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2023.08.29 11:00

顧客体験の改革が「不安多層化社会」を克服する

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創立は、1911年。世紀を超えて存続し、170カ国以上で事業を展開する世界最大規模の企業。International Business Machines Corporation、すなわち、IBM。

いま、IBMから未来を変容するチカラをもったレポートが発信されているという。発信元であるIBM Future Design Lab.の所長に話を聞いた。



多様性がイノベーションの鍵となる時代、IBMには多様な部門が存在し、それぞれに多様な人材が集結している。その象徴のひとつとも言えるのが「IBM Future Design Lab.」であり、同ラボ所長を務める髙荷 力だ。

今年の5月29日に、彼は「不安多層化社会、到来。意志共鳴が拓く未来」と題したレポートを発表した(こちらからダウンロード可能)。そこでは「現状の認識と打開、さらには未来に向けての希望」について、IBM Future Design Lab.の独自調査に基づいた深い洞察が披露されている。

IBM Future Design Lab.とは、その所長とは

——まず、髙荷さまのキャリアパスから教えてください。

髙荷 力(以下、髙荷):私は広告会社の博報堂で多様な業界のブランド・販売戦略、事業・商品開発業務などに従事した後、2003年からは「買物研究所」という部門で働いてきました。そこは「生活者の消費行動および心理を研究する専門機関」で2017年には所長に就任しました。

——「買物研究所」では、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

髙荷:前職では、買物という人間の日々の行動の意思決定を深掘りすることで、受容と拒絶のメカニズムを解明してきました。人間は何に対して微笑み、何に対して違和感を抱くのかということについての研究を積み重ねてきたと自負しています。つまるところ、私が行ってきたのは、人間を洞察することにより、社会のあり方を認識したり、予見したりすることだったのではないかと考えています。

——そうした経験、知見の積み重ねが今回のレポート執筆にもつながっていることは、よく理解できます。いま、IBMに移られた髙荷さまが所長をされている「IBM Future Design Lab.」とは、どのような組織なのでしょうか。

髙荷:IBMのIBMコンサルティングのカスタマー・トランスフォーメーション事業部に属し、「テクノロジーがもたらす新しい社会のあり方を、ともに考え・共創し、発信する専門集団」と定義しています。「シンクタンク」「デザイン&クリエイティブ」「ネットワーキング」という3つの機能を有しているのが特徴です。さまざまな調査の結果分析から、スタートアップとの共創、産官学の連携まで、幅広く活動しています。

——今回のレポートは、そのシンクタンク機能から生み出された成果物というわけですね。IBMがグローバルに発信する「IBM Institute for Business Value (IBV)」の調査レポートの位置付けですが、この枠組みについてもご説明いただけますか。

髙荷:「IBM Future Design Lab.」は、日本独自の組織として2020年1月に誕生しています。IBVは、世界中のIBMの拠点を網羅するグローバルシンクタンクとして2002年に設立されました。そして、IBMが事業を展開する170カ国以上に随時発信しているのが、「IBVレポート」です。世界中のビジネスリーダーに対し、いつでもダウンロードできる形式で、データドリブンな調査と専門家による分析、ビジネス課題に関する知見を提供しています。

髙荷 力 IBM Future Design Lab.所長/CVO(チーフビジョナリーオフィサー)

髙荷 力 IBM Future Design Lab.所長

コロナ禍の定点調査で明らかになったこととは

——それでは、今回のレポート「不安多層化社会、到来。意志共鳴が拓く未来」についてお聞きします。このレポートは、どのような調査をもとにして書かれたのでしょうか。

髙荷:「IBM Future Design Lab.」は、世界がコロナ禍に突入した2020年から日本の生活者に対して定点で意識調査(生活価値観、消費意識、サービス利用意向、社会課題の問題意識、デジタル・トランスフォーメーション(DX)許容性について)を行ってきました。2020年、2021年、2022年の調査を通して浮かび上がってきたこと、そして未来に対する処方箋をまとめたのが今回のレポートです。

——3回に及んだ調査により、日本の生活者の意識には、どのような変化が見られたのでしょうか。

髙荷:まず、第1回調査(2020年8月末)では、「健康意識」「利他意識」「自助意識」という3つの意識の高まりが明らかになっています。緊急事態宣言下で健康に対する価値観はもちろんのこと、支援を目的とした購買意識が活性化するといった利他的な価値観が増大していました。そうしたなかでも、「これから先は、何が起きるかわからないから、自らが備えておくことが重要」という「自助意識」が、大きな高まりを見せていました。

——続く2021年は、どうでしたか。

髙荷:2021年9月に行った第2回調査では、生活価値観において前年からの有意差は見られませんでした。また、DXを許容する層が前年から引き続き多く存在し、生活にデジタル技術やサービスが浸透していく流れも確認できました。そうしたことから、あらゆるビジネスにおいてユーザー・ニーズを的確にとらえて体験価値をリ・インベンション(再構成)することが重要になるという洞察を得ています。

——その後、遂に2022年の調査で「不安多層化社会の到来」が明らかになったということですね。

髙荷:第3回調査は、2022年の10月末に実施しました。いまだコロナ禍が終息しないなか、2022年は2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、異常気象が続き、グローバルサプライチェーンの混乱によって資源や飼料、食料などの価格が高騰しました。まさに、混迷に混迷が重なり、世界各国の市民生活に拭いきれない不安感が多層化していったのが2022年と言えるでしょう。

——その「不安多層化社会の到来」は、どのようなデータによって裏付けられているのでしょうか。

髙荷:生活者の意欲や活力が数値的に減少していることです。過去2回の調査で回答率87%を維持していた「元気で、健康な暮らしが大切」が2022年には83%になり、2020年で85%、2021年で84%だった「将来が見通せないので、自ら備えることが大切」も80%にまで下がっています。実は、全体中9割程度の設問において、平均3〜4ポイントの減少が見られました。日々の暮らしに対する前向きな意識が全体的に縮小均衡の特徴を示していたのです。

——まるで「無気力の闇」とでも言えるような得体のしれないものに包み込まれてしまったかのようです。2023年8月現在において、ようやく世界はコロナ禍から脱したと言えます。しかし、新たな感染症への不安は拭いきれないですし、政治や経済などの諸問題が多層化しながら複雑に絡み合い、生活者の心に大きな不安となって積み重なっている構図は、現在においてもまったく変わっていません。

髙荷:2022年の調査で、さらに私が注目したのは「コロナ禍で時間的にゆとりができたか」という問いです。「ゆとりができた」と答えた人が前年の33.5%から25.9%になり、「ゆとりを失った」と答えた人が23%から35.1%に推移していたのです。「コロナ禍で金銭的にゆとりができたか」という問いと併せて考察すると、不安多層化社会のなかでは半数を超える人が金銭的なゆとりを喪失していて、3人に1人が時間の余裕までも失っているということになります。



不安多層化社会を克服する鍵は、どこにあるのか


——ここまでお話を聞いてきて暗澹たる気持ちになってしまったのですが、何か希望、あるいは希望の糸口のようなものが見えていたりしないのでしょうか。

髙荷:そうですね、実は2020年の第1回調査ですでに明らかになっていた「自助意識」が不安多層化社会を乗り切る鍵につながるのではないかと考えています。不安多層化社会のなかでもポジティブなマインドを維持している人がいるのです。その人たちは、「何事も何とかなると思うので、将来のことは心配していない」「金銭的な余裕がなくても、楽しく暮らせる」「地元や近所に、信頼できる仲間やコミュニティーがある」といった設問への回答率が高いという傾向が見られます。

——確かに、不安が多層化するなかにおいて、その人たちはポジティブなマインドセットを有していますね。

髙荷:レポートでは、そのようなマインドセットを「自助的楽観性」とネーミングしました。「自助的楽観性」こそ、不安多層化社会における希望の灯になると考えています。お金には縛られない幸福感や仲間の存在など、コロナ禍において多様化してきたセーフティ・ネットの存在が生きる活力の基盤になり、「自助的楽観性」を左右する重要なエレメントにもなっているようです。

——東日本大震災やコロナ禍といった苦難を経験するたびに、また近年のSDGsに対する理解の深まりもあって、日本人の共通意識として「つながりを重視する生き方がしたい」という思いが強くなっているのではないでしょうか。

髙荷:家族や友人、知人とのつながりにとどまらず、今回の調査では「自分に寄り添ってくれるサービス」の存在もセーフティ・ネットとして期待されていることがわかりました。これからは、単にオンラインとオフラインを融合するだけでは足りません。つながりを重視した購買行動の活性化、「エンゲージメント商圏」の台頭に着目し、オンラインとオフラインを駆使した新たなセーフティ・ネット機能を基盤に、顧客との関係性を強固にする必要があります。

——いま、多くの企業にとって最優先経営課題になっているのが、「顧客体験の革新」ではないかと思います。単に「ものづくり」だけをしていれば成長できた時代は終わりを告げ、いまは戦略的に「顧客づくり」を行える企業が成長する時代です。これまでにお聞きしてきたような時代の流れに沿った戦略で、新たな顧客体験の提供に成功している最先端企業の実例を挙げるとしたら、どこになるでしょうか。

髙荷:英国発会員制スーパーのピープルズ・スーパーマーケットは、25ポンドの年会費と月4時間の労働をすることによって会員が1割引で全商品を購入できる、店舗の運営や販売する商品について議論する総会に参加できるといった仕組みを導入しています。また、中国のEVメーカーでBaaS(バッテリー・アズ・ア・サービス)を展開するニオも顧客と特別な関係性を築いています。いまは、顧客戦略が事業戦略の最上位に来るべき時代です。顧客創造を念頭に置いて、ビジネスの磨き込みを行っていく必要があります。

——その顧客創造の肝となるのは、どのようなところでしょうか。

髙荷:必要とされているのは「企業と顧客が共に価値創造を行っていくような体験の設計」ですね。そこでは、共感をデザインすることが大事です。顧客と企業が一緒になって価値を共創していく過程において、顧客は従来のような利便性よりも共感性を重視するようになります。「IBM Future Design Lab.」では、共感性で選ばれる時代に必要となる事業コンセプトを「サービス・ヒューマンインターフェイス™️発想」と命名しました。ピープルズ・スーパーマーケットでは会員が働くスーパーという現場、ニオではバッテリー交換ステーションを要にしたコミュニティーになりますが、それぞれの企業がそれぞれに固有の「価値管理基盤」を介して顧客と深くつながり、自社と顧客の相互成長を実践するという考え方です。

チャート内のQOLはQuality of life:生活の質、LVTはLife Time Value:顧客生涯価値のこと

チャート内のQOLはQuality of Life:生活の質、LTVはLife Time Value:顧客生涯価値のこと



髙荷:このような価値共創のモデルは、BtoCだけでなく、BtoBのビジネスにおいても有効です。顧客と共に未来の可能性を拓きたい、顧客と共にビジネスをリ・デザインしていきたいと考える企業であれば、どの企業であっても有効なのです。今年、「IBM Future Design Lab.」は「We will be value creators」というチームスローガンを掲げています。私たちに新たな「価値づくり」「顧客づくり」のご相談をいただければ、希望にあふれた未来に向けての出発のお手伝いができると考えています。

この2023年に時代の趨勢をとらえ、ビジネスのリ·デザインへと舵をきった企業は、来たる2030年にどのような進化を遂げているのだろうか。今回のレポート「不安多層化社会、到来。意志共鳴が拓く未来」では、その巻末において、混迷の時代の先にある成長の可能性についてナラティブ(物語)で言及している。そこで描き出された希望の内容については、レポートをダウンロードして確かめていただきたい。そして、新たな「価値づくり」「顧客づくり」の旅をスタートしていただきたい。

たかに・ちから◎大学卒業後、広告会社において、生活者の消費行動調査や心理を20年にわたり研究。2020年4月にIBM入社。インタラクティブ・エクスペリエンス事業部にて多様な業種の顧客体験デザインを通じた事業戦略構想を支援しながら、2020年8月の第1回生活者調査の指揮をとる。2023年2月にIBM Future Design Lab.の所長に就任。生活者調査の実施や社内外に向けた提言を行っている。

Promoted by IBM/ text by Kiyoto Kuniryo photographs by Shuji Goto edited by Akio Takashiro