Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2023.06.21

AI技術のビジネス活用をカンタンにする、FLUXの挑戦 社会課題を解く、スタートアップの抱く使命Vol.2

日米市場を中心にB2Bスタートアップへの投資を行っているベンチャーキャピタルファンドDNX Venturesが、日本の産業変革に挑む起業家にフォーカス。「社会課題を解く、スタートアップの抱く使命」と題し、連載していく。

第二弾は、ニッチながら顧客のバーニングニーズを捉えたヘッダービディングの事業で急成長を遂げ、AIスタートアップとして進化し続けている、FLUXの代表取締役CEO 永井元治をゲストに迎えた。日本の主要メディアのデータを蓄積してきた彼らが、そのデータとAIを活用して描く未来とは?聞き手は「日本の産業が抱える課題解決に高い志をもつ起業家を応援したい」とシードステージから同社とともに歩んできたベンチャーキャピタリスト、DNX Venturesのマネージングパートナー兼日本代表の倉林陽が務めた。

このチームなら何回でもピボットできる、チームへの信頼感

倉林陽(以下、倉林):アメリカのVCが、スタートアップを「カンパニーファースト」と「プロダクトファースト」というかたちで整理することがあります。どちらのパターンにも多くの成功事例が存在しますが、例えばカケハシの共同創業者の中尾豊さんはMR出身、かつご家族も薬局業界にいて、身近に感じていた課題を解決するためにプロダクトをつくった「プロダクトファースト」です。AIスタートアップ、特にメディア・媒体向けのサービスから始まったFLUXの場合は、「カンパニーファースト」でスタートしたと思いますが、共同創業者の平田さんが業界理解が深く、CTOの李さんがAIの知見が深かったですよね。永井さんは創業時どんなパーパスをもって起業し、その後業界への想いをどのように重ねてきたのでしょうか。

永井元治(以下、永井):カッコつけずに等身大で話しをすると、最初に起業した動機は「チームをつくってみたい」という想いが強かったです。高校の文化祭や、大学時代にハーバードと慶應義塾大学で大きなカンファレンスを開催するなど、私の人生には「チームで大きなお祭りごとをする」ことがメインにありました。好きな仲間と組織をつくることがモチベーションだったので、恥ずかしながら最初からこの業界を変革したいという想いがDay1からあったというわけではなかったかもしれません。
チームが最初にあるからこそ、私も経営メンバーの布施も、この4人だったら特定の業界にこだわることなく何回でもピボットして何か実現できると信じていました。スタートアップはうまくいかないことなんて当たり前にありますよね。

ヘッダービディングの領域選定にあたっては、ひとつに共同創業者の平田が領域のエキスパートとしてFounder Market Fitを持ち合わせてたことが大きかったですね。もうひとつに、私がコンサル出身であるため、数字に落とせる事業・業界が考えやすくフィットがありました。
FLUX 代表取締役 CEO 永井元治

FLUX 代表取締役 CEO 永井元治

「収益向上」こそ顧客がもつ強いバーニング・ニーズ

倉林:技術力の高さに加えて、マーケットの選定・見定め方がすごくよかったと振り返っています。追いかけてくる競合がいませんでしたよね、御社が圧倒的でした。投資先の中でも類を見ない急成長を遂げ、日本最速レベルでARR10億円を達成しています。どこに勝算があったのでしょうか。

永井:簡単に私たちが提供しているサービスについて紹介すると、創業と同時にヘッダービディング事業(現FLUX AutoStream)という事業を展開してきました。これはSSPやアドネットワークに対して一斉に自動入札を実施することを可能にすることで、広告収益を最大化できるサービスです。

現在はヘッダービディングだけではなく複数の機能を内包する媒体社向けの収益最大化ソリューションとして提供しています。

良かった点が3つあったと考えています。

①マーケットの見定めとターゲット選定
マーケティングのサプライチェーン上、我々のお客さまであるメディアというのは最下流にあたります。本来は下流にこそユーザーがいて、データが蓄積するため価値があるんですが、日本の代理店はサプライチェーンの上流にいる広告主に向けたサービスを提供しているケースが多かったんです。下流に対してのプロダクトやサービスが手薄で充実していなかったと思います。

②ベンダーニュートラルな立ち位置
ふたつめに、FLUXは「しがらみがない」ポジションを取っているという点です。大手広告代理店でも、大手IT広告企業でもないわけです。クライアントである媒体社からすると、色のついていないスタートアップであれば、特定の広告会社とお付き合いするよりも、さまざまな広告事業者と付き合っていけると捉えてもらえるわけです。ベンダーニュートラル性は大きな強みとなりました。

③収益向上に貢献するエコノミックバリュー
最後に、我々が「エコノミックバリュー」を重視してきたことです。お客さまは収益をあげることこそが「バーニング・ニーズ」です。実は、まだお客さまに使ってもらえるプロダクトが完成していない創業初期のころ、半年ほどエクセルを使った簡易のサービスでも買ってもらえるほどでした。バーニング・ニーズが満たせる限りにおいては、ニッチな領域に特化した「レーザーフォーカス・プロダクト」でも受け入れてもらえるのだということがわかりました。

倉林:おっしゃる通りですね。そう考えると、最初のポジショニングで、あれだけ長くインターネット広告事業が日本に展開されてきたなかでもホワイトスペースがあり、そこに入っていけたということが大きいんでしょうね。

永井:そうですね。マーケットのなかに歪みのようなものがあったように思います。
DNX Ventures マネージングパートナー兼日本代表 倉 林陽

DNX Ventures マネージングパートナー兼日本代表 倉林 陽

蓄積したデータ × AI事業の二段構え戦略

倉林:永井さんとの初めての出会いは、永井さんがコンサルを辞め転職を検討しているときに、DNX Venturesの採用プロセスを受けてくれたことがきっかけでした。次に会った時には起業することを決めていましたね。

正直、起業アイデアを聞いたときには、「渋い」という印象でした。DNXの他メンバーが苦労していたアドテク領域に思えたからです。

実際、DNXに限らず当時2018年ごろはすでにアドテク領域が投資を受けづらい時代になっていましたから。創業者のみなさんには、そのような時代の中でどのような勝ち筋が見えていらしたのでしょうか。

永井:実はこの事業(FLUX AutoStream)で、BtoB SaaSにおける一つの大台であるARR 100億円を達成できるとは思ってはいませんでした。むしろ、まずはこの事業で一定までPMFするということ、そこで得たアセットでさらに二段階目を仕掛けていくことを初めから考えてきました。ひとつめの事業はニッチにしっかりレーザーフォーカスし、ARR10〜20億円のマイルストーンを達成することを目標に置いていました。

スタートアップは、きちんとトラクションをつくって、組織をつくり、調達をして、成長につなげていくためのサイクルがある中で、例えばMRR1000万円、3000万円といったマイルストーンを設定しています。これをきちんとクリアしていけるかが大事になってくる。すでに、我々が取り組んでいたヘッダービディングの領域は海外では伸びていました。

ニッチな市場ではありますが、一段階目としてはマイルストーンを達成するのに一定十分なトラクションを出せると考えました。また、この事業を展開することで大量のデータを扱うことになるため、ここで得た知見や技術を活用することで、二段階目にはアドテクに限らず事業領域を広げていけるのではないかと考えたんです。

最近Generative AIなど近い領域もAIを活用する上ではモデルだけではなくデータが非常に重要です。我々の場合はサービスを通じて膨大なデータを蓄積しており、データガバナンスやプライバシーに十分配慮した上で活用することができるため、わざわざデータを取りに行く必要がないんです。

マルチプロダクト戦略
大事なのは徹底した「撤退ライン」

倉林:その後、マルチプロダクトの展開が始まりました。実は、スタートアップというリソースが限られる組織において、初期の頃から複数のプロダクトにリソースを分散させるというのはこれまで比較的タブーと考えられてきました。事実、なかなか綺麗にマルチプロダクトで展開できている会社はありません。そのなかで、FLUXは他の企業と比べてもセカンドプロダクトの準備が早かったように見受けられました。

永井:我々はシリーズA調達後にセカンドプロダクトの模索を始めました。

倉林:マルチプロダクトのアイデアが出てくる経営陣のクリエイティブ力もその検証スピードの速さもすごいと思いました。調査力が高く、米国の最前線も徹底的に調べ、理解した上で手を打っている。百発百中で当たらなくとも、早く複数のアイデアをマーケットに問える能力は大事だと思います。

永井:どんな起業家でも、大企業であっても、新規事業を百発百中で当てる人はいないと思います。イーロン・マスクですら難しい。だからこそ、仮説の検証サイクルをいかに早め、ひとつのテーマを深掘りしていくしかない。うまくいかなかった事業もたくさんあります。

一定検証をして、何十億円も投資しないといけないというものはスパッと諦める「撤退ライン」をめちゃくちゃ厳しく設定しているんです。設定したKPIに達したら撤退するしチームも解散するということを、責任者にも最初から合意を得た上で始めています。お互いがお互いを牽制しあい、デジタルに判断するようにしていますね。

倉林:撤退ラインを爽やかに言えるのはすごいことです。他のスタートアップをみていてもなかなかできません。一方で、「コミットメントが生む突破力」というのもありそうな気がします。データだけみたら撤退だけど、死ぬほど考えたうえで「違うんだ!」ということも経験上ありました。

永井:おっしゃる通り、全力でやれているかどうかは必ず確認します。でもどんなに気合いが入っていても、大事なキークエスチョンに答えられず、目指す成長が見込めなければ撤退します。うまくいかなくなったらチームと責任者のポジションはなくなるという緊張感も大事だと思うんです。気合いという名の下に経営陣が無駄にお金や時間などの経営資源を使ってしまったら勿体無い。気合いも大事ですが、ロジックで考えてダメな時はきちんと撤退する、両立できるのではないかと思っています。

倉林:とてもいいスタイルを実現されていると思います、言うほど簡単じゃないことをやりきっていますね。

永井:もうひとつ大事なのは、組織のつくりかたです。私はよく「プロスポーツチームのような組織をつくっていきたい」と語っています。みんないろいろな想いはありますが、想いがあっても全員試合に出られない。プロだったら、移籍や怪我で試合に出られないこともあるわけです。企業も同じ。

想いは受け止めたいが、試合に出られる人、出られない人。得意、得意じゃないといったことはデジタルにやっていく会社なんです。これをあらかじめメンバーにも伝えています。中途半端にしてしまうと「想いを汲まないと」と忖度してしまいますからね。

倉林:経営者として、5歩くらい前をいかれていますね。

基盤が整った今、領域は関係ない
AIスタートアップとしての道筋

倉林:マーケティングの領域はテクノロジーのイノベーションサイクルが早く、逆にいうと恩恵もあるように思います。

永井:我々は二つのコアを定義しています。ひとつは、メディアを通じて得られる自然言語処理の大量のデータ。これは我々の強みのひとつです。もうひとつは、マーケティング領域での数字の予測分析・需要分析・LTV分析です。

アプリケーションは時代によって変えるというのが弊社のスタイル。開発組織はテクノロジーのキャッチアップが大好きなメンバーで構成されています。それでいて、こだわりを持たずに最新のいいものを取り入れるんです。

最近では、Generative AIの力は大きいですね。Generative AIの登場によって、マーケティング業界がどの業界よりも先に変わっていくと思います。我々も早速、顧客である媒体社向けのGenerative AIを活用したサービスの仕込みを始めています。

倉林:Generative AIについては、ここから各社の打ち手や取り組み方に差が出てくるように思います。FLUXとしてはGenerative AIにどのように向き合っていくのでしょうか。

永井:OpenAIのGPTはウィキペディアの情報などで生成されていますよね。一方で我々は日本の多くのメディアを顧客に抱えていることで、一次情報を持っている方々と一緒にビジネスを考えていくことができます。例えば300媒体くらいのデータを学習すると日本のトレンド情報を学習したLLMをつくることも可能だと思います。もちろんデータ使用の合意を得た上でとなりますが、顧客の中心がメディアであり、自然言語処理に強みを持つFLUXだからこそ、データをレバレッジしたいですね。

倉林:最後に、本日シリーズBの調達リリースを配信されました。この先どんな絵を描いているかぜひお聞かせください。

永井:既存領域のなかでの新規探索も継続して続けていきますが、これに加えて「脱マーケティング領域」ということも考えています。培ってきた技術基盤やデータは応用範囲が広いので、この既存アセットを他の領域に展開していきたいんです。VerticalだったものをよりHorizontalに領域を広げていきたいですね。

今日お話ししてきたように、「テクノロジーをカンタンに。」というミッションとAIの技術力、そしてフレキシブルに仮説検証ができるチームがいれば、領域はあまり関係ないと思っています。

ソフトバンクのような企業サイズになると、事業を1700個くらいやらないといけない。上場企業になってもやり続けることだと思うんです。今回の調達はIPOも見据えた大きなラウンドなので、我々の会社がもう一段変化していくタイミングかと思っています。



DNX Ventures
https://www.dnx.vc/jpfund/top



永井元治(ながい・げんじ)◎ 株式会社FLUX 代表取締役 CEO。米系戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニーにて、大手通信キャリアの戦略立案・投資ファンドのデューデリジェンス・商社のM&A案件などに従事。その後FLUXを共同創業。慶應義塾大学法学部法律学科卒。

倉林 陽(くらばやし・あきら)◎ DNX Ventures マネージングパートナー兼日本代表。富士通、三井物産にて日米のITテクノロジー分野でのベンチャー投資、事業開発を担当。MBA留学後Globespan Capital Partners、Salesforce Venturesで日本代表を歴任。2015年DNX Venturesに参画。同志社大学博士(学術)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営大学院修了(MBA) 。

Promoted by DNX Ventures / text by Natsumi Ueno / photographs by Toru Hiraiwa / edit by Akira Kurabayashi

ForbesBrandVoice