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2023.06.30

生成AIと働き方の未来 Transformation with AI

「AI経営」の最前線を伝えるために2020年に始まった、PwC JapanグループとForbes JAPANによるオンラインイベント「AI Summit」。その最新版「AI Summit 2023-生成AIを経営に実装せよ-」が2023年6月29日に行われた。

その口火を切るSession 1.のテーマは「Transformation with AI 生成AIと働き方の未来」。登壇者は、AIアシスタントサービスを12,500人の国内全社員向けに展開するパナソニック コネクトで執行役員 ヴァイス・プレジデント CTOを務める榊原 彰と、長年にわたりAI技術を企業へ提供している日本マイクロソフトで執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長を務める岡嵜 禎の2名だ。

モデレーターは、PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー データ&アナリティクスリーダー PwC Japanグループ データ&アナリティクス/AI Lab リーダーの藤川琢哉が務めた。


最初に藤川が示したのは、PwCコンサルティングが実施した、生成AIに関するエグゼクティブへの実態調査の結果だ。現状では過半数に達する54%がまだ、生成AIを認知していない。その一方で、知っている人間の間では、その6割が生成AIの活用に関心を示しており、47%が「自社にとってのビジネスチャンス」と捉えているという。

さらに藤川は米国との生成AI導入比率についても言及する。

「昨年(2022年)時点では、生成AIを導入している企業の割合は、日米でほぼ変わりませんでした。しかし23年3月になると、米国に大きくリードされてしまっています。要因はCOVID-19への政策の違いだと考えます。米国では経済を優先していち早くロックダウンを解除したことで企業側の投資が加速し、この差が生まれたのだと思います」

23年3月時点での、生成AIの利用中/利用計画中の企業は、米国は94%で日本は54%。日本企業の導入率は、確かに米国に比べれば少ない数字だが、それでも過半数に到達している。

その結果に対して榊原はこう注釈を入れる。

「いま、日本は巻き返しの攻勢に入っていると言えるでしょう。上記の数字はあくまで3月時点の結果であり、現時点では(6月時点)は、日本もさらに伸びているはずです。なぜなら日本企業は、取り組みが後手に回っても、ChatGPTのように認知度が上がってブームになると、猛スピードで取り込む傾向があるからです」

そうした急速普及の実感を、岡嵜は肌で感じているという。

「社内での問い合わせが、急激に増えています。それこそインターネットやスマートフォンが登場した当時の状況くらいのインパクトがあります。マイクロソフトで言えばWindows95なみの興奮が広まっていると言えるでしょう。生成AIは自然言語で操作できるため、導入しやすく効果もわかりやすいのがポイントなのではないでしょうか」

つまり、生成AIは急速に民主化しつつあるということだ。

そうした社会の動きに対して企業はどう対応すべきなのだろうか。パナソニック コネクト、マイクロソフトの導入事例から、考えていきたい。

藤川琢哉 PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー データ&アナリティクスリーダー PwC Japan グループデータ&アナリティクス/AI Lab リーダー

藤川琢哉 PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー データ&アナリティクスリーダー PwC Japan グループ データ&アナリティクス/AI Lab リーダー

生成AIの社内活用と、データ学習のオプトアウト

パナソニック コネクトは、AIアシスタントサービスを12,500人の国内全社員向けに展開している。その具体的な社内での活用方法について、榊原はこう説明する。

「どんな業務でも使えるように、AIアシスタントを全社に公開しています。調べ物や文書作成と、そのチェック/確認に活用している例が多いですね。やはり事務作業で、文章を作成する機会はとても多い。文章生成に秀でた生成AIは、とても役に立ちます。

他にもIT部門がプログラム開発での活用を試みたり、ローコードで対応していた事務系の部門がExcelのVBAを開発したりと、自然言語以外の領域でも利用されています」

もちろん情報漏洩のリスクにも榊原は充分な対策を講じている。社内ネットワークのみからのアクセスに制限し、開発元のオープンAIからChatGPTを直接使うのではなく、マイクロソフト経由で使うことで、セキュリティを高めているのだという。

「なぜなら使うたびにオプトアウトしないと、ChatGPTは社内の重要データを学習に使ってしまうからです。マイクロソフト経由でサービスを契約した場合は、各々が指示をしなくても自然とオプトアウトする設定が可能です。1カ月でプロンプト(生成AIへの指示)を消すことも自動化できます。経由することが、リスク管理になるのです」
榊原 彰 パナソニックコネクトで執行役員 ヴァイス・プレジデント CTO

榊原 彰 パナソニック コネクトで執行役員 ヴァイス・プレジデント CTO


マイクロソフトのサービス内容について、岡嵜は、ChatGPTの開発元オープンAIとの関係性から話し出した。

「2019年にマイクロソフトはオープンAIとパートナーシップを結び、これまで3度、その範囲を戦略的に拡大してきました。もともとChatGPT自体が、 Microsoft Azure(アジュール)上に存在するという縁もありました」

Azure にはAPIサービスがあり、企業がアプリケーションやビジネスプロセスに生成AIを組み込みたいときに活用することができる。オープンAIもAPIサービスを利用して、Azure ベースのサービスとしてChatGPTを展開しているという。

「企業が生成AI活用で課題になっているのは、パナソニック コネクト様同様、自社の機密データが学習に利用されてしまわないかという不安です。もしくはインターネット経由でオープンAIのサービスと連携したときに、データが盗まれてしまう可能性も考えられます。

マイクロソフトでは、データとプライバシーの安全を重視しています。私たちのサービスを利用した場合、企業は仮想化したプライベートネットワークを使用しますので、安全に生成AIを活用できるのです。

当然、機密データの学習利用は完全にオフにすることができます。この姿勢から、私たちのサービスは“Responsible AI(責任あるAI)”と言うべきものなのです」

マイクロソフトは、CEO/会長のサティア・ナデラが、16年の時点でResponsible AIの導入を表明しているが、Azure はクラウドサービスであるにも関わらず、申し込み・即使用開始というプロセスをとっていない。

「ユースケースまで確認した上で、安全を担保できるか判断した上でのサービス提供を行っているので、時間がかかるのです。ビジネスとしてのスピードは大切ですが、責任ある導入のほうが大切だと私たちは考えます。

ただこうしたセキュアなムーブメントは、私たちだけで成立するものではありません。すべての企業が進めることが大事。つまり業界の垣根を越えたコンサルティングファームもまた、一致協力していただき、ルールをまとめる必要があると思うのです」

岡嵜 禎 日本マイクロソフト 執行役員 常務/クラウド&ソリューション事業本部長

岡嵜 禎 日本マイクロソフト 執行役員 常務/クラウド&ソリューション事業本部長


藤川はコンサルタントとして、岡嵜の意見に呼応する。

「PwCコンサルティングとしても、さまざまな企業との取り組みの中で、生成AIに付随してResponsible AIに関する検討がテーマとなり、ご支援するケースが非常に多くなってきている。生成AIを使う業務と使わない業務、もしくは必ず人間によるチェックを入れる業務など、しっかポリシーをつくっていく必要があり、企業が生成AIを扱っていく上で重要であると考えています」

生成AIを活用した働き方の未来とは

次のトークテーマとなったのは、生成AIがビジネスに組み込まれた後の、人間の働き方だ。具体的に生成AI導入以降の現場は、どのような働き方へと変化していくのか。どのように活用すればビジネスを好転させることができるのか。榊原は実際に変わりつつあるビジネスの現場について指摘した。

「生産、物流の現場で使用されている生成AIのほとんどは、自然言語での使用です。例えば契約書や提案書などの文書を作成するための準備、ドラフト、チェックなど。調べて集めて解釈をする。その工程は大幅に短縮されるでしょう。

では人間は何をしたらよいのでしょうか。それは“最終的な判断”です。準備期間は加速度的に短くなり、その影響で判断の数も増えていく。つまりビジネスはすべて、スピードアップしていくということです。すべての企業はその速度に慣れていく必要があります」

しかし、オフィス系の仕事以外の現場導入についてはまだこれからのようだ。生成AIもまだ、テキストや画像、音声、動画などを複数種類組み合わせた情報を一度に処理する、マルチモーダル化は進んでいないと榊原は言う。

「生成AIは、デザインの設計図は読めても、自然言語、在庫との照らし合わせ、サプライチェーン全体を含めて判断するということは現状、人間に敵いません。こうしたマルチモーダルの進化が、今後の現場の働き方を左右する要素になるでしょう」

藤川は榊原の指摘した課題に大きくうなずき、今後の生成AI導入を奏功させるために必要な、徹底的な組み直しが必要だと主張する。

「生成AI、ロボティクスなどを活用した働き方の変革を前提に、抜本的にビジネスを改革する。新たなDXが必要だと思います」

そのうえで、岡嵜があらためて指摘するのは、生成AIが自然言語を扱っているということだ。ユーザーとの接点にはどこかで言語が存在しているという観点から、生成AIはあらゆるユースケースに対応できるだろう、と彼は考える。

「これまでも自動での文書生成や要約なども存在していたが、特定のデータを集め、エキスパートが時間をかけて訓練をすることで結果を得ていました。それが普段話す言葉で動き、それなりの精度で仕上げてくれる。ROI(投資利益率)もとても高い。

ではAIによって人間の仕事は奪われるのでしょうか。データによると49%の人が心配していますが、その一方で、70%の人が業務効率化に役立てたいと考えています」

彼らは近年、SNSを含めて、倍々ゲームで増えていく情報量にうんざりしている。そうしたデータの仕分けなどの雑務をテキパキと片付けてくれるアシスタントが欲しくて仕方がないのだ。

「そこで、生成AIを、業務でよく使われるWord/Excel/Power Pointなどのオフィスアプリケーションに組み込むことで、ユーザー側は価値をより早く享受することができると考えている。それが『 Microsoft 365 Copilot(コパイロット)』です。このCopilot (副操縦士)というネーミングが鍵で、主操縦士はあくまで人間であり、副操縦士がサポートすることでより正確に、より多くのことを達成できるということを示しています」

そこでは話しかけるだけでパワーポイントの資料をつくる、オンラインで 行ったミーティングを音声認識してサマリーにしてもらう、などのアシスタント行為を生成AIがこなしてくれる。

「つまり役員クラスだけでなく、すべての社員がアシスタントをもつ時代がやってくるのです」

パナソニック コネクト、マイクロソフト、それぞれの将来展望

最後に2社の将来展望を聞いた。榊原はパナソニック コネクトのハードウェア、ソフトウェア、両方の事業を生成AIの力で融合したいという。

「当社が扱うハードには、例えば溶接ロボットや半導体実装機などの重機、プロジェクションマッピングを実現するめのプロフェッショナルプロジェクターなどがあります。そこに生成AIの力を加えれば、ユーザビリティーが高まり、ビジネスの差別化のためのレイヤーを上げることができるでしょう。

ソフト面では生成AIをSaaSに取り込む開発を進めています。それによりたとえば物流現場では、荷物の輸送や在庫流通の予測を行い、最適な輸配送や最適な在庫実現などの提案をしてくれるまでもっていくことが可能になると期待しています。

現状はユーザーが何かしらのプロンプトを発しなければ動かない生成AIですが、将来的には企業が抱える課題をどう打破すべきかを自ら提案するといった、対話ができるようになると考えています」

一方岡嵜は、生成AIを「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というマイクロソフトのミッションをかなえる、強力な装置だと表現した。

「加速する土台、それが生成AIです。オフィスアプリケーションへの組み込みで、ビジネス現場は激変するでしょう。なかでも私がポイントだと思っているのは、いままで機器を使いこなせず、情報システム部門の人の手を煩わせていた人々の面倒も解消される期待が高いということです。

そうなると、開発者はもっと、開発そのものにもっと時間が取れるようになるでしょう。
これがすべての人々が本質的なことに挑戦できる世界観です。その光景を早くこの目で見たいですね」

2社の展望は、どちらもAIに人間が排斥されていない世界。どうやら生成AIは、恐れるのではなく、ともに手を取り進むパートナーとなっていくのかもしれない。

岡嵜 禎◎日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長。大手システムインテグレーター、外資ベンダー等のアーキテクト部隊の責任者を経て、AWS(アマゾン ウェブ サービス)の技術統括責任者を経て現職。

榊󠄀原 彰◎パナソニック コネクト 執行役員 ヴァイス・プレジデント CTO。日本アイ・ビー・エム、日本マイクロソフトの執行役員を経て現職。CTOAIアシスタントサービスを12,500人の国内全社員向けに開始し、業務の生産性向上を実現。

藤川琢哉◎PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー データ&アナリティクスリーダー PwC Japan グループ データ&アナリティクス/AI Lab リーダー。東京工業大学大学院卒。デジタル先進企業のアカウントリードを7年経験し、DXにおける先進的な取り組みや課題について豊富な知見をもつ。


◎「AI Summit 2023-生成AIを経営に実装せよ-」の様子はこちら
https://forbesjapan.com/feat/ai_summit_2023/
アーカイブ動画公開中(※2023.07.28 23:59まで)

Promoted by PwC / text by Fumihiko Ohashi / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro