近年、マーケティング領域において、カスタマーエンゲージメントプラットフォームとして注目を集めている「Braze」。2011年にニューヨークで誕生し、2020年に日本に上陸したこのプラットフォームは、顧客の属性・行動・嗜好といったデータ分析からリアルタイム活用、直感的なUIによるカスタマージャーニーの形成や多種多様なクロスチャネル機能を実現し、ビジネスリーダーやマーケターからの信頼も厚い。顧客や潜在顧客と効果的にコミュニケーションするために、複数のチャネルにわたったマーケティング戦略をBrazeが後押しする。
Brazeは、2024年現在日本での顧客数は約60社、その成長率も400%と急成長を続けている。
Brazeは同社を活用して、ブランド価値を高めようとするマーケターらのコミュニティを形成、充実させるべく、21年からコミュニティイベント「Braze Bonfire」を開催。本イベントは、消費者のニーズや行動変容が激しく変化する現代において、柔軟変化、そして進化しつづけるマーケティング人材を育成・支援することで、個人、チーム、会社、そして日本の成長に貢献できるコミュニティ創造を目指している。Braze Bonfireは毎年夏と冬の年2回開催され、先進的なマーケティング戦略と施策を展開するマーケターによるディスカッションや交流、そしてナレッジの共有が積極的に行われ、Brazeのビジネスを推進する上でも、重要な役割を果たしている。
そんななか、23年度末に開催されたBonfireでは、導入企業や個人を対象としたアワード「Braze Torchie Awards 2023」の受賞者および受賞企業が発表された。本アワードはマーケティング主導で大きなビジネスインパクトをもたらした企業、そしてマーケティングチームをけん引するリーダー、チームを讃えるものとして、マーケティング施策の成果や話題性、体制やオペレーションの高度化、施策数やチャネル数、劇的な改善が見られた具体的な成果を残した企業・個人の栄誉を讃えている。今年は4部門での受賞が発表され、当日には表彰式も行われた。
「Braze Torchie Awards 2023」受賞企業および、その受賞者は以下の通り。
<Campaign of the Year>
株式会社グラニフ
<Marketing Leader of the Year>
株式会社アイスタイル
@cosme サービス本部
グロース推進部 マネージャー
奥家沙枝子
<Collaborative Team of the Year>
株式会社トリビュー
<Rising Marketing Star>
株式会社タイミー
マーケティング部 プロダクトマーケティングG
児玉吹生
今回は受賞者のうち、グラニフ・高松、トリビュー・村田、そしてアイスタイル・奥家への取材を実施。各賞の受賞理由からBrazeのその活用事例と効果について話してくれた。
コンバージョン数、売上、LTVが大幅に増大
ファン創出を促したグラニフの施策
エンゲージメント・マネタイズ・リテンションなど、ビジネスインパクトをもたらした施策を実行した企業に贈られる<Campaign of the Year>を受賞したのは、Tシャツや雑貨をはじめとしたグラフィックアイテムを中心に実店舗並びに公式オンラインストア、アプリまでを展開する“グラフィックライフストア”のグラニフ。
受賞理由は「プロダクト分析ツールAmplitudeとの連携をはじめ、Brazeの活用および先進的なテックスタックで、高度なパーソナライゼーションに取り組んだこと」「34本ものアクティブCanvas※を管理し、目標値を大幅に上回るコンバージョン数を達成したこと」が挙げられた。
※Braze Canvasとは、マーケターが複数のチャネルを組み合わせ、顧客の反応に合わせたステップを設定することで、統合的なカスタマージャーニー(顧客が製品・サービスと出会い、購入に至るまでの道筋)を作成できるツール。
同社がBrazeを本格導入させたのは2022年11月。施策開始当時、Brazeには顧客のニーズに合わせたコンテンツを提供するレコメンデーション機能が備わっていなかったため、ユーザー行動分析ツールのAmplitudeと連携させることで、顧客ごとに最適化した情報やサポートを提供することを実現させた。
レコメンデーション機能は他社ツールが担っていたため、Brazeを介した分レスポンスが遅くなってしまう恐れはあったものの、「ECサイトやアプリ、メルマガといったどのチャネルでも、Brazeを介することでユーザーに対して一貫したレコメンデーションを実現しました。チャネルが違っても同じ商品がオススメされることで、お客様にとってグラニフの体験を統一的なものにしたかったのです」と話すのは、同社のEコーマスDiv.ゼネラルマネージャー 髙松貴宏だ。(※24年現在、Braze単独でのレコメンデーション機能が実装されている)
また、グラニフでは顧客が製品に出会い、購入に至るまでのカスタマージャーニーを直感的に設計できるBraze Canvas機能を有効活用し、カスタマーエンゲージメントの自動化と最適化を実現。顧客のステータスによって特典内容や配信頻度を細かく調整することで、離反顧客を防止するクーポンの利用割合が10倍増になり、コンバージョン数からECの売上、LTVまでを大幅に増大させた。こうした施策が、ブランドロイヤリティの高いファンの創出に大きく寄与した。
「今回の受賞が非常にありがたいと同時に、Brazeのユーザー会への参加は大変刺激になっています。今後も積極的に参加することで自分たちの知見を広めるだけでなく、ほかユーザーからのフィードバックを受けるなど、Brazeコミュニティ全体で成長、成功していけると嬉しいです」(グラニフ・髙松)
Brazeを部門をまたいで活用し、
半年でリピーター数280%を達成したトリビュー
組織のサイロ化を解決し、コラボレーションを発揮した企業として、<Collaborative Team of the Year>を受賞したのはトリビューだ。同社は国内トップクラスの美容医療領域プラットフォームを展開するスタートアップ企業で、Brazeの利用によって半年でリピーター数が280%増加するなどの成果を上げている。
今回、「プロダクト・マーケティング・セールス部門が一体となり、BtoCのみならずBtoBも含め広い活用範囲で顧客エンゲージメントを強化したこと」「一体となったチームで施策のディスカッションを頻繁に行い、PDCAを高速に回すことで作業工数を半減させ多数の施策を実現したこと」が評価され、受賞に至った。トリビューはアプリの主なユーザーとなる美容医療ユーザーだけでなく、予約システムを利用するクリニック側とのCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)でもBrazeを活用している。また、プロダクト・マーケティング部門にとどまらず、細やかなオートメーション化で予約率増加やアプリの使い方に関する問い合わせ数減少を達成し、セールスやCS部門でも多大な貢献を果たした。
部門横断的な活用の背景には、同社でスクラムマスターを務める村田千紘の存在も大きい。エンジニア出身の村田は現在、モバイル(プロダクト)からCRM、QAといったさまざまなチームでスクラムマスターを担当。各チームそれぞれがプロジェクトを進める中で、彼女がBrazeのナレッジを積極的に共有することで、一種のハブとして機能した。
「他部署をまたいだスクラムマスターをすることになった時、上司からは『Brazeについては村田に聞けばわかるポジション』という目標を立てられました。そこから機能を読み込んで、今はもう『Brazeならなんでも聞いてください』と言うようにしています。そうするとみんなからの情報も集まってくるし、私からもさまざまな提案がしやすくなっています」(トリビュー・村田)
アプリインストール率240%増、ROI600%超を実現
年間700本の施策を打つアイスタイル
最後に、成果を上げているマーケティングチームをけん引するリーダー<Marketing Leader of the Year>に選ばれたのは、美容系総合ポータルサイト「@cosme(アットコスメ)」の企画・運営を行うアイスタイルにて、@cosme サービス本部 グロース推進部 マネージャーを務める奥家沙枝子だ。
「年間700本の施策を実行し、チームメンバーを3名から20名の大幅拡大へとけん引したこと」「メディア・EC・店舗を繋ぎ社内全体での勝ちパターンの浸透を推進し、アイスタイル社内のアワードでベストプロジェクト賞を受賞したこと」が、本アワードの受賞理由だ。奥家が中心となり、Brazeを活用してマーケティングチームを率いたことが高く評価された。
アイスタイルでは2021年9月から主にWebサイトとアプリの運用において、Brazeを活用している。当初、デジタルマーケティングは3人という少人数チームだったこともあり全体向け配信といった従来型のCRMに終始していたが、Brazeの導入と並行してプロジェクト制を採用。店舗やEC、Webメディアをまたいでのシームレスな体験を志した。また、マーケター自身がBrazeを活用することにより、エンジニアへの依頼やコーディング作業を必要としない。スモールスタートが実現できることから、さまざまな施策を実施することに繋がり、Webからのアプリインストール率は240%増、単月ベースのROIは600%超という成果へとつながった。
奥家は成功の理由について、「これらの数字は本当に細かい施策を積み上げていった最終的な成果であって、スモールスタートで失敗を恐れず触ってきた結果だと思います。何よりも良かったと感じるのは、700本も施策を打つことで成功事例と失敗事例を両方とも横展開できたこと。そして、その結果として社内に失敗を恐れない文化を構築できたことです」と話した。
「Brazeの魅力は、簡単な施策であればマーケターだけで完結できるところ。エンジニアの力を借りないとマーケティング施策が打てないというのは、現代のスピード感覚からするとどうしても遅れがちだと感じます。その点、スピーディで新しい施策をたくさん回せるBrazeは、マーケター自身が成長できるプラットフォームだと感じました」(アイスタイル・奥家)
「Braze Bonfire」をはじめ、Brazeではナレッジ交換・アップデートの機会となる場をさまざまに設けている。Brazeが日本に上陸してから4年、今後もBrazeはデジタル時代の次世代マーケティングの最前線を更新し続けながら、マーケターを強力に支援していくはずだ。
Braze
https://www.braze.co.jp/