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2023.12.22

自分らしく蛇行しながら柔軟に進化を遂げる 〜田辺雄樹(Webエンジニア)<電通グループで働くネクスト・クリエイターの肖像#9>

日本国内の電通グループ約160社で構成される「dentsu Japan」から、ネクスト・クリエイターの目覚ましい仕事を紹介していく連載企画。

今回は、主にWebサイト/WebAR開発などを担当している電通クリエーティブXの田辺雄樹が登場。Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香が、彼の「蛇行するキャリア」の妙に迫る。


新たな状況や課題に対して積極的に自身を開いていくスタイル

それは「偏見をもたずに心を開く」「物事を機敏に柔軟に考える」ことが起点になる。現代の科学は、この「認知的柔軟性(=素早く、しなやかな対応力)」が幸福や成功と密接に関わっていることを明らかにしている。

電通グループの一員として、質の高いソリューションに必要なあらゆる形式のクリエイティブ・コンテンツを制作している電通クリエーティブX(Xはクロスと呼称)。

同社に所属するエンジニアの田辺雄樹は、まるで川のように流れが変転し、蛇行する人生において、自分自身が水であるかのように淀みなく形を変えてきた。

田辺雄樹 電通クリエーティブX エンジニア

緊急事態に際して才能が出現したのは偶然か

谷本有香(以下、谷本):事前情報で「田辺さんの経歴は異色だ!」とうかがっています。順を追ってお聞きしていきたいのですが、お生まれは北海道なのですね。

田辺雄樹(以下、田辺):はい。大学卒業まで北海道にいました。親が金融関係で働いていたのも影響して、学生時代には北海道の金融機関に就職することを考えながら、商学部でコーポレートファイナンスや金融工学、会計学を学んできました。しかし、実際に就職したのは、東京のWeb制作会社です。

谷本:それは大きな路線変更ですね。何があったのでしょうか。

田辺:すごく簡潔に言うと、「北海道を出て、東京のベンチャー企業で自分のチカラを試してみたい」と思うようになったからです。

谷本:田辺さんが大学を卒業されて社会に出られたのは、いつですか?

田辺:2016年です。

谷本:なるほど。田辺さんが大学2年生だった13年ごろから、日本は「第4次ベンチャーブーム」でしたからね。新規開業率(厚生労働省まとめ)が13年度ごろから上昇し、未公開企業の資金調達額(ジャパンベンチャーリサーチまとめ)も13年から右肩上がりに増加して、18年にかけて4.6倍にまで跳ね上がっています。

田辺:そのような右肩上がりの気分が影響していることは確かです。

谷本:どうしてWeb制作会社を選ばれたのでしょうか。

田辺:その会社が創業して間もないベンチャーだったからです。私は営業職で採用されています。

谷本:田辺さんがWebの世界でキャリアをスタートできたのは、多分に偶然だったというか、いい意味で運命のいたずらだったのですね。今となっては、それも必然だったと言えるのでしょうけど。

田辺:最初は確かにそうです。Webの世界を目指して入ったきたわけではありませんでした。

谷本:その後、営業からエンジニアへという路線変更が起きるわけですね。

田辺:実は、それも運命のいたずら的なもので始まりました。入社した翌年、その会社のエンジニアが一挙に何人も退職するという異常事態が発生したのです。クライアント企業のホームページ制作の納期が迫るなか、スクランブルで自分がやるしかない状況になってしまいました。

谷本:「自分がやるしかない状況」といっても、普通はできるものではないと思います。そのときに手がけたホームページが最初の仕事になったわけですね。

田辺:プロのエンジニアが実装する予定だった仕事を、初学者の状態だった自分が一人で実装をやりきりました。

谷本:そのときまでプログラミング未経験で、独学で勉強しながらということですよね。「自分のチカラを試してみたい」と思ってベンチャー企業に入社してみたところ、かなり斜め上の角度から予期していない試練が訪れた感じですね(笑)。

田辺:まったくそうです。しかし、そのときに無我夢中でやった仕事がとても楽しく、大きな手応えのようなものを感じながら毎日を過ごすことができました。今では、社会人としての基礎を叩き込みさまざまな経験をさせてくれたその会社に感謝しています。

谷本:普通の人だったら、逃げ出しているところですね。田辺さんは、異常事態や緊急事態に対する耐性が高いのでしょうね。困難な状況に直面した際には、素早く柔軟に思考の切り替えを行い、臨機応変に実行することにより、乗り越えられる確率がアップする。それが理屈としてわかっていても、実践するのは至難の業です。しかも、いきなり「楽しみながら乗り越えることができた」というあたりに、田辺さんのエンジニアとしての驚異的な才能の現れを感じます。

谷本有香 Forbes JAPAN Web編集長

技術と創造の粋を結集して「永遠と一瞬の物語」を表現

谷本:17年にWebエンジニアとしてデビューを果たして、電通クリエーティブXにジョインされたのが20年ですね。これまでに、ご自身がエンジニアとしてブレイクスルーできたと感じられたのは、どの作品になりますか。

田辺:サントリー天然水の特設サイトのために手がけた「ENDLESS DAWN そしてまた、朝が来る。」というインタラクティブコンテンツになります。サントリー天然水は山梨県の「南アルプス」、熊本県の「阿蘇」、鳥取県の「奥大山」という順番で水源が増えていきました。21年からは長野県大町市の工場が稼働し、第4の水源として「北アルプス」が加わっています。日本で唯一の氷河が現存する「北アルプス」では、数万年という途方もない時間軸を背景にして「永遠と一瞬の物語」が、かけがえのない一滴の水によって紡がれています。私は、その水の物語をWebブラウザで表現しました。
田辺が制作した「サントリー天然水」特設Webサイト
下記動画の映像がWebブラウザ上で楽しめる。

田辺:1万枚以上の空撮写真をもとにフォトグラメトリ(デジタル写真を解析・統合してリアルな3DCGモデルを制作する手法)で北アルプスを再現し、映像に加工しています。映像の途中で「映像の章立てに付随したコラム部分の空間」にページ遷移のクリックを行った際には、映像からWebGLでリアルタイムレンダリングされたコラム空間へと滑らかに流れていく仕様になっています。

谷本:このWebサイトにおいて、田辺さんが特にこだわっているポイントは、どこになるのでしょうか。

田辺:カメラワークにこだわっているのはもちろんですが、映像からコラム空間へと滑らかに流れていく仕様が最大の苦労したポイントです。通常のWebページでは、リンク遷移すると画面がバッサリと切り替わって映像も途切れてしまうのですが、このサイトではプリレンダリングされた映像とリアルタイムレンダリングされたWebGLの世界の間でカメラの軌跡が途切れることなく、画面がシームレスにつながるようにしています。

「観ていて心地いいインタラクションを実現する」というミッションを自分に課したのですが、テクニカル的にもクリエイティブ的にも、その実現がもっとも大変でした。また、「ENDLESS DAWN そしてまた、朝が来る。」というタイトルのとおり、映像の最初と最後が朝日の映像になっていて全体がループする仕様にもなっています。

谷本:映像の全体を通して「水の循環」が表現されていますね。この映像を観て私の脳裏に浮かんできたのは、横山大観が水墨技法で、まさに「水の循環」を表現した40.7メートルの画巻『生々流転(せいせいるてん)』です。この作品は1923年(大正12年)に生み出されていますが、ちょうど100年後を迎えている今、デジタル技術が駆使された現代版の『生々流転』を観ることができたと感じ、高揚しています。山々の美しさはもちろん、北アルプスの水と光と澄んだ空気を生き生きと体感することができました。この作品は、いたるところで高評価が得られているのではないでしょうか。

田辺:ありがとうございます。世界三大広告祭のひとつといわれる「The One Show」ではインタラクティブ&モバイルクラフト部門でゴールド、「Spikes Asia」ではデザイン部門でグランプリを頂くことができました。

また国内では、ACC ブランデッド・コミュニケーション部門 Aカテゴリー(デジタル・エクスペリエンス)で「総務大臣賞/ACCグランプリ」、フィルムクラフト部門でゴールド、フィルムクラフト部門 のテクニカルディレクション/プログラミング賞もいただくことができました。

谷本:それはすごいですね。17年にまったくのゼロ地点からWebエンジニアとして活動を始めて、ほんの数年で広告賞を受賞できるほどのエンジニアになったわけですからね。

田辺:いえいえ、作品はチームで生み出しているものですから。電通クリエーティブXにも他の電通グループ各社にも、あらゆるジャンルのクリエーターが揃っていて、各種の異能たちと一緒に仕事できることが現在の自分の喜びです。

谷本:エンジニアと聞くと単純に「技術者」をイメージしてしまいがちですが、それが私のなかでは今日をもって完全に覆りました。田辺さんは「技術者(エンジニア)」であり、「創造者(クリエーター)」であり、「表現者(アーティスト)」でもありますよね。もう私のなかで、田辺さんは「現代の横山大観」ですから――。とても偉大なアーティストでもあります(笑)。

田辺:一般的なエンジニアとは違って、自分は「蛇行するキャリア」を歩んできました。営業職として業界に入ってきましたし、コピーライター職を志して宣伝会議のコピーライター養成講座に通っていたこともあります。

しかし、蛇行してきたおかげで、自分なりの強みが形づくられたと思っています。チームのなかで自分が求められていることを少し俯瞰して考えることができたり、コンセプトワードを技術的・創造的表現に落とし込んでいく柔軟性があったり、そのあたりが強みではないかと今は考えています。

谷本:この時代にWebエンジニアとして活動していくことの意味や意義については、どのようにお考えでしょうか。

田辺:「より早く、より多くの人に届く」のがWebという媒体の強みだと思っています。

例えばARコンテンツの制作をする場合、アプリかWebか、どちらで実装するか検討課題にあがることがあります。自分であれば、Webで実現できないかを最初に考えます。なぜなら、アプリと違ってダウンロードする必要がなく、ブラウザを開けばすぐにコンテンツを閲覧することができるからです。体験までのスピードが早く、そしてハードルが低い。これがWebの素晴らしいところです。

一方で、Webでは重いデータを扱えなかったり、アプリで実現できる演出ができなかったり、制約も多いです。その制約のなかで、良いコンテンツを生み出していく難しさや苦しみ、これも裏返すとWebの楽しいところのひとつなのです。

将来、デバイスやブラウザの進化によってWebで実現できることはどんどん増えていくと予想されます。これからもWebという舞台で勝負をしていくつもりです。

人間の喜怒哀楽が揺れ動かされるとき、最初に「驚き」があると本で読んだことがあります。だから、これからも「Webというメディアだからこそ生まれる驚き」を生み出す感覚を研ぎ澄ましていきたいですね。


 
今、「蛇行するキャリア」の先にあるものを、田辺は楽しんでいる。「認知的柔軟性(=素早く、しなやかな対応力)」に富んでいる彼のエンジニア人生は、幸せなものであるに違いない。幸せな表現者は、周囲のチームメンバーにも、自身の作品を観てもらう人々にも、確実に幸せを届けることができる。

すなわち、田辺は「幸せの起点者」でもある。

そして、まだ30歳にして、デジタルクラフトの世界の第一線で活躍している。これからも適宜、彼らしく蛇行しながら柔軟に進化を遂げていくに違いない。

10年後、20年後、技術の革新とともに田辺は何を生み出してくれるのだろう――。可能性は無限大だ。


たなべ・ゆうき◎1993年、北海道札幌市生まれ。小樽商科大学商学部卒業後の2016年、上京してWeb制作会社に入社。営業として働き始めるが翌年にはエンジニアに転身。さらに広告制作会社を経て、20年3月に電通クリエーティブXに参加。異分野の精鋭クリエーターが集まり、テクノロジーを活用した広告案件やアプリ/サービス開発など多様なプロジェクトに取り組む「Think & Craft」のメンバーとして活躍。

Promoted by dentsu Japan / text by Kiyoto Kuniryo / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro

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