛び出しやすいというリスクがあります。そのリスクを、車いすに外付けする小さなブレーキで重力を打ち消して排除します。また、こぎ始めの動作の特性を車速センサーで計測することによって、こぎ手の意志を推定してスムーズな走行につなげます」

もともとは介護ロボット開発のためのニーズ調査で訪れた老人福祉施設において、車いすに対するニーズにも出合ったのがきっかけだ。自身の研究を社会に還元していきたいという中後の熱い想いは、その声を放っておかなかった。

「ロボット工学は、人間に寄り添うことではじめて意味を成します。使い手が満足してはじめて、技術は身を結ぶのです。技術を開発した人間の自己満足で終わっていたら、意味がありません」

中後が率いるサービスロボティクス研究室は、サービス工学(サービスによって創造され
る付加価値の増大を目的とした工学)の考え方に基づき、ロボット技術を用いた人間支援技術の開発を行ってきた。その大きな成果のひとつが、KSACの起業活動支援プログラムに採択された「坂道でも平地のように車椅子を漕げるサーボブレーキ付き車輪ユニット」だ。今、技術のシーズは研究室を飛び出して、大きく芽吹こうとしている。

「KSACのGAPファンドで、私たちの車いすの試作機は研究室レベルから社会実装レベルにまでバージョンを引き上げることができました。今、複数の病院から『院内での移動に使いたい』という引き合いがきています。このユニットは、看護や介護に携わる人のためにも役立つのです」
シーズ技術を用いた車いす(写真右側)はブレーキなしの車いす(写真左側)を斜面でこいだ場合より坂下方面に流されない。

シーズ技術を用いた車いす(写真右側)はブレーキなしの車いす(写真左側)を斜面でこいだ場合より坂下方面に流されない。


ちゅうご・だいすけ◎2005年、埼玉大学大学院理工学研究科後期博士課程を修了。東京大学研究員、電気通信大学助教。関西学院大学専任講師、准教授を経て20年より教授(現職)。15年まで理化学研究所客員研究員。

熱のコンビニエンスストアとして
持続可能な社会を見据えている

廣谷 潤 京都大学大学院 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻ナノシステム創成工学講座 准教授

廣谷 潤 京都大学大学院 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻ナノシステム創成工学講座 准教授

廣谷潤はナノメートルやマイクロメートルという小さいスケールにおける物理現象とデバイスの研究をしている。

「具体的に言うと、小さなスケールにおける熱の流れを研究しています。半導体で使われる材料の熱拡散率や熱伝導率といった熱特性を3次元で計測する技術が主な研究テーマです。この技術は半導体の発熱抑制に大きく貢献できます」

廣谷による3次元熱計測技術は、熱の伝わり方を理解して、ヒートスポットを探し出し、効率よく熱を逃がす方法を考えるのに役立つ。今後、ますますの需要の高まりが予測される半導体は微細化が進んでおり、それに伴って単位面積当たりの発熱密度も上昇の一途をたどっている。

「材料そのものの熱特性はもちろん、異なる材料をいくつも組み合わせたときの全体の熱特性も計測していかないといけません。さらには、熱を計測していくだけでなく、マネジメントしていく技術も研究しています。熱計測技術だけを切り出して分析業務の受託で起業することも可能ですが、その先の熱マネジメントまでを見据えたデバイス開発やコンサルティング業務の準備を今は進めているところです。2026年の起業を目指しています」

現在、京都大学にある「周波数領域サーモリフレクタンス法による熱計測装置」は、世界でも最先端のものだと廣谷は自負している。

「熱は、エネルギーの最終形態です。熱をマネジメントすることは、エネルギーを無駄なく、効率よく使うこととイコールでつながります。考えてみれば、人間の衣食住のすべてに熱が関与していますよね。熱のマネジメントは、持続可能な社会に貢献できるのです。熱に関することで困ったら、どのようなことでも京都大学の廣谷へ。そう考えていただける『熱のコンビニエンスストア』のような便利な存在に、私はなりたいですね」
3次元ナノ・マイクロスケールでの熱拡散率計測が可能な周波数領域サーモリフレクタンス法による熱計測装置を使った測定の様子。

3次元ナノ・マイクロスケールでの熱拡散率計測が可能な周波数領域サーモリフレクタンス法による熱計測装置を使った測定の様子。


ひろたに・じゅん◎九州大学大学院工学府航空宇宙工学専攻博士後期課程修了。2012年12月、京都大学大学院工学研究科の准教授に着任。20年12月から科学技術振興機構さきがけ研究者(情報担体領域)を兼任。

粗水素をそのまま活用する
持続可能な水素精製・貯蔵技術

星本陽一 大阪大学大学院 工学研究科附属フューチャーイノベーションセンター(CFi) 准教授

星本陽一 大阪大学大学院 工学研究科附属フューチャーイノベーションセンター(CFi) 准教授

水素は理想的な炭素循環を実現する鍵物質と位置づけられ、エネルギーキャリアとしての社会実装が急がれている。世界の水素市場は2050年までに年間2.5兆ドルの収益と3,000万人の雇用を創出するという予測もある。

「2050年において、水素はおもに2種類の資源から製造されると考えられます。ひとつは水、そしてもうひとつは炭化水素資源、つまり炭素と水素を含む資源です。石油や天然ガス、バイオマス、廃プラスティックなどはすべて炭化水素です。近い将来にはバイオマスやゴミから、水素の原料となる粗水素が大量につくられるでしょう」

星本陽一は、独自に開発したホウ素を含む分子触媒を利用して粗水素から水素を抜き出す技術を世界ではじめて実現した。

「既存の水素精製プロセスでは、まず粗水素(水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンガスなどの混合ガス)が製造され、続いて一酸化炭素や二酸化炭素などの不純物が徹底的に取り除かれます。貴金属触媒が不純物によって活性を失ってしまうからです。対して、私たちはホウ素を含む分子触媒を利用することで、不純物を除去するプロセスを省いて粗水素をそのまま活用できる可能性を見いだしました。それはすなわち、従来のプロセスで消費するエネルギーや発生する温暖化ガスを大幅に削減できうるということです」

粗水素をそのまま活用できる、貴金属に頼らない水素精製・貯蔵技術は世界初である。エネルギー消費を抑えると同時に安価で競争力の高い技術として、炭素資源から水素を製造していく未来の産業の場で活用できる。

「『ホウ素を含む分子触媒』または『当該の触媒を用いた水素精製システム』を販売するベンチャー企業として起業するべく、現在はCEOとしてジョインしてくれる人材を探しているところです」
粗水素から水素のみを一挙に分離・貯蔵する世界初の技術の鍵となるのが有機ホウ素触媒。その分子構造がこちら。

粗水素から水素のみを一挙に分離・貯蔵する世界初の技術の鍵となるのが有機ホウ素触媒。その分子構造がこちら。


ほしもと・よういち◎大阪大学大学院工学研究科にて博士(工学)を取得後、同研究科で助教として研究を開始。現在は同研究科附属CFiにて准教授として触媒化学、有機典型元素化学、有機金属化学などの研究に従事。

「画像処理AIモデルの自動構築とその運用」で産業と文化に恩恵を

孟 林 立命館大学 理工学部 電子情報工学科 知的高性能計算研究室 准教授

孟 林 立命館大学 理工学部 電子情報工学科 知的高性能計算研究室 准教授

AIモデルを完成するための手順として考えられる「学習データの収集」「モデルの構築と学習」「モデルの検証」。この3つの工程は、プログラミング言語を用いたコーディングという人的作業によってなされていく。

「中小企業などがAIを活用しようとしたときに見えない壁となって立ちはだかるのは、このコーディングに必要となる人的・時間的・知見的なリソースの不足です。私たちは、画像処理AIモデルの自動構築に挑戦しています。『コーディングなしでなせるAIモデル構築』が、私たちの研究の独自性となります。エンジニアなどAIの専門家を必要とせずに中小企業も画像処理AIを導入し、活用できるようになることが期待できます」

孟林は技術の社会実装に向けて、すでに種々の検証実験を行い、成果を積み上げている。
「私たちの研究室では、リンゴに付いた傷などの異常を見つけ出す画像処理AIモデルの自動構築に成功しています。これは、さまざまな生産現場において欠損の検出などに使えると考えています。また、これからが応用段階ですが、自動下げ膳(飲食後の食器を自動で回収)のロボットに(自動構築した)AIを組み込んだデモンストレーションも行っています。さらには、画像処理AIを用いた古文書の修復にも取り組んでいます」

画像処理AIにできることは幅広い。物体認識、物体検出をはじめ、顔認識や文字認識などにより、さまざまな用途に展開できる。また、精度だけではなく、ユーザーが使用するハードウェアリソースの性能なども考慮しながらAIモデルの個別最適化を成し遂げていくのが、孟の技術ならではの強みだ。これまでKSACから資金面、さらには人材面の支援も受けながら、起業に向けての歩みを進めている。多様な産業と文化に実装される日は、そう遠くないだろう。
古文書の修復例(左が修復前、右が修復後)。カスレ、汚れなどで文字の判別が難しくなった文化遺産の保存整理にも役立つ。

古文書の修復例(左が修復前、右が修復後)。カスレ、汚れなどで文字の判別が難しくなった文化遺産の保存整理にも役立つ。


もう・りん◎2012年、立命館大学大学院理工学研究科学位取得。立命館大学理工学部にて助手、助教、講師を経て准教授に。15年から16年にかけては米国のミネソタ大学にて客員研究員として活動。

エネルギーハーベスティングで
スマートな未来に貢献していく

吉村 武 大阪公立大学大学院 工学研究科 電子物理系専攻 電子物理工学分野 准教授

吉村 武 大阪公立大学大学院 工学研究科 電子物理系専攻 電子物理工学分野 准教授

KSACに採択された吉村武による研究・技術シーズは「IoT端末向けのユビキタス電源技術」だ。

「発電素子を電線に近づけるだけで簡便に1mW(ミリワット)程度の電力が得られるエネルギーハーベスティング(環境発電)技術を開発しました。電線の近くには電流と同じ周期で変動する磁界が形成されていて、そこに永久磁石を置くと、力を受けて電線と交差する方向に振動します。その圧電効果(物体に力を加えると電流が生じる現象)で電力に変換する仕組みです。風鈴やトライアングルの原理を応用しながら、より効率的に電力に変換する構造に関するものなど、すでに3つの特許を取得しています」

この技術は、どのように社会実装されうるのか。「送配電網から家庭まで電線さえあれば屋外や液体中など場所を選ばずに動作する発電素子を社会に実装していきたいと考えています。IoTベースによる『遠隔監視の点検・モニタリングシステム』で必要となるユビキタス電源として高い適性を有しているからです。無給電のワイヤレス電力センサーとしての利用も期待できます」

起業活動支援プログラムに採択されたことでKSACから受けることができたGAPファンドは、どのように使われたのだろうか。

「パートナー企業と共に量産化に向けた試作に取り組むことができました。100個の発電素子を製作するにあたっての所要時間とコストを割り出せたことで、事業化への道程を前進できています」

これから先、まずは省エネルギーに配慮したスマートビルを手がけていこうとする事業会社などが顧客として考えられるという。

「スマートファクトリーやスマートホームでの使用も考えられます。量産化のメドが立ってきたので、現在はファーストペンギンとなってくれる事業会社を探しているフェーズです」
最新の試作機。手にもった底面部分の溝を電線に当てると上面の端子から電力出力される。防水ケースに入れれば屋外でも使用可。

最新の試作機。手にもった底面部分の溝を電線に当てると上面の端子から電力出力される。防水ケースに入れれば屋外でも使用可。


よしむら・たけし◎1999年、大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程修了。ペンシルベニア州立大学および大阪府立大学での博士研究員を経て、2005年に大阪府立大学(現大阪公立大学)助手、10年に同准教授。


事業化を目指す研究一覧

これら23人の研究・技術シーズが2022年度の「起業活動支援事業」に採択され、事業化に向けて活動している。
*所属、肩書は採択当時のものです。

*所属、肩書は採択当時のものです。


関西スタートアップアカデミア・コアリション(KSAC)
https://ksac.site/

▶ 後編|関西圏の大学発スタートアップをグローバルの舞台へ

Promoted by KSAC / text by Kiyoto Kuniryo / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro

ForbesBrandVoice